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    なんなの

    @honmani_nannano

    日本語 トテモ むずかしネ

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    なんなの

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    猫被りしてた洋に三が食われる話

    人間、誰しも一度は騙されたと己の愚かさに嘆くことがあるだろう。
    ベタなところで言えば試験直前の友人が口にする勉強していないだったり、マラソン大会でスタート時は並走していたはずの友人が口にする一緒にゴールしようだったり。
    夕方のニュースでは何処かの誰かが必ず儲かる方法の授業料として怪しいセミナーに何千万という大金を支払っていたと報道され、交番の前には孫や子を装って指定の口座へ現金を振り込ませるオレオレ詐欺に騙されないようにしようと注意喚起のポスターが掲示されている。
    気になったバンドの動画は再生前にいかにも胡散臭いサプリメントの広告が流れ、友人から借りた雑誌の中には開運グッズと札束だらけのバスタブに美女と並ぶ不釣り合いな男の写真が載っている。
    大なり小なり日常には弱者を騙し利益を得ようとする危険があちこちに潜んでいる。
    ちなみに俺が騙されたと叫んだ最も古い記憶は絶対に存在するものだと信じていたサンタの正体が実は両親だと気付いた時だ。
    サンタさんからプレゼントが欲しいならうんと良い子にしてお手伝いをしなさい、という両親の言葉を信じて一生懸命頑張った挙句の出来事に幼い俺は早くも大人の卑怯さを知った。
    そして騙されたと叫んだ最も新しい記憶は

    「騙された」
    「ええ…人聞きが悪いなあ」

    今である。
    まさに今、俺は弱者として搾取されようとしている真っ最中だ。
    それもあろうことか恋人の水戸洋平十五歳によって大事件が起きてしまった。
    非常事態に気付いて叫ぶ俺とは正反対に水戸はいつも通りの優しい口調で、さも心外だと言わんばかりにあからさまな溜息をついた。
    あまりの冷静さに俺がおかしいのかと不安になったが、いやいやと首を左右に振って自分を信じた。
    俺は騙された、そう、この水戸洋平という十五歳の子供に騙された。
    何も間違ってはいないし、言ってしまえば被害者という立場にある。
    人を突然布団へ押し倒した挙句、馬乗りとなって今にも食い掛ろうとしているこの男によって騙されたんだ。

    「人聞きが悪いって何だよ、そう思うなら退けよ」
    「だって、退いたら逃げるでしょ」

    当たり前だ馬鹿、と怒鳴りつけたいのに、こんな状況でもニコリと笑ってみせる水戸の度胸に面食らって何も言えなくなった。
    何より逃がす気など無いと宣言されたも同じこの状況が恐ろしく、いっそ夢であってくれと願った。
    いや、そうか、これは夢だ、夢に違いない。
    思えば今日の部活はいつもより厳しく、疲労だっていつもの倍だった。
    その足で以前から約束していた水戸の自宅へお泊りデートに招かれ、水戸の手作り料理を満喫し、客人はどうぞお先にごゆっくりと風呂を進められ、程よく温まった体で気持ちよく寝落ちしてしまったのだろう。

    「夢じゃないからね」
    「思考を読むなよ」

    畜生、現実だ。
    ならばどうしてこうなった、どこから俺は騙されていたんだ。
    俺が覚えている限り、水戸はこんな野蛮な行いをするような人間ではなかったはずだ。
    寧ろどちらかと言えば奥手な方で、まさに十五歳そのものだった。
    交際を始める前もどこか頼りなく、ついつい世話を焼きたくなるほど中学生の面影を残していた。
    それがどうしてこんなにも雄々しい表情で俺を見下ろし、逃すまいと両腕を拘束されているのか全く理解出来ない。
    これが初心な水戸なりの背伸びであるなら逆効果、大失敗だと笑ってやろう。
    いや、十八歳である大人な俺に合わせようと懸命に努力する姿を笑っては可哀想かも知れない。
    本当は慣れないことをしている自分を恥じている可能性もあるのだから笑わず慰めてやってこそ大人として正しい振る舞いではないだろうか。

