カズキ夢2
2.ピッチング練習の話
今日の朝思いついた。電撃が走った時しばらく頭が熱かった。
ミナトトライブ練習場にて、あたしはピッチングの練習をしていた。
あたしは元々ガレキ山で過ごしてて、盗みを働いていたから逃げ足というか足だけは早い。でも、基本1人で行動してたから投げて仲間に渡すとか、投げられたものをキャッチするとかはほとんどやったことがなかった。
そう、あたしはチームワークというのを知らないのだった。
今日はハル君や三田君に教えてもらう事になっている。出来るかは……正直怪しい。
「とりあえず1球投げてみよう。そうしたら何が悪いのか、どうしたらいいのか、分かるかも。」
「よっしゃー、いっくぞー。」
投げるって、こう……かな?
「ほっ!」
とんっ。ボールの方向を見ると、ゆっくりと何故か自分の方にころころ転がってきた。
「えっ?」
「投げるタイミングがちょっと違うな。こう、んぁー、教えるのって難しいな!?」
「今投げるタイミングが下に行ってから投げてたから、地面に打ち付けてる感じだったんだけど……」
「じゃあ、僕が投げるタイミングになったら手を叩くから、それで投げてみてよ。」
アドバイス通り、投げてみることにした。
「ほっ!」
とんっ。ボールの方向を見ると、ゆっくりと何故か自分の方にころころ転がってきた。
「あっ、ごめん。僕のタイミングが悪かったね。」
「めげない!もいっちょいくよ!」
「ほっ!」
とんっ。ボールの方向を見ると、ゆっくりと何故か自分の方にころころ転がってきた。
「あ、れ……?」
「ふっふっふ、こういうときは俺様に任せろ!」
「俺様が始めたての頃は、ボールをまっすぐしてから投げてたな。お前もやってみろよ。」
「ほっ!」
とんっ。ボール方向を見ると、ゆっくりと何故か自分の方にころころ転がってきた。
ショボーン。どうしたらいいのか、わからない。
「君たちさぁ、もっと他の着眼点あるでしょ。」
聞いたことある声だった。カズキさんだ。
「一番悪いのは下向いてること。もうちょっと上見て。」
そういいつつ、カズキさんがあたしの後ろに来て、支えるように腕を持つ。近い。背後にカズキさんがいるという事実に恥ずかしくなってしまう。
どうしよう、そう思うと手が震える。
「あはは」
「な、なんですか!」
「なんでもないよ?さ、集中して?」
左耳の方に声が近くて、顔がほてる。ドッドッっと心臓の音が聞こえて、自分で「恥ずかしくなんてなっていない」と言うように深呼吸をする。
「初めは僕と一緒に投げようか。こういうのは体で覚えるべきだから。」
覚悟を決めて、つばを飲み込む。
「いくよ?せーの」
「っ!」
ひゅんと、右で鳴る。
そのボールは、壁に当たった。床じゃなくって、壁に。
「あとは威力があれば、試合には出れるぐらいにはなるよ。まあ、よほど努力が大好きなお猿さんじゃないとだけど。」
「今度は一人で投げてみなよ。そんなに重く考えないで、投げてみて。」
あたしはコクリと頷き、勢いよく投げてみる。さっきと同じ感じで、シュッと。
「はぁっ!」
バリンとガラスの割れる音。コンクリートを貫くまでの威力はないが、投げたボールの方向を見るとキラリと流れ星のように落ちている。
「!、僕、取りに行ってきます!」
三田君は目を丸くして。カズキさんは口を開いて広角が上がっている。
「うわ、すごいねこれ。君なかなかだよ?」
「ふ、ふん。俺様もこのぐらいできる、はず。」
「ごめん、正直ここまできると思ってなかったんだよね。かろうじて送球ぐらいならできると思う。」
「俺様の、最高ピッチャーは絶対超えれないからな!?ていうか、超えさせない!」
「お、熱いね。これはピッチャー交代もあり得るかもなぁ?まぁ僕は戦略一筋だからね。そっちは任せるよ。」
「おいカズキ!そんなことないからな!?――
――軌跡