きゃんでぃひとつぺろりたいらげてこれは私が書きたかったところを書いただけなので、シチュエーションとかは決まってないです。
ここどこ?
アシュ→ビリ
部屋の中で小さなビニール袋の音ががさりと鳴って音の出処を見た。
右手でスマホを持ち、すいすいと親指で操作しながら左手に持った棒付きキャンディを揺らすビリーの姿が視界に入り、アッシュの眉が顰められる。邪魔だ。せっかく1人で落ち着いていたのに雑音と揺れる飴玉が比較的穏やかだった心を苛立たせる。通常のものよりもサイズが大きいのに値段が据え置きなんだとなんとも庶民的な価値観でグレイに対して嬉しそうに話していたことをアッシュは記憶していた。
その飴玉を、スマホを弄る片手間に唇に押し当てる。
「ンー…?」
何か気になることがあったのか小さく唸ったビリーがとんとんと唇の上で飴玉を小さく跳ねさせる。そしてむに、と形を歪めるように下唇を押し上げながら、飴玉のサイズと同じくらいに開いた口から舌をちろりと覗かせて舌で引き込むようにぱくりと飴玉を口に含んだ。
歯と飴玉がぶつかり合うからころとした音が静まり返った部屋の中で時折うすらと響く。大きめの飴玉をずっと口の中で転がし続けることが難しかったのだろう。
ちゅるっ
唇から抜け出した飴玉から溶けた糖と混ざりあった唾液が糸を引く。追いかけるように伸ばされた舌が飴玉を頂きまでなぞりながら、ちゅっと小さな水音を立てて吸い上げた。こくんと喉仏が動いて口の中に溜まった唾液を飲み込んで、再び口を開き、飴玉を濡れた唇を通して口腔内にくぷりと沈みこませる。
「……っ…」
項をじりりと焼かれるような熱に僅かに表情を歪めるも、アッシュの瞳はビリーの口元へ注がれていた。
ちゅぅ、ちゅっ、ぴちっ、ちゅるっ
息さえも静まり返ったような空間で、飴玉を出し入れする音だけが鮮明にアッシュの耳へと届く。
棒を持つ手が離れてゴーグルの端に指先をかけ小さく動かして肌を擦る。ゴムに痒みを覚えたのかかちりとゴーグルを外して机の上に置いてゴーグルの下に隠れていた肌を数度搔いてから再び棒に手を伸ばす。
スマホを見るために伏せられた瞳は歳の割には幼くまるい。
「…ふむ」
何かを納得した声を上げてスマホをから目を離して飴玉に目線を向けながらつぷりと引き抜いたそれの味の出処を確かめるように、マーブルの飴玉を動かして、気に入った部分をれる、と舐めて僅かに目元を綻ばせた。そして再び舌を伸ばした所でビリーの海色の瞳がアッシュへ向けられ、ぱちんと驚いたように見開かれる。
「えっと、オイラに何か用事?」
きょとんと目をまるくし、首を傾げたビリーからも目に見えるように表情を歪めたアッシュが視線を逸らした。
「その食い方やめろ、気色悪ぃ」
「ええ!?俺っちそんな汚い食べ方してた!?」
「うるせぇ金輪際ながら食べ方すんじゃねぇ、俺が見てねぇ所でもだ!」
「うえぇ!?なんでそんな怒ってるのアッシュパイセン〜〜!」
ビリーの嘆くような声も、わざとらしく作った泣きそうな表情も振り切ってアッシュは部屋に戻る。
「クソが…っ!」
瞳に焼き付いてしまった、熱を引き出すような食べ方、それを他人の前でするなとでも言わんばかりの自らの言動を思い出し、アッシュはどうしようもない気持ちを吐き出すように悪態を付いた。