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    栗まんじゅう

    漂う物を投げ捨てるだけ

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    栗まんじゅう

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    4月1日ネタ

    根詰めて仕事をしてると頭に響く。
    現に今もぼんやりとした脳に誰かに呼びかけられてるなんて気づきもしなかった。

    「会長!!…会長?」
    「…………」
    「かいちょー!!!」
    「わ、わぁあぁ!!」
    「らしくないっスよ、会長」
    「ツヅリくん…ぼーっとしてた、ごめんねぇ、どうしたの?」
    「生徒会に提案してくれた生徒のアンケートについてなんですけど…」

    彼は綴理、副会長だ。
    1年生にして圧倒的なスピーチをした、行動力もさることながらカリスマ性に溢れている彼には惹かれるところがある。
    何故生徒会長に立候補しなかったのか不思議なくらいだ。

    「ふ〜…ちょっと空気を入れ替えようか」
    「俺やります!」
    「あはは、大丈夫だよ。これくらい自分でやれるよ」
    「でも会長…もっと頼ってください…」
    「これでも沢山頼ってるんだけどなぁ…」

    窓を開けようと鍵を下ろす。
    その時強い光に包まれる。
    目も開けていられないくらいの強い光だ。
    ふわふわとした感覚が俺を襲う。
    半分まで開けた窓から強めの風が入り込み髪の毛が風になびく。

    「うわぁっ…ぅ、…………ん…?や、止んだ…?」
    「あらぁ…」
    「音取くん…?」
    「会長くん、ではないね。」
    「えっ、…ど、どこ…?」

    目を開けたら知らない人達に、知らない部屋に居た。
    正直怖い。

    「窓開けたら急に光って……いや、そんな事より怪我は?」
    「な、ないよ…けど、君たちは…?」
    「俺達は会長の部下だよ。」
    「部下……?役員って、事、かなぁ?」
    「面白い事を言うのね♪」
    「な、なんだか馬鹿にされているような…」

    この世界の俺はそんなに権力を振りかざしているのだろうか??
    急に怖くなってくる。

    「制服、俺達と全く違うけど会長くんに似ているんだ。名前は?」
    「俺は生徒会会長の、音取春紬寧だよ。」
    「会長くんと同じ名だね。」
    「こんな偶然あるのかしら?」
    「同姓同名、音取くんに似てて……」
    「あはは!山本くんがパンクして手が忙しそうだよ」

    どうやら俺よりも背が高い子がパンクしているらしい。

    「音取くん、教室に行こう。ここだと君が危ないかもしれないから…」
    「俺達のことなんだと思ってるのかな、」
    「いつでも会長の隙を狙っているのだから…」
    「あ、危ないって、どういう…??」

    明らかに全てがおかしかった。
    元いた生徒会メンバーよりも危ない雰囲気の人達、それより、俺よりでかい人に手を引っ張られるのは少し怖い……かも。
    そもそも着ている制服も違う。
    少し心細くなる。
    3年1組。

    「ここは…俺らの教室、かな?」
    「そうだよ。色々あって…今の君はすぐ負けそうで…」
    「んん…何に負けるか分からないけど頭脳戦なら負けたことないよ……?」
    「…………まぁ、今日は帰ろう。連絡しておくよ」

    何か言いたげだったが誰かに連絡をしていた。
    おそらく自分の席はここだろう、一応鞄を手に取る。
    やんわりとした記憶だけはあるらしい。
    だが、いつ戻れるか分からない不安から1人にはなりたくなかった。

    「ねぇ、あのね…その、君の家に泊まりたいんだけど…」
    「えっ、親が居てもいいなら…?」
    「多分、今日だけだし…大丈夫、1日だけ、お願いします」
    「親に伝えとくね」

    彼は確か…巨貴…くん、記憶がそう言っているような気がする。
    彼は他の人と違い信用してもいいと直感がいっている。
    戻れる確証もないのに、すぐにいつもの日常に戻れるような、そんな気がする。
    だから思い出と言ってはなんだが少しわがままを言ってみた。

    「俺、誰かの家に泊まったりするの初めてかもしれないなぁ」
    「音取くんの家は厳しいのかい?」
    「こっちの俺は分からない…」
    「ふーん。」
    「でも、たまに厳しい時あるけど俺がいい子である限りずっと優しい親で居てくれるからあまり友達に迷惑かけるようなわがままを言ったことはない、かなぁ?」
    「同じ顔で同じ名前なのに、性格が結構違うね」
    「え〜?!俺そんな意地悪な人なのぉ??」

    少しショックかも。
    元の俺が性格が悪いのか、俺が悪いのか…
    自分の物差しでは計れないが少なくともどちらかの性格は若干悪いみたいだ。
    しょんぼりしつつとぼとぼ歩いていると彼の家に付いたみたいだ。

    「ただいま、言ってた友達だよ」
    「お、お邪魔します!急に申し訳ないです…」
    「いいのよ〜、ほら上がって上がって」

    いいご家族だ。
    夕飯になるまでの間、巨貴くんに英語を教え、こちらのことを少し教えて貰ったり…と、色々過ごしているうちにあっという間に寝る時間になってしまっていた。
    少し自分の家が異常なくらいにおもえる。
    家族との距離感があまりにも近い。
    薄々感じていた違和感を払拭するように元の俺のスマホを開いてみる。
    先程まで分からなかったパスワードは、身体が徐々に彼との記憶に馴染んできたのか簡単に開くことが出来た。

    「……え、うわぁ…そういうことかぁ…」

    そもそもホーム画面がイカれていた。
    仮