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    まるじろ

    たんぎゆをこよなく愛している人間のお絵かき墓場
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    まるじろ

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    #炭義版ワンドロワンライ
    お題『可愛いわがまま』

    長くなってしまったのでこちらに…
    ・キ学軸
    ・「「俺達、入れ替わってる⁈」」な炭義です

    ◇ ◇ ◇

    ヴ――、ヴ――、ヴ――……
     
     ――――何の音だろう。
     ふんわりとした温もりと優しい気持ちにさせてくれる陽だまりの匂いに包まれ、それに腕の中には何かのもちもちとした感触が気持ちいい。こんなにも極上の心地良い眠りを妨げるとは。
     響き続ける振動音に意識を無理矢理浮上させられた義勇は、心地良さを手放さぬよう、腕の中のもちもちフワフワしたものに顔を擦りつけ埋める。柔らかな感触は再び微睡へと誘おうとするが、抵抗も虚しく振動音は耳から、もちもちから伝わって揺さぶり続けてくる。そのため義勇は、目を開けぬままムゥと顔を顰めて発生源を手で探る事となった。
     つんと指先に触れた冷ややかな振動源を手に掴むと、横向きに寝転がったままもちもちを少し下にずらし、うっすらと目を開けて正体を確認する。
     スマートフォンの、アラームか。
     表示されている物をゆっくりとスライドさせたら、ようやく静寂は戻ってきた。スリープボタンで画面を消し瞼を閉じるが、なんだか目が覚めてしまった。
     眠りを妨げられた不満から眉間の皺を濃くしてボタンを再度押し、半目のまま覗いてみれば、再び表示されたスマートフォンのデジタル時計が時を知らせている。
    「四時……?」
     いつも起きるのは六時だ。
     寝ぼけて時刻のセットを間違えたのだろうか、と回らぬ頭でぼんやり時刻を眺めていた義勇は、画面の中の人物を見て寝坊眼をひとつ瞬かせる。
    「ん……?」
     時刻の下に映っていたのは、青いジャージ姿の自分。寝ぼけついでに、ロック画面を自分の写真にかえてしまったのだろうか? その前に、写真フォルダに自分の写真なんて入れてあっただろうか。
     思い巡らしながら緩慢に瞬きを繰り返し画面を眺めていた義勇は、フッと暗くなった画面を見てギョッと目を見開いた。
    「えっ……⁈」
     鏡のようにこちらの姿を映し出す黒い画面。そこに映る人物、それは自分の教え子の竈門炭治郎であった。
     
     ◇
     
     義勇はいつも以上に軽やかに上体を起こすと、ペタペタと頬に触れてみる。張りのある若い肌の上を、働き者の証である皮の硬い指が滑って行った。むに、と摘んでみると痛い。髪は短く首周りがスースーするし、それに耳元で揺れるこのピアス。この体が竈門炭治郎のものである何よりの証拠だった。
     初めて見る部屋の壁紙や扉を呆然と眺めながら、義勇は冷や汗をかきながら頭を働かせる。
     寝る前までは確かに冨岡義勇だった俺は今、竈門炭治郎になっている。
     なんで?
     もしかして昨日の放課後、階段で足を滑らせ降ってきた竈門炭治郎を受け止めようとした時に、額が割れたのではと真面目に疑うくらいに頭同士を強打したせいだろうか。その脳震盪を起こしそうな程の痛みを思い出しながら額を撫でてみるが、痛くもなければ腫れてもいない。義勇の額はあの後とても腫れ上がってしまったと言うのに、ダメージを負ったのは義勇だけのようだった。こいつ、何という石頭。
     
