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    三重@ポイピク

    好き勝手に書いてる文字書き。ツイステのイドアズにはまってます。Twitterはこちら→@mie053

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    POIPOI 24

    三重@ポイピク

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    イドアズ♀パラレル。殺し屋ジェとフロが同業のにょたアズくんに初めて会う話。やや物騒。ジョ◯ウィックのコンチネンタルホテルをパロってます。にょたアズくんにライダースーツ着せたかっただけ話。

    #イドアズ
    idoas
    #女体化
    feminization

    light my fire 
    鋼鉄の馬を乗りこなし、けたたましい音と共に降り注ぐ雨を裂くようにして、街中を駆ける者がいた。フルフェイスヘルメットの丸いシルエットは少しも揺らぐことはない。今は背中しか見えていないが、駆け始めた時に見た黒いライダースーツを纏う肢体は、柔らかな曲線で作り上げられた女のものだ。大型のバイクに跨る姿が堂に入った、つい先ほど自分と片割れの仕事を奪った張本人の背中を、ジェイド・リーチはヘルメット越しに見失うまいと睨みつける。
    ジェイドからやや前に出ている血を分けた片割れにして仕事の相方でもあるフロイド・リーチの背中とバイクも時折視界に入り、そうかと思えば外れていった。女が操るバイクが、通りの右側へ曲がっていく。ジェイドもまた自身が乗るバイクの速度を、制御できるギリギリまで上げて追いすがった。
    ジェイドとフロイドは、兄弟で殺し屋を営んでいる。初めの頃はネット経由で好みの依頼を受け付けていたが、数年前にある殺し屋を統括する組織からスカウトを受けた。組織に属するという行為に重きを置くつもりのないジェイドとフロイドは、勧誘を断ろうかと考えた。しかし予想以上に組織の規模が大きかったことと、属するだけでも受ける恩恵が大きいことから、ひとまず所属することとした。
    組織からの依頼は、指名されるものと、提供されるものがある。提供式のものは、依頼の一覧があり、達成条件を満たしたことを証明できれば成功報酬が支払われるもの。依頼内容はピンからキリまで様々で、気分屋であるフロイドは1つとして同じもののない依頼から選ぶのを好んでいたし、ジェイドもまた変わった依頼を受けては楽しんでいた。基本は殺しだが、それだけではない依頼も多い。後にジェイドもフロイドも指名依頼を引き受けるようになったが、やはり提供式のギャンブル性が面白く、フロイドと一緒に楽しんでいた。
    今日の依頼は提供式の方だ。組織に属していれば誰でも狙うことのできる男の命と、彼が経営する会社の裏帳簿を奪う。男が何をしてきたかも裏帳簿も興味はないが、難攻不落に等しい住まいに忍び込むのは面白そうだった。ジェイドもフロイドもいつものように、苦心さえ楽しみながら件の男の命を奪いに向かった。そうしてターゲットが怯え隠れる部屋の扉を開け放った瞬間に、今彼らの前を駆けている女の急襲に遭ったのである。
    難攻不落という場所の特徴と、用心深さを見せるターゲットの様子から裏帳簿も厳重に隠されていると読んだらしい女は、裏帳簿を探すのに当たって邪魔な人間を、もろともに吹き飛ばした。部屋に放り込まれたものが爆弾であると瞬時に判断できたジェイドとフロイドはなんとか逃げられたが、籠城を破られたターゲットは逃げられず死亡。逃げたジェイドとフロイドも、爆風によって叩きつけられ一時的に行動不能となった。倒れる自分達の前を悠々と通る女の、ライダースーツに身を包んだ姿を仰ぐしかない中、獲物を横取りした女を追う事と決めた。
