幽世からの誘いそれは特別何かがあった訳では無い。使用人としての雑務を終えてフェイスの部屋の前を通った時の事だった。誰もいないはずの部屋から笑い声が聞こえてくるのだ。何かと思い開かれた扉の隙間から中を覗けば、フェイスが1人で絵探しの本を開きながらも何かと会話をしているのだ。誰も居ないはずなのに何故とよくよく目を凝らしてみると、フェイスの傍らに揺らめく黒い影が見えて思わず目を擦る。一瞬の後に消えてしまったそれは気の所為だったのだろうか。なんであったのか、未だオスカーには分からないでいる。
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「…はっ!ふっ…」
パチン、ドス、重たい音が響いて飛んできた椅子が床に叩きつけられる。サブスタンスの反応が見られた廃墟の工場では時折家具が飛び交うという現象が発生していた。
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