     額から手を下ろすともちっとした物に手が触れ、見下ろしてギョッとする。どでかいぬいぐるみがベッドの横幅を半分占領するように横たわっている。
     寝ている時にもちもちとした心地よさを与えていたのは、これのようだった。
     竈門はぬいぐるみと寝ているのか……。学校では面倒見の良い皆の兄のようであるのに、可愛らしい面があるのだなと義勇は微笑ましく思いながら引き寄せて、ぽてんと脚の上に座らせてみる。
     ……気のせいだろうか。青い瞳に、黒髪長髪、一文字に引き結ばれた口元。この丸々と太ったぬいぐるみが、どことなく自分に似て見えた。
     それにこの服。学生服のような黒い服の上に、何やら派手な物を羽織っている。この様な服は生涯着た事がないと言うのに、何故か心の内から懐かしさが込み上げて来る。何故? と思った所で、いや、今はぬいぐるみについて熟考している場合ではないだろうと緩く被りを振った義勇は、ベッドの下にもう一体、どでかいぬいぐるみが鎮座して居る事に気がついた。
     竈門だ。どこからどう見ても竈門炭治郎のぬいぐるみだ。額に痣があるし、ピアスをしている。
     竈門ぬいぐるみは微笑んでいるものの、床に一人ぼっちで寂しそうに見える。義勇はベッドから抜け出すと、枕元に丸々もちもちとした二つを並べ、布団を掛けてやった。
     ムフ、と満足気に笑みを溢したあとで、顔も気持ちも引き締める。
     さて、とりあえず支度をせねばならないだろう。竈門に会って状況を確認するにしても、パジャマでは表を出歩けない。
     着替えを求めて部屋を見回して見ると、机の横に設置されたコルクボードに視線が吸い寄せられる。
    (……俺の……)
     ボードには、行事の際に購入したのであろう義勇の写真が何枚か貼ってあり、その事に気づいた義勇の顔と身体はみるみる熱くなる。それと同時に蘇る、竈門炭治郎の言葉。
    「好きです! 冨岡先生!」
     真剣な眼差しと共に、真心を込めて綴られる言葉が義勇の鼓膜と心を震わせたのは、一度や二度ではない。
     回数を重ねる度に高まっていく心拍数まで蘇って来てしまい直視していられず視線を逸らすと、机の上に先ほどのぬいぐるみと同じデザインの、しかしずっと小さなサイズの物が並べて置いてあるのが目に入る。ころころと小さくやはり丸々としたその二体は、見つめ合うように向かい合わせで並べられていたので、気恥ずかしくなって正面に向き直させた。
     誰が作ったのか分からないが、これは竈門と自分のぬいぐるみで間違いないのだろう。とてもよく出来ている。
     この部屋はまるで竈門炭治郎の心の中に飛び込んだかのようで、義勇をそわそわと落ち着かぬ心地にさせた。
     
     その時、コンコンと窓から音が聞こえる。カーテンを開いてみると、ほんのりと明るみ始めた景色の中に、激しい寝癖で全方位に髪を跳ね散らかした冨岡義勇がひょっこりと現れた。
    「冨岡先生、おはようございます! 良かった、起きてらしたんですね!」
     窓を開けると、冨岡義勇こと竈門炭治郎はホッとした表情で、囁くように挨拶をしながら部屋に入って来た。普通に入って来ているが、この部屋は二階にあるようだった。
    「竈門、おはよう。よく家に辿り着けたな」
    「玄関を出てみたら、小学校の時の通学路の途中にあったのでここまで来られました。家が凄く近いですよ!」
     冨岡義勇の顔であるのに、太陽のように笑って答える。
    「そうなのか。大変な事になったな」
    「はい、起きてみて驚きました。でも入れ替わったのが冨岡先生とで、ちょっと嬉しいです。お体変な所ないですか?」
    「うん大丈夫だ。お前は大丈夫か?」
     義勇がそう問うと、炭治郎は
    「ええ、俺は問題ないです! 冨岡先生の身体能力は凄いですね! この部屋は二階にあるんですが、すいすい登って来れました」
     とにっこり満面の笑みで答えた。
     身体が元通りになった後、顔面が筋肉痛になってそうだな……。眩しい笑顔を眺めながら、義勇はぼんやりとそう思った。
     