    「俺は本気だよ」
    「だから読むなって」

    ことごとく俺の願いは打ち砕かれ、水戸が本気であるという事実だけが残った。
    両腕を拘束された状態でしっかりとマウントを取られたまま逃げ出すのは非常に難しい。
    腕力で敵わないとは身をもって知っているし、迂闊に乱暴な動きをとるのは危険な気もする。
    それによく考えろ、水戸が本気だとしてこれ以上何が出来ると言うんだ。
    喧嘩の腕っぷしは湘北一と言えど本質は高校生と中学生の中間くらい。
    個人的に親しくなったのは部活終わりに校門前で遭遇し、桜木と合流する約束をしていたが待ち合わせ場所を間違えて先に帰られてしまった、と眉を下げて笑う姿に十五歳のあどけなさを感じたことから始まる。
    一人で帰るのも寂しいし、どうせ駅まで行くなら一緒に帰らないという水戸の提案を断る理由は無かった。
    知り合ったきっかけがきっかけだからはじめこそ苦手意識はあったものの、まるで何も無かったかのように俺のプレーを褒めたり興味を引く話題を振ってくれたりする水戸との会話は純粋に楽しめた。
    そんなことが何度も続き、毎回おいてけぼりにされる水戸を憐れみ桜木を叱りもした。
    しかしアイツはヘラヘラと笑い、まあまあと俺の背中を叩いてちっとも聞く耳を貸さなかった。
    アイツがそんな調子だから俺と水戸が二人で下校する回数が増え、気が付けばそれが当たり前になっていった。
    友人と呼べるほど親しくなった頃には休日に二人で出かけることも増え、部活の後輩とはまた違う関係に新鮮味を覚えた。
    友情が愛情に変わった頃、気恥ずかしそうにした水戸に好きだから付き合いたいと打ち明けられ、俺も同じ気持ちだときちんと伝えた上で交際が始まって今に至る。
    思い出せ、あの思春期全開な初々しい水戸の姿を。
    交際が始まってからはいつもニコニコと笑って俺を見上げ、三井さん、と嬉しそうに名前を呼んでくれていた。
    誰がこんなにも可愛い水戸に喧嘩をさせたのかと自分に腹を立てる日もあり、もう二度と喧嘩なんてさせてなるものかと決意したほどだ。
    交際を始めて間もなく、手を繋ぎたいという水戸の願いを当然俺は断らなかった。
    お互いの性別のことで人によっては偏見もあるかも知れないがそんなことは気にも留めなかった。
    俺が平気でも水戸は気にしているかも知れないと外でのスキンシップを増やせば水戸が益々嬉しそうに笑い、誰の目にも明らかな関係を喜んでいた。
    順調に交際が進んで二種間が経った頃、これまた気恥ずかしそうに水戸はキスがしたいと言った。
    奥手とは言えまだ十五歳だ、そっち方面の好奇心は抑えられないのだろう。
    恋人なのだから勿論了承し、帰宅途中の街灯も無い薄暗い路地で初めてのキスをした。
    何度か感触を確かめるようなくすぐったいキスを繰り返したあと、しっかりと舌を入れてきたのは流石に驚いたというのはここだけの話だ。
    交際から三ヶ月を間近に控えた先日、三ヶ月記念にお泊りデートがしたいと言ったのも水戸だ。
    なんとまあ可愛いことを言うのだろうと感動した俺は翌日に部活が無い日を選び、これで一日中ずっと一緒に居られるぞと二人で喜んだ。
    恋人の家に泊まるという一大イベントは俺も楽しみでたまらず、夜更かしでもしようかと持ち掛けた。
    すると水戸は微笑みながらえっちしようね、と言ったあと、絶対に、と力強く続けた。
    謎の気迫に負けた俺はわけが分からないまま頷き、深く考えるのをやめた。
    それから今日まで、水戸はまたいつもの可愛い十五歳の恋人のままだった。
    あまりにいつも通りの姿を見ているとあの時感じた気迫や不穏な空気は俺の気のせいだったのかも知れないと納得し、安心していたのにどうしてこうなったんだ。

