隣の同級生トミタくんとの友人(になれそうでなれない)話が読みたくて仕方ないIfでいいんです、もしかしたらあったかもでも、名取さんが友人と認識できていないだけでも。トミタくんは気軽に友人になってくれそう。(こんなこと言っているけど、多分実際友人になるifなdp書いたら解釈違いで拒絶しそうと知人に話したら面倒くさいなと言われた、だって仕方ない。友人にはなれないのが原作なので。if書くとしたらほら、名取さんが見えなくなるしかないからさあ)
ゆるゆるな感じでトミ+名を色々書きたい。
トミタくんとの関係は決してCPにはなり得ないところが尊さを持っていると思うのです。まあそもそも友達ですらないんですけど!(名取さん談)
ただの高校の頃の同級生ですよね。
【名前を呼ぶ】
少し肌寒さを感じる季節の中、窓をすり抜けてくる日差しの暖かさに名取の意識はうつらうつらとあわいを漂っていた。
「……り……取」
誰かが呼ぶ声が聞こえて、この聞き知った声は誰だろうかとぼんやり考える。少し高めの、明るくて聞き心地の良い、気づかいにあふれた声音。ゆらゆら波間を漂う海月のように浮いた思考で記憶の糸をたぐっていく。
ああ、そうだ。彼は――
「……タ、ハルオミ」
無意識に声に出していたらしい。己の耳に確かにそう呼んでしまったのが聞こえ、パチっとシャボン玉が割れるように急速に意識が現実へ引き戻された。慌てて口を塞ぎそろりと隣を見れば、こちらに視線を向けていたトミタと目が合ってしまう。その目は常より幾分か大きく開かれていて、驚いたような表情をしている。
(まずい、聞かれたか?)
つぶやきを聞かれてしまっただろうか。大して親しくもない同級生から下の名前を口にされるだなんて、不快にさせはしなかっただろうか。
表情に出さないようにしながら、名取がそんなことを一人ぐるぐると頭の中で考えていると、ふいにトミタがへらりと笑った。
「どうした、周一」
揶揄う口調で返されたというのに、その言葉は気づかいに満ちていて、声音さえも至極柔らかい。だから、くだらぬ迷いに悩まされることもなく名取もすぐに返事ができた。
「悪い。少し寝ぼけてた」
「そっか」
最近忙しそうだもんな、とトミタは変わらぬ笑顔で相槌を打つ。仮に寝ぼけていたとしても、普段は呼ぶことのない下の名前を口にするなんてことそうそうないだろう。それでもトミタは気にした風もなく自然な調子で接してくれる。それがありがたいやら気恥ずかしいやら、名取はなんともいえない気持ちにさせられる。けれどもせっかくの気づかいを無碍にすることもできなくて、自分から先の発言に対して言及することもできない。
「もう残ってるのおれらだけだぜ」
「えっ……」
トミタの言葉に周囲を見遣れば確かに教室内はがらんとしていて、どうやら他の生徒は皆帰ってしまっているようだ。ホームルームがいつ終わったのかも記憶に曖昧で、名取にしては珍しい失態である。
「悪い、わざわざ起こしてくれたのか」
「いいって、忘れ物取りに来たついでだしさ。せっかくだし、途中まで一緒に帰ろうぜ」
「え、でもお前他の奴らは」
「待たせるのも悪いし、先帰ってもらってる。な、いいだろ」
確かにこの時期ともなれば塾でも模試があってと忙しそうにしている生徒は多い。ニカッと他愛ない笑みを向けてくるトミタに名取は自然と頷いてしまった。
このあと帰り道に祓い屋を狙う妖に襲われて、急いでトミタくんと別れるし、なんなら通りかかった(?)静司くん(トミタくんと帰っているところは見られていた)と一緒に妖退治して「おれたちは祓い屋なんだよ」って諭されるかもしれない周一さん。わかってるよ、ってますます友人にはなれないことを実感しながら、でも思い出だけは大事に取っておく。そういうことの積み重ねで同性の友人すら作らないし、あの時(意図せず)田沼くんを連れてきてしまった夏目くんにああいうこと言っていたのだとしたらなお良き。
【貸し借り】
(あ、消しゴム忘れた)
そうトミタが気づいたのは授業中のことだった。筆箱の中をよくよく探して、机の脇にかけた鞄の中にも転がっていないかを手探りで確認してないのを認識し、そういえばと昨日はかなり遅くまで机で課題をしていたことを思い出した。多分その時に消しゴムを置き忘れてしまったのだろう。授業に入る直前まで友だちと話していて、気づくのが遅れてしまったのだ。代替品になりそうなものはないし、二重線でも引いておくかとノートに改めて向き直った時、コン、と机の家に白い物体が転がってきた。周囲を覆う紙はノートの端を切ったものと思われ、開けば文字が書かれていた。
『やる』
包まれていたのは消しゴムで、それも途中で切ったものと思われ、トミタは隣の席の名取へと視線を向ける。素知らぬ顔で授業を受けている名取の手元には半分に欠けた消しゴムがあり、ふっと自然に笑みが零れた。
『サンキュー』
もらった消しゴムはありがたくそのまま使わせてもらうことにして、ノートの最後のページの端を千切って丸め、名取の方へこっそりと投げ込む。コンコン、と罫線の上に転がった白い紙を見て、名取の眉が驚きに上がった。ノートを取りながら横目に名取の様子をうかがっていれば、紙を開いたところでその眉尻が下がる。眉根を寄せながら眉尻は下げるという、なんだか困ったような、どうしたらいいかわからないような表情をしている。