    「竈門。四時に目覚ましをかけていたということは、何かする事があるんじゃないのか」
     義勇が炭治郎のスマートフォンを差し出してそう言うと、受け取った炭治郎は突如ハッとした顔になり、その後で真っ赤になって「画面を見ましたか?」とますます小声で聞いた。
    「見た。別に気にしなくていい。俺の携帯を持っているか?」
    「はい、ここに」
     ジャージのポケットから取り出されたスマートフォンを受け取りロック画面を表示させると、義勇は炭治郎に見せた。
    「俺も、お前の写真にしている」
    「えっっっ⁈⁈」
     目玉が飛び出そうな程に目を見開く炭治郎に「我妻の髪色を指導している時に、いつか役に立つと言って貰った」と教える。
    「疲れた時とかに眺めると、冨岡先生ならきっと元気が出るんじゃないでしょうか! 今日はこれを差し上げるので、どうぞ許して下さい」と平伏しながら、炭治郎の友人である我妻善逸はこの写真を表示したのだ。
     無料通話アプリで写真を送ってもらい、その日以降疲れた時に眺めていたが、頻度が増えた為ロック画面に設定した。と淡々と話す義勇に、炭治郎はわけがわからぬまま頬を紅潮させドキドキと胸を高鳴らせる。
    「竈門の写真を眺めていると、本当に疲れが飛んで行く。お前には不思議な力があるんだな」と腕を組みしみじみと話しているが、それって、それってつまり?
     両の拳を握りしめて、急速に乾く喉にごくりと唾を送り込んだ炭治郎が前のめりになった所で。
    「それはさておいて、元に戻るまで、俺は竈門炭治郎として過ごさねばならない。だからお前の生活を知る必要がある」
    「えっ? あっ……はい! 生活を! ええと、いつも四時に起きて、家業のパン作りをするんです。俺も冨岡先生になりきれるだろうか、と言う心配もあるんですが、何よりの困り事は、今、凄くトイレに行きたくて!」
    「? 行けばいいだろう」
    「行けないですよ! 冨岡先生の姿でトイレなんて! 着替えるのもウワァァってなって一苦労だったんです。俺が長男じゃなかったら、どうなっていたことか……!」
     拳を握りしめて真っ赤な顔で訴える炭治郎を見て、義勇はキョトンと首を傾げる。
     急に身長が伸びて、身体が扱いづらいのだろうか。しかし先程は家の二階まで登りやすかったと言っていたが……。
    「手伝ってやろうか?」
    「え?」
    「トイレが難しいんだろう」
    「な、な、違います! そう言う意味ではありません……! 今はまだ我慢するので大丈夫です、俺は我慢できる男なので! でも限界は来るので、早く戻れたらいいなと切望しています!」
     冨岡先生は優しすぎて心配です。と、こんなに赤くして大丈夫だろうかと言う程に真っ赤な顔のまま、炭治郎は困ったように眉を下げた。
    「では、早急に戻る方法を考えよう」
    「はい!」
     二人は真剣な面持ちになり、膝と膝を突き合わせてカーペットの上に座った。
    「昨日の放課後、衝突した際に頭をぶつけたのが原因なのではと思っている。もう一度同じ衝撃を与え合えば、戻れるかもしれない。だからお前が、頭突きをしてくれ」
    「冨岡先生のおでこ、既に凄く腫れて痛いんですが、もう一度して大丈夫でしょうか?」
     申し訳なさそうにすりすりと額をそっと撫ぜる炭治郎に、義勇は頷いてみせる。
    「大丈夫だ、俺はそんなにヤワじゃない。それにお前トイレに行きたいんだろう」
    「そうでした……! それじゃあ……すみません、失礼します」
    「遠慮せず全力でやれ」
    「はいっ」
     膝立ちになった炭治郎に掬い上げられる様に両頬を挟まれたのを合図に、義勇は歯を食いしばりキュッと唇を引き結んだ。
     至近距離で爛々とした瞳にじいと射抜くように見つめられ、胸がどくりと鳴る。その目は義勇の物だと言うのに、視線の熱さは炭治郎の物で不思議な感覚になる。炭治郎はいつも真っ直ぐな視線を持って、優しくも激しい想いを伝えて来るので、義勇はその度に溺れたように息の仕方を忘れ無表情の下で胸をざわめかせてしまう。
     炭治郎がその煌めきを宿した瞳を瞼の下に隠したのに少し遅れて、義勇も呼吸を取り戻すと目を閉じた。
     視覚が塞がれると嗅覚が過敏になって、陽だまりのような香りと清らかな香りが混ざり合い、義勇の中に流れ込む。そこにふわりと、甘く芳しい香りが漂って来た。
     あまりにも甘く、うっとりする程に好い香り。それを追うように鼻から深く吸うと、その香りは身体に満ちて、まるで酒に酔ったかのように鼓動を高鳴らせ頭をくらりとさせた。
     炭治郎が深く息を吸い込む音が聞こえ、いよいよ訪れる衝撃にぐっと覚悟を決める。
     次の瞬間、唇にふにんと柔らかな物が触れた。
    「⁈」
     ビクッと肩を震わせた義勇が驚き目を開けると、頬を包んでいた両手を顔の横にあげ、ぱちくりと瞬きを繰り返している青の瞳がすぐ目前にあった。
     その頬を、働き者のこの両手が逆に包み込んでいる。
     
