新たに陸の資源を確保する。相談をしていたはずが、上機嫌な赤鬼ができていた。
地上から持ち込んだ酒を、味見したいと言ったせいだ。だがこうして、楽しげな声音にうなずくのは悪くない。なにをどう辿ったのか、話の現在地は、自身の描く未来絵図に移っていた。
勇者に自慢の力を見出され、悪をなぎ倒す正義の赤鬼。身振り手振りを交えながらの案内板は、しかし落胆のため息にしおれてしまう。成敗を続けていても、本物に出会えたためしがないらしい。
「だったらオレが、疑似餌になってあげようか?」
「悪い奴っていうのは、なるもんじゃねえだろ」
それもそうかと相づちを流し込み、思う。傾けたグラスのフチは、誰に丸を描いているのだろうかと。
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