【RBB×TB】泥酔しているRBBとTBのはなし「おやおや、随分出来上がっちゃって」
帰宅したラップバトルブレイクが珍しく酔っていた。
覚束無い足とゆらゆら動く視線。彼がここまで酔う事はあまり無い。正直良くここまで帰ってきたなと思いながらテクノブレイクは、ソファに座りながら虚を見つめるラップバトルブレイクの事を面白そうにしばらく眺めていた。
「大丈夫ですか~?」
「……」
「ダメそうですねぇ」
目の前で手を振ってみるが、ぼんやりしたまま反応がない。
絡んでもそれじゃあ面白くない。早々に飽きてしまったテクノブレイクは、水くらいは飲ませた方がいいと思い立ち上がる。が、不意にぐいと腕を引かれて思わずバランスを崩すようにソファに再び座ってしまった。
引かれた方に目をやると、ラップバトルブレイクの手がしっかりとテクノブレイクの手首を掴んでいた。
「どうしたんですか突然」
「……どこ行くんですか」
不機嫌な子供のように言うから、テクノブレイクはそれが可笑しくて思わず「ふふ」と漏らした。
「どこにも行きませんよ♡お水を取ってくるだ……」
「貴方はいつもいつも」
揶揄うように言った言葉は、途中で遮られてしまった。
「ふら~ってどっか行って、カリスマブレイクやら天彦やら、最近はアイドルブレイクにもちょっかいかけて」
どこかをぼんやりと見つめていたラップバトルブレイクの目が、テクノブレイクをまっすぐに捉えた。
「別に僕と一緒にいなくてもいいんじゃないですか?あなたのお気に入りは他に沢山いるんですし」
さっきまでの様子とは打って変わり、冷めたような声音でそう言った。
「え……?」
ラップバトルブレイクは別に酔っているから適当なことを言ったという訳ではない。確かにテクノブレイクは、ラップバトルブレイクと一緒に住んでいながらも、ちょくちょく他の天彦に遊んでもらいに(ちょっかいを出しに)行っていた。
しかしこれは今に始まったことではなく、そのことにラップバトルブレイクが何か言ってきたことは今まで一度もなかった。
突然のことにテクノブレイクは一瞬思考を停止させた。
ラップバトルブレイクは、謝罪が来るのか言い訳が来るのかと、顔を俯かせたテクノブレイクを待った。
数秒。
そしてテクノブレイクは勢いよく顔を上げた。
目をキラキラと輝かせて。
「もしかして、嫉妬しているんですか」
「は」
ぽかんとしているラップバトルブレイクを他所にテクノブレイクは「そうですかそうですか♡」と一人頷いている。
「酔って気持ちが出てきちゃったんですね、かわいいですねぇ♡」
そう言いながら頭を撫でられて、ラップバトルブレイクはなんだか酔いが醒めていくような気がした。
「他の誰かは他の誰か、僕は貴方が貴方だから好きなんですよ♡」
「……やめてください」
何を言っても永遠にこの調子だ。と、もう馬鹿馬鹿しくなってきてしまい、ラップバトルブレイクはテクノブレイクの手を振り払ってフラフラとした足取りで寝室へ向かおうとする。
すると、テクノブレイクはラップバトルブレイクを止めるように正面に立ち、そのままラップバトルブレイクをぎゅうと抱き締めた。
「僕は、貴方が居るからここに帰ってくるんです。それじゃダメですか……?」
甘えるような声が、まだぼんやりしている頭に絡みつくように響く。
はぁ、と一つ溜息をつくとラップバトルブレイクはテクノブレイクの背に腕を回し、軽く抱き締め返した。
「貴方って人は、本当にずるい人だ」
「でもそんな僕の事がお好きなんでしょう?」
悪戯っぽくテクノブレイクは笑った。
本当に、振り回されてばかりで勝てない。けれどそれでも一緒に居てしまう自分も大概だと思う。
ラップバトルブレイクは返事をする代わりに自嘲気味に笑った。