法的な大人になったら(仮)『フェイスさんが成人を迎えるまで、俺は貴方に手を出せません。これは俺なりのケジメです』
付き合うことになりしばらく経ち、いい感じの雰囲気になって迫った夜、告げられた言葉にフェイスは拗ねるふりをしながらも仕方ないなと引き下がった。フェイス自身は他人の肌の温度は好きだが、特別色狂いでもなく心が満たされていれば性行為に関してはそれほど重要視はしていなかったからだ。それにオスカーは真面目だからこのような切り返しが来るであろうことも予想していた。
しかし、フェイスが成人の誕生日を迎えたその日はバレンタイン騒動の渦中であり、その後もトリニティのエリオスタワーへの襲撃などが重なり忙しいままだった。エリオスタワーの復旧やセキュリティ強化などの対策も落ち着き始めた頃、ディノやブラッドの計らいにより2人の休憩時間が被り、エリオスタワーの屋上まで来ていた。
「なんか、こうして会うのも久しぶりって感じ?」
「そ、そうですね」
屋上には2人しか居らず、ベンチに座りながら、ウィルによって管理されている花壇を見ながら話し始める。
「サウスも色々大変だったみたいだけど、落ち着いたの?」
「ブラッド様はまだお忙しそうにされていますが、アキラとウィルは体調も完全に戻り、既に通常通り業務をこなしています」
「アキラなんてすごい重症だったって聞いたのにほんと回復力すごいよね」
「はい、アキラのフィジカル面、特に回復力に関しては目を見張るものがあるかと。ウィルもしばらくは落ち込んでいる様でしたが、アキラやレンと話したことで気持ちを持ち直したみたいです」
「で、お前は?」
「えっ、お、俺ですか?」
突然自分の話題を振られ、どこかぎこちない反応を見せるオスカーにフェイスがくすりと笑う。
「あは、オスカー緊張してる?」
「い、いえそんなこと、わ!?」
するりと自らの手の甲を撫でる温度に文字通りオスカーはベンチから飛び上がった。
「ちょっと驚きすぎじゃない?」
む、と唇を尖らせて不機嫌な様子を見せたフェイスに、オスカーは視線をフェイスから逸らしながらも慌てたように言葉を続ける。
「あ、そ、…ひ、久しぶりのフェイスさんだと思うと…、その、心臓が…」
「へぇ?…………あ、ホントだ」
自然な動作で椅子から立ち上がったフェイスがオスカーの心臓に耳を押し当てれば、どくどくと激しい音を立てているのがはっきりと理解出来た。
「だっ…!…どっ…!」
「…ねぇオスカー、俺、成人したんだよ?」
自分は痴漢していませんと言うように両手を顔の横に上げたオスカーを首を傾げて見上げながらするりと腰骨に手を添わせる。
「約束、覚えてる?」
「う、うぁ、そ、その…っ」
褐色の肌を目に見えて赤く染めたオスカーへ、にっこりと笑顔を向けると、そのまま3歩ほど後ろに歩いて距離を取った。
「俺が成人してしばらく経ってるし、折角だし来年の成人の日にその約束を果たしてよ」
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※確か成人式って早生まれの人1年ズレなかったっけ?逆だっけ?成人式の時早生まれの人成人してないんだっけ?あれ?っていう()