ナマモノ売りは慎重に 久楽間 潮とは、町でハンカチを落として「すみません、落としましたよ」と声を掛ければ、「触んないでくれない?」と嫌そうな顔を浮かべハンカチをもぎ取って去っていく素質を持つ(否、この表現は誇張であり、流石の潮でも「どーも」と嫌な顔をしながらもお礼を言ってくれる。余談だが、拾われたハンカチはごみ箱へ捨てられるまでがセットだ)。
そんな彼は人の感情を逆なですることを得意として、意図せず敵を作ってしまうタイプの人間であった。本人もその自覚があるため、極力人と関わらないようにしているが、生きているだけで他人との接触は生まれる。現に今も帰宅時に路地裏を通ろうとしたが、目の前で立ち往生する不良に「邪魔なんだけど」と脊髄反射で楯突いてしまうのだった。
1782