盾を持たない手はずいぶん軽い。元より盾など必要ない――というのは、魔皇の言い分ではあった。盾は駒であり、駒は消耗品である。替えのきく駒など、惜しまれるべきではないのだと。
だがそれは、王の駒でさえ例外ではなかった。アレス自ら証明したのは、魔皇という駒を打ち取るために、自身も盤上に上がった時だ。
ならば自分は、一体なにを惜しめばいいのだろう。守るべきものを手放して、代わりになにを握れば良いのだろう。
途切れた独り言をつかみ損ね、さ迷っていた指先に声が触れる。
――これからは貴様自身が理由となるのだ。
高く掲げた武器の先に、居並ぶ配下たちが見える。答えた言葉を反すうするように、あいたままだった片手を添えた。