トミタくん、誕生日いつ頃かな。できれば春ごろか春と夏の間くらいがいい。そうすると4月か5月かな。でも4月だといいな。それで4月ごろでも仲良いクラスメイトたちからわいわい祝われていて(ノリは小学生くらいの感じかなあ、サッカーしようぜって台詞とかから考えると)、それを見た他のクラスメイトが「へえ、あいつ誕生日なんだ」くらいの認識を持つ感じで。周一さんもその認識でトミタの誕生日4月くらいだったなあとぼんやり覚えていると私的には良きです良き。友達じゃないのでお祝いしないけど。そしてたぶんトミタくんも周一さんの誕生日知らないけど。あーもー友達してー、無理だけどー。名取さんが見える力を持っている限りこの先も絶対友達にはなれないけど。
あと三年生でも周一さんと同じクラスでいて。隣の席の同級生でいて。高校二年で文理はすでに分かれているはずだしそこそこ可能性は高いと思うんですよね。でも友達にはなれない。
で、ここから派生話。(つまりただの妄想)
また知人に「名取さんにノート(以下略)」って溜め息吐かれていますが筆が動くから仕方がない。
【誕生日】
「トミター、おめでとう!」
「よー、トミタ! これ誕プレなー!」
そんな風に気軽に菓子の箱を積み重ねていく友人たちにトミタも軽い調子で「お、サンキュー」と返していく。もう高校ともなれば誕生会をするほど子供ではないが、友人の誕生日くらい誰だって気軽に祝いたい。そういうわけで、豪勢なケーキなどなく、こうして月々の小遣いで買える程度の菓子や何やかやを誕生日に贈り合っているのだ。帰りには適当にカラオケでも寄ろうという話になっている。
「トミター、帰ろうぜー!」
「おー!」
たまたま菓子を持っていたからと、今日が誕生日だというのを聞いていた他のクラスメイトも個包装のチョコをくれたりして、放課後になればもらった菓子は紙袋一つを埋めるほどの量になっていた。楽しい気分で友人と一緒に校門を出たところでふと忘れ物に気付く。
「悪い! 課題のプリント忘れたから先行っててくれ」
「えー、主役がいねえと始まんないだろ」
「待ってるから早くしろー」
「いいって。時間過ぎてもまずいし、後で部屋番だけ連絡頼む」
間に合う時間にはしているが、万が一予約時間に遅れても困る。すぐに追いつくからと友人たちは先に行かせて、トミタは急いで教室まで戻った。自席へ行けば、案の定プリントは机の中にしまわれたままでいた。さっと引っ張り出して鞄に詰め、良かったと一息つく。
「うわ、と……」
一時的に机の上に置いた紙袋が倒れそうになるところを慌てて押さえる。荷物くらい先持ってってもらえばよかったなー、と今更ながらにトミタは思った。急いでいたためそんなことも思い付かずに教室まで来てしまったのだ。
「おい、落ちたぞ」
「おお、ありがとう……って、名取。お前も忘れ物?」
ふいに声をかけられて、見ればクラスメイトの一人である名取周一が立っている。その手にはたった今紙袋から溢れたと思われるクッキーの袋があった。それを礼を言いつつ受け取り、もう誰も残っていない教室にその姿がある理由を軽く訊ねる。
「……まあ。ちょっと、気になる虫がいたから」
「虫? 蜂とかか?」
そういえば三日前には授業中に雀蜂が乱入してきて大変だったんだよなあ、なんてことを思い出す。どうしようかと少し騒ぎになりかけたところ、なぜだか急に教室内に風が吹いてそのまま窓の外へ連れて行ってしまったのだ。誰かが天井の扇風機でも回したのかと思ったがそういったこともなく、とはいえ原因のわからないことをいつまでも突き詰めるほど高校生の心は暇ではない。事態に収拾がついたことだし、なんだか不思議だったなという話で終わったのだ。
この間のような騒ぎにならないように、今の内に適当に逃してやったのだろう。
「やっぱり、名取はいい奴だな」
そうトミタが告げると、名取は何だか複雑そうな顔をした。
「別に。それよりすごい荷物だな」
「へへ、みんな祝ってくれてさ。この後はカラオケ行くんだぜ――って、急がないと。じゃあ名取、また明日な!」
みんなを待たせたままだったと話を切り上げ教室を出ようとしたところで、ふと名取から呼びかけられた。
「トミタ」
どうかしたのかと振り返れば、ぽんっと何かを投げられる。キャッチした物を見れば「ぱくりんチョコ」というチョコの駄菓子だ。
「やる」
おめでとうの言葉はないが、先ほどまでの会話の流れから考えて、誕生祝いということだろう。
「サンキュー」
たまたま持っていただけ、なのだろうが、お祝いというのは誰からしてもらっても嬉しいものだ。ニカッと笑って返し、トミタはそのまま教室を後にした。気の良い友人たちをいつまでも待たせるわけにはいかない。駆けるように階段を降りて校舎の外へ出れば、春を迎えたばかりの柔らかな色合いをした夕空が出迎えてくれる。
「名取も、駄菓子とか好きなのかな」
先ほどもらったチョコを紙袋の一番上に重ねて、ふとそんなことを思う。たまたま持っていただけなのかもしれないが、好きだから持ち歩いていた可能性の方が高いような気がしてしまう。本当に、何となくそう思うだけなのだが。
彼の誕生日にはこちらも駄菓子のチョコくらいは用意しようと考えながら、トミタは友人たちの待つカラオケ店まで急いだ。
※周一さんぱくりんチョコ持ち歩いていたらかわいい。あとたまに静司くんにねだられるから複数個持ち歩いていたらいい。「何か甘い物ありません?」って聞かれて出してくるのがいつもぱくりんチョコだから、(この人ほんとこれが好きだな)って静司くんに思われていたら良いね。学生だなあ。
周一さんが言っている虫=まあ妖ですよね。