    「そもそも今夜はそういう約束だったでしょ」
    「あれはお前が一方的に…って言うか、だからって馬乗りになるなよ」
    「だって三井さん、あまり理解してないだろうから」
    「理解って何だよ」
    「セックス」

    おいどうした、先日までえっちと口にしていたお前はどこへ消えたんだ。
    理解も何も俺はきちんと性教育を受けたし、年相応に知識と常識もある。
    男同士ではそれが不可能とも知っているからこうも強引な水戸へ戸惑いが隠せず、何が始まるのかと一瞬たりとも気が抜けやしない。
    正直なところ、じゃれあうようキスをしながら同じ布団で眠りさえすれば良いのだろうと甘く考えていた俺も悪かったかも知れない。
    けれど無理なものは無理なのだからコイツがここまでムキになる方がおかしな話だろう。
    まさか今更男同士でも出来ると思っていました、なんてオチならば一生笑い話にしてやろう。

    「簡単に説明すると…膝立ち出来る負担がかかるなら無理にとは言わないけど」
    「…それくらい平気だ」

    ふいに拘束が解かれ、先に水戸が布団の上へ両膝をついたまま上半身を起こした。
    真似するように俺も膝立ちとなり、この行いの意味について考えてみた。
    お互いに膝立ちのまま向き合い、正面から真っすぐ見つめた水戸の表情はあどけさなも中学生の面影もあったものではない。
    しっかりと男の顔つきをしていて、俺の緊張を察して微笑む仕草が大人びている。
    この野郎、よくも今日まで上手に猫を被ってくれたものだな。
    どこからどこまで演技だったのかは分からないが、俺の可愛い可愛い水戸洋平十五歳は幻だった。
    もしかすると全てが俺を油断させる為の演技だった可能性もある。
    しかもこの調子じゃそれをちっとも悪いと思っていないのだから大したものだ。

    「何だよ急に甘えて…ハグがしてえならあああああああ」
    「はいはい、ちょっと大人しくしてね」
    「ばおま、はうわああああああああ」
    「ははっ、うるせー」

    次に水戸が正面から優しくと抱き着いてきたものだから俺はてっきりハグがしたいのだと思った。
    ゆっくりと背中に回された両腕は下へ進み、左手でしっかりと腰を固定すると右手が更に下へ進んだ。
    変わった甘え方をするものだと油断した次の瞬間、布越しに尻の間へ指を滑らせ、ぐりぐりと押し込もうとしてきたと同時に俺の喉から一生分の悲鳴が飛び出た。
    たったそれだけで水戸の意図を理解してしまい、いやいや有り得ないだろと脳が理解を拒んだ。
    逃げようと必死に体を捩じっても暴れても容易く左手一本で妨害され、ただただ悲鳴を上げるしかない。
    そうしている間も水戸はあははと笑い、異常な落ち着きぶりに全身から汗が出た。
    他人の性的嗜好について、俺は何も意見する気は無い。
    ただそれは俺の尻が無関係である場合にのみの話で、それも恋人ともなれば話は別だ。
    何より尻だぞ、尻に何を入れるつもりなんだこの馬鹿は。
    いや、聞けばきっと当たり前のようにナニを、と答えてくれるに違いない。
    盛んな十五歳だとして、尻を代用に使うという発想になるなんて最近の若者はどうなっているんだ。
    もしも俺が水戸の立場でも絶対にそうはならないし、まだマシな方法を探し出せる自信がある。

    「大丈夫だって、今日は最後までする気は無いから」
    「最初もさせねえよ」
    「約束したのに」
    「そ、そもそもお前が猫被って俺を騙しただけだろ」

