散っていく後ろ姿に漏らした感嘆を、赤鬼は自慢げに受け取った。
「悪ぃヤツは懲らしめて当然だからな!」
出会ったばかりの頃に、そんな話をしたことがある。鬼の中でも力自慢だったという彼は、思い立って国を出た。世界には良いヤツと悪いヤツがいて、自分の力が役立つはずだと。
――彼は恐らく……。
正義を知ってはいるが、どんな形かは知らないのだろう。この魔王もまた変わらないのかもしれないと、置かれたままの得物をつかむ。手渡そうとしてふと、その重みに気付いた。
「似ているのかもしれないね、オレとおまえは」
「おっそうか! だったら俺がどんどん倒してやるからよ!」
頼もしいその言葉もどうか。彼のためだけにあれば良い、と思う。