    「「えっ⁇」」
     
    「とみおか、せんせい……⁇」
     一瞬で真っ赤に茹で上がった炭治郎は唇をあわあわと開閉させ、呆然と瞬きをしていた義勇の顔と身体も、状況を理解した途端に熱が伝わったかのように赤く染まった。
    「ご、ごめん、頭突きが待てなかった」
    「頭突きが待てなくてキスしたんですか⁈」
     しゅんと項垂れる義勇と対照的に、炭治郎はほわほわと幸せな気持ちが込み上げる。
    「先生、俺、嬉しいです」
     喘ぐように言葉を紡ぐ炭治郎の視線を受けて、義勇は「俺はいやだ」と返す。
    「えっ……」
     甘い香りが鳴りを潜め、代わりに悲しいような、胸が苦しくなるような香りが流れ込んで来る。
    「自分の顔としたと思うと嫌だ。竈門の顔としたかった」
    「えっ⁈」
     今度は花畑の花が一斉に満開になったかのように、ぶわりと甘い歓喜の香りが流れ込んで来る。この身体になってからというもの、香りは非常に豊かな表情をしていた。
     炭治郎は真っ赤な顔の眉をキッと上げ、真剣な面持ちのまま膝の上の両拳を強く握り、深呼吸をしてから
    「あのっ! 冨岡先生は、その、もしかして俺の事を好いてくれているのでしょうか⁈」
     と覚悟を決めたように言う。
    「? ああ、好きだが?」
     首をこてんと傾げ、当然のように義勇が答えると、炭治郎は顎に手を当て思案している様子になった。
    「ええと、なんて言えばいいか……俺が冨岡先生をスマホの壁紙にしてるのは、先生の事が好きで好きで大好きで、見ると元気が出るからなんです。先生に恋をしているから。冨岡先生の好きも、同じですか?」
    「恋?」
    「はい」
    「……」
    「……」
    「…………」
    「…………」
     首を傾げたままの義勇の顔がじわりじわりと赤く染まって行くのを見た炭治郎は、歓喜の想いが脳天から手足の指先まで、血液に乗って伝わって行くのを感じた。身体がビリビリと痺れている。
    「冨岡先生、俺と付き合ってくれますか」
    「……だ、ダメだ、まだ。お前は生徒だから」
    「卒業したら、いいですか?」
    「……お前の気がそれまで変わらなければ、いい」
    「約束ですよ!!」
     炭治郎は満開の笑顔の花を咲かせると、飛びつきたい思いを堪えて義勇の両手を握るにとどめ、もう一つ大切な事を聞いた。
    「キスは、卒業前でもしてもいいんですか?」
    「だめかもしれないが、したい」
    「ええ……」
     真っ直ぐに純な目で答える義勇が「竈門が元の身体に戻ったら、して欲しい」とはにかみ追い討ちをかけると、炭治郎は失神するような心地になった。
     ――いや、実際失神した。
    「竈門⁈」
     倒れる身体を支えようとして、想定外の重さにつられて倒れた義勇もまた、同様に意識を手放した。
     