    ようやく解放された頃には息切れを起こし、肩で息をしながら布団の上へ仰向けになった。
    すかさず両手はフリーにしたまま再び俺に跨る水戸を突き飛ばす力も残っていない。
    だからってこのまま好き放題されて終わる俺ではない。
    何度も言うが俺は水戸の猫被りに騙されていたんだ。
    そんなことをしたやつにほらどうぞ召し上がれと簡単に差し出してなるものか。

    「騙しただの猫被りだの言うけど好きな相手に自分を良く見せようと振る舞うことの何が駄目なのさ。多少の見栄は誰にでもあるし、三井さんだって飲めやしないブラック頼んでたでしょ。それともここまでは良いけどここまでは駄目とか制限でもあるわけ三井さんの匙加減それとも常識的な問題法律マナー何を根拠にそう語気を荒くして俺を責めてるのかきちんと教えてよ。普段は俺が背伸びをしているのを可愛い可愛いと言うくせに自分の都合が悪くなると詐欺師のように扱うなんて人間のすることじゃなくない健気な十五歳の努力を悪く罵って気分はどう散々言われてこっちはうんざりだよ。もちろん三井さんのことは好きだけどさ、好きな相手からやれ騙しただ猫被りだ言われて傷付くこっちの身にもなってよ。え、もう涙目になってるの早くないうわマジか…ヤバい…超可愛いね。でも残念、そのていどの泣き顔じゃまだ許してあげないよ。セックスについても人を変態のように見てるけどアンタが無知ってだけなの。分かるたった二つが学年が違うだけで大人ぶっておきながらまるで知識の無い自分が恥ずかしくならない無知が駄目とは言わないし、これから二人で学んでいけば良いとは思うよ。たださ、真っ向から拒否するのは礼儀に欠けるとは思わなかったせめて男同士で付き合うってなった時点で調べるとかしなかった俺とはそんな気にもならないの俺が好きだって言うから仕方が無く付き合ってくれていたとかあーあー最悪の気分だな。てっきり両想いだと信じていたのにお情けで付き合ってくれていたなんて人生最悪、もう何も信じられないよ。アンタは純粋無垢な十五歳を誑かして傷付けました。初恋泥棒の名が聞いて呆れるね。でも俺はそんな三井さんが大好きだし、これからもっと仲良くなりたいなと思ってるよ。セックスだって恋人同士の大切なコミュニケーションだしね。だから俺はあくまでもこの先の俺達二人の為に勉強していたってことだけは分かって欲しいかな。それだけ俺は真剣に三井さんと交際しているんだってこともね。そんな俺に恩を仇で返すような真似をした自分が情けなくならないこんなの俺でなきゃ許されなかったと思うね、うん、絶対そう。となるとはい、三井さんから何か言うことは」
    「ご、ごめんなさい」
    「うん、良い子だね」

    正直に言う、よく分からなかった。
    唯一俺が悪いということだけは理解したので、俺の謝罪にようやく水戸が笑ってくれて一安心した。
    水戸の言う通り、俺が無知な上に自ら勉強を怠ったのが悪かった。
    それは分かったが、だからと言ってではこのままはじめましょうの気分にはなれない。
    俺にとっては未知なる世界だし、せめて水戸と同じくらいの知識は欲しい。
    どうせならこのまま時間を稼いで水戸の両親のどちらかが帰宅するまでを待とう。
    親が居るとなれば水戸もその気が失せるだろう。

    「今夜は俺達二人だけだよ」
    「………」
    「とりあえず今夜は口と手だけでお互いの気持ち良いとこを探そうよ」
    「………その先は」
    「そりゃあ…ねえ」

    ゆっくりと細められた瞳が笑っているのに全く笑っていないとはどういうことか。
    やっぱり無理だ、恐い、と言って今からでも帰りたい。
    だけどそれを言って水戸を傷付けてしまうのも、怒らせてまた長々と叱られるのも嫌だ。
    水戸は俺達二人の為だとも言っていたのだから俺だって協力するべきなのだろう。
    子供じゃあるまいし、無理だの恐いだのと情けないことを言っている場合ではない。
    二人の為だと思えばきっと前進出来るし、今以上に俺達は仲良くなれるはずだ。
    ………本当か