    角を曲がりきり、服越しに叩きつける雨の感触が邪魔で仕方がない。先行するフロイドは先ほどよりも女に近づいていたが、女はそれを察したのか、途中の細い路地へバイクを滑りこませる。少し通り過ぎたフロイドが戻ってくるより先に、ジェイドがその路地へ入った。迫るように立つ建物が両脇で壁となり、その間にも容赦なく雨が降り注ぐ。女の背中は先ほどよりも近づいている。片手が空けば銃撃で止められるが、今のスピードでは難しい。近づけない背中から目を離さない。あのバイクが向かっている先が予想通りなら、途中で止めなければ勝ち逃げされる。
    本来なら苛立ちが勝るだろう場で、しかしジェイドは口元を吊り上げた。提供型の依頼にはありがちな事態だが、ここまで逃げおおせているのは初めてだ。目の前を走り続ける女を捕まえてやりたい、捕まえそのヘルメットの下の顔を拝んでやりたいという好奇心が強くなる。ようやく細い路地を抜け、再び大通りへ出ながら、ジェイドはバイクの速度を上げた。推定している目的地がより近づいてくる。前を行く車の横を抜け、徐々に徐々に距離を詰めていく。フロイドは後ろからついてきているだろうか。後ろを振り返る余裕はない。
    更にスピードを上げ、制御がより難しくなる。女の背中が近づく。女も音が聞こえたか、ヘルメットが振り返る素振りを見せる。目的地だろう建物、その背の高い姿が見えてくる。早く早く早く。もっと早く、彼女に追いつけ。嘶きのように音を上げるバイクの振動と、スピードを上げた事でより叩きつけてくる雨。それら全てを感じながら走り、最後の交差点を抜けたところで──真横から、女のバイクに向かってジェイドと同じバイクが向かっていく。
    いつの間にかフルフェイスのヘルメットを取り去り、髪も顔も濡らしながら獰猛に笑う片割れの横顔が見えた。
    女も流石に予想外だったのか、揺るぎなかったバイクの動きが蛇行する。それでも転ぶことはなかったのは意地だろうか。肉薄したフロイドはそのまま女の横へ並ぼうとして、女がバイクの速度をあげてギリギリ逃げる。そこだけ見れば、ジェイドとフロイドの勝利を予感させる光景だった。しかしジェイドは、もうすぐ目の前に迫った建物を見つけていた。
    フロイドはきっと見えていないだろう中、女が更に速度を上げて、そのまま件の建物、晴れていればタクシーが数台止まっている出入り口近くへ向かっていく。自殺行為にも見える動きを目で追って、ジェイドは女がバイクから手を離し、乗り手を失ったバイクが建物の壁へぶつかる瞬間を見た。
    鈍い音、ついで響く爆発音。バイクから数メートル横に、頭を守る体勢で女が転がる。
    ジェイドの前を走っていたフロイドの速度が落ち、ジェイドもその動きにならう。事故現場だというのに、周辺住人が出てくることもない。雨の恩恵か、爆発が一度響いたが、火の手が派手に上がることもなかった。徐々に勢いを留めて、件の建物──高層階を持つホテルの前で止まったジェイドとフロイドは、出入り口にあたる場所、階段の下に転がったままの女を見下ろした。一応受け身を取ったらしい女は、地面に腰を下ろしたまま動こうとしない。一見すると事故に呆然としているようだが、ジェイドには分かっている。この勝負は、女の勝ちだ。
    バイクから下りたフロイドが、ゴールドとオリーブの色違いの目をぎらつかせて女へ近づく。ジェイドはそれを止めなかった。ホテルの出入り口から出てきた人物が、どうせ止めることを知っていた。
     