     ◇
     
     暗闇から意識が浮上する。
     今何時だ? パンを作らないと。なんだろう、寝る前に、なんだか大事な事を話していたような気がする……。誰と、何を話していたんだっけ……。
     その時、暗闇にぼんやりとはにかむ自分の姿が浮かび、「そうだ、冨岡先生!」とハッと目覚めた炭治郎は、顔の両側からの視線の圧にギョッとした。裁縫の得意な禰󠄀豆子が作ってくれた特大サイズの自分と義勇のぬいぐるみが、間に挟んだ炭治郎を見つめるように横向きで置かれている。狭い。
     がばりと身体を起こすと、耳元でピアスが揺れた。
    「夢、だったのか?」
     部屋の時計を確認すると、四時四十五分を指し示している。
    「いけない、パンを作らないと!!」
     慌ててベッドから身体を起こすと、机の上の小さな義勇のぬいぐるみが顔面でペンを持っているのが視界に入った。
    「?」
     机に近づいた炭治郎は、ぬいぐるみの足元に置かれた紙を手に取るとかあぁと全身を熱くした。
    『窓の鍵を忘れずに閉めてください。また学校で 冨岡』
     夢じゃなかった。身体が入れ替わって冨岡先生の家で目覚めたのも、先生が俺に恋をしてくれているとわかったのも、キスされたのも――!!
     キスで元に戻るなんて、お姫様の物語みたいだ。
     自分の思考で茹で蛸のようになった炭治郎は、慌ててパジャマを脱ぎ始める。
     早く支度して、パンを作って、そして会いに行かなくちゃ。
     学校で待つ、俺の未来の恋人に。
     
     
     おしまい
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    まるじろ

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    お題『可愛いわがまま』

    長くなってしまったのでこちらに…
    ・キ学軸
    ・「「俺達、入れ替わってる⁈」」な炭義です
    ◇ ◇ ◇

    ヴ――、ヴ――、ヴ――……
     
     ――――何の音だろう。
     ふんわりとした温もりと優しい気持ちにさせてくれる陽だまりの匂いに包まれ、それに腕の中には何かのもちもちとした感触が気持ちいい。こんなにも極上の心地良い眠りを妨げるとは。
     響き続ける振動音に意識を無理矢理浮上させられた義勇は、心地良さを手放さぬよう、腕の中のもちもちフワフワしたものに顔を擦りつけ埋める。柔らかな感触は再び微睡へと誘おうとするが、抵抗も虚しく振動音は耳から、もちもちから伝わって揺さぶり続けてくる。そのため義勇は、目を開けぬままムゥと顔を顰めて発生源を手で探る事となった。
     つんと指先に触れた冷ややかな振動源を手に掴むと、横向きに寝転がったままもちもちを少し下にずらし、うっすらと目を開けて正体を確認する。
     スマートフォンの、アラームか。
     表示されている物をゆっくりとスライドさせたら、ようやく静寂は戻ってきた。スリープボタンで画面を消し瞼を閉じるが、なんだか目が覚めてしまった。
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