息が荒い。
口の中に錆の味が満ちている。
耳元で心臓が脈打っているようだ。
アルバイトや授業、これまでの経験で多少は足に自信はあった。
ついていけるかもと思った。
しかし、それは甘かったとすぐ思い知らされる。
捉えていた目標はとうにみえなくなった。
それもそうだ、自分が追いかけている先は歴代最強と名高い六年の先輩達なのだ。
追いつくはずがない。
それでもこの足を止められるわけがない。
せっかくあの人に繋がる手掛かりなのだから。
「っぁ…!」
足場の悪い道で転びそうになるのを辛うじて堪えて再び走り始める。
「せん、せぇ…」
吐く息と共に漏れる言葉。
「おいてかないで…」
「ひとりに、しないで…」
自分でも気付かぬ内に漏れた言葉は林の中へと消えていった。