熱は結局三十八度九分まで上がった。 ざあざあ、ぱちぱち。
雨の音、それから雫がビニールに当たって弾ける音が響く。
本日月末の土曜日。霊とか相談所は休業である。霊幻が風邪を引いた為だ。エクボはいつもの都合のいい男の身体を借りて、霊幻のアパートへ向かうところであった。
自分の事を蔑ろにしがちな所長だとは思っていたが、昨日の土砂降りで茂夫に傘を貸して自分が風邪を引いている霊幻のことを考えると、最早ただの馬鹿だとしか思えない。
自らを大事にしない霊幻に対して苛立ちを覚えながら道を曲がる。そこは霊幻がよく行くコンビニ。そして、店先で真っ赤な顔で雨宿りをしているらしい霊幻の姿。
「……おい。」
「うわっ、エクボか。びっくりした。」
「お前さん、なんでこんな所にいる?馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、床に臥せっている間大人しくも出来ねえ馬鹿だなんてな。」
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