    「そう身構えないでよ、俺だって準備したんだから」
    「準備」
    「…まあ、心の」

    そうか、と短く返して上から俺を見下ろす水戸をジッと見つめてみた。
    風呂上りで前髪が下りているからいつもより幼く見えるはずが今夜は男らしく感じる。
    いずれはこの小柄な男とそうなるのかと想像するのはまだ難しく、現実味が無い。
    女との経験すら無い自分に上手く出来るかも怪しくていまいち乗り気になれない。
    水戸一人だけしっかり心の準備をしているのはずるくないかとまで不満に思い、つい癖で下唇を突き出してしまうとそれをあやすように頬を優しく撫ぜられた。
    どうせスキンシップをするならこんな風に優しいものが良いと思う自分こそ子供みたいで少し癪だ。

    「ゆっくりで大丈夫だよ。その時が来たらちゃんと慣らしてあげるから」
    「慣らすって…尻の話か」
    「そう、せめてこのくらい拡げないと無理かな」
    「…そもそもそれが無理だわ」

    このくらい、と言って水戸は利き手の人差し指、中指、薬指の三本を立ててスリーピースを作った。
    そして中指だけを上げ、見せつけるよう目元まで運ばれた三角形に拡がる指の形に即答で音を上げた。
    やっぱり無理だ、あんなのが人体に耐えられるわけがない。
    しかもこれは俺の尻の話だ、俺が無理と言えば無理なんだ。
    だから無理無理と首を左右に振り、水戸が諦めるのを待つことにした。
    自慢じゃないが俺はけっこうすぐ投げ出しがちな人間だ。
    水戸よ、こればかりは相手が悪かったと思って諦めてくれ。

    「ここから…このくらいだよ」
    「…、なにが」
    「俺のサイズ」

    急に際どい箇所に人差し指を立てられ、指の腹がゆるゆると這うように動いてヘソまで届く感触に背中がゾワゾワして落ち着かずに身を捩った。
    それがどういう意味か分かるなり頬が熱くなり、諦めの悪い水戸に恐怖も覚えた。
    これだけ俺が無理だと言っているのにまだ続ける気なのか。
    同じく諦めの悪い俺へのあてつけのつもりか。
    ただでさえ無理だと言っている人間に無慈悲な現実を突き付けてどういうつもりなんだ。
    これ以上はしつこいと叱って諦めさせるべきだろうかと迷うものの、そもそも無理なのは俺の都合なので迷うところではある。
    またあんな風に叱られるのは嫌だし、あんな恐い思いは二度とごめんだ。
    あれが恐くて大人しくしていると知った上での行いだとしたらコイツはとんだ策士だ。

    「しっかり慣らして奥まで突けばきっと気持ちいいよ」
    「……………いつかはな」
    「うん、だから今夜はお互いの肌に慣れる程度のスキンシップだけでも…駄目かな」

    水戸選手、ここでまさかのあざとく小首を傾げてのおねだりが決まりました
    不意打ちに絶句の三井選手、何も言えずつい癖で頷いてしまいました
    決まりです、今宵の勝者は水戸洋平
    あえなく三井寿を篭絡させ伝説の幕開けです
    というセルフ実況もそこそこに、俺が頷いたのを良かった、と笑ってようやく上から退いた水戸を寝転がったまま目で追った。
    こうなればヤケだ、これからどうなろうと水戸に責任を押し付けてしまおう。
    無事に終わればそれで良いのだし、失敗に終われば水戸も諦めるだろう。
    そう開き直るしかなく、策士水戸が部屋の隅から布団の上まで運んで来た段ボールが気になって起き上がり、それを間に挟んでお互いに胡坐をかいた。
    側面には誰もが知っている通販サイトのロゴがあり、準備した甲斐があったと喜ぶ水戸が開封した箱の中身を見るなり

    「はめられた」

    と、叫ぶ俺に

    「これからハメるんだよ」

    と、水戸は今日一番の笑顔で答えやがった。
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