    「こらこらこら! おやめなさい!」
     
    フロイドの動きを止める、男のうろたえた声。苛立った顔のフロイドがそちらを見たのと合わせてジェイドも頭を動かしてみれば、閉じきろうとしているホテルの出入り口の前で男が立ち止まる。黒の三つ揃えのスーツは品が良いものの、顔の大半を仮面で隠しているためか、胡散臭さが強い。男こと、組織が運営するコンチネンタルホテル、その1つの支配人を任じられているディア・クロウリーは、ジェイド、フロイド、女を見渡した。そしてすぐさま、ジェイドとフロイドに視線を向けた。
     
    「『ホテルの敷地内においては、いかなる仕事も禁ずる』。ジェイド・リーチさん、フロイド・リーチさん、このホテルの宿泊客である貴方達なら知っているはずですよ! これ以上の行動は規定違反と見なします!」
    「は? オレら入ってねえじゃん」
    「残念ですがフロイド、彼女が敷地に入っています」
    「はあ? うわ、マジだ」
     
    支配人の咎めに、濡れた髪をかき上げたフロイドが忌々しげに言うので、原因である女の座っている位置を教える。ジェイドが指摘した通り、バイクから飛び降りた女はホテルの敷地内に入っていた。組織に属する殺し屋達が、依頼を受けた際にあらゆる支援──情報収集、武器の準備、依頼達成後の遺体処理、はたまた傷を負った際の治療まで──を受けられる、ホテルの体を取った拠点において、武力を行使することは禁じられている。一度破れば組織での席を失い、違反内容によっては組織から懸賞金を賭けられることさえある決まりだ。正直に言えば、場合によっては破るのも楽しそうな決まりだが、本日負った怪我の具合や武器の不足を考えると、今日はやめておいた方が良い。
    つまり、ホテルの敷地内に辿り着いた女の勝ちなのだ。
    フロイドも、頭に血が上っていながらそれをすぐ理解したのだろう。最近では珍しいほど不機嫌そうな顔で女を見下ろし「ずりぃの」と一言呟く。そんなフロイドの前に座り込んだ女は、初めて声を上げた。雨音にも負けない高い声が、勝ち誇った笑いを響かせる。笑いと同時にゆっくりと立ち上がった女は、睨むものの攻撃しないフロイドへ更に笑い声をあげ、ホテルの階段を上がっていく。屋根のあるところに着いたところで、再び振り返った彼女は、取るつもりがないと思っていたフルフェイスヘルメットを外した。
    照明を眩く照り返す、艶やかな銀髪が現れる。小作りな白い顔、その片側に沿うように伸ばされた一房を除いて短く整えられているが、ボーイッシュな印象は感じない。長い睫毛に縁どられた青い目、通った鼻梁、口紅を塗った艶のある唇と、その傍についた黒子。先ほどまで豪快にバイクを乗り回していたとは思えない、色香と繊細さを持った顔は、美しいと称するに相応しいだろう。
    しかしジェイドは、その顔立ちの美しさより、満足げな笑みから一転して浮かべられた、敗北者を見やる勝者の傲岸が滲む笑みに惹きつけられた。
     
    「お疲れ様でした。あなた達が先に動いていたお陰で、こちらはすぐに結果を出すことができたので、そこは感謝申し上げておきます」
     
    笑みを湛えた女は言う。艶のある唇から吐かれた言葉、そのあまりの面の皮の厚さに絶句する。
     
    「本当に助かりました。お陰でエステの予約時間にも余裕で間に合います。あの難攻不落の場所を、好奇心旺盛と評判のあなた達が偶然先んじて襲撃してくれていて、本当に助かりました」
    「アーシェングロットさん、もう少し穏やかな帰還はできなかったんですか?」
    「失礼しました支配人、そちらの紳士方が熱烈に追い回してくれましたのでつい。文句はそちらに仰ってください。ではお2人とも、ごきげんよう」
     
    言外に自分達を利用して自分の仕事を進めやすくしたと語った女は、支配人の追及も軽やかに躱した。化粧の乱れもない白い顔に浮かべた笑みを深めて、青空とたとえるには酷薄な印象を受ける瞳でジェイドとフロイドを見やり、ライダースーツを纏った背中がホテルへ消える。
    滲む傲慢さと狡猾さ、全ての報酬を手に入れた強欲さ。強烈な邂逅に、しかしジェイドの心に怒りはない。追いかけていた時から募っていた興味が、更に熱を増していく。
     
    「ジェイドぉ、なにあいつ」
     
    雨の中、片割れが問いかけてくる。その声からは既に苛立ちが消え、ジェイドと同じく興味が滲んでいる。同じ気持ちらしい片割れに、ジェイドもまた、素直に返した。
     
    「ええ、フロイド。彼女、面白そうですね」
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