流転する運命の中で幼い頃から頻繁に見る、月が落ちてくる夢。
来ないでと懇願しても追い縋る巨大な天体が自らの体を押し潰す。ちっぽけな体はその物量に耐えきれずに弾け飛んで、転がった眼球が世界を覆う程の花の欠片に埋め尽くされていくのを視認して意識が溶けて行く。そうして目が覚める。
逃げても逃げても追いかけられる恐怖より、押しつぶされる痛みより、花欠片によって埋め尽くされた世界から自らの体のみ月によって弾かれる悲しみが全身を襲って、成人を迎えた今になっても涙を伴って目を覚ますのだ。空を見上げても月は朝に姿を映さない。
ーこれは桜に似た花が見せた夢かー
ーそれは瘴気に蝕まれ現のまま見た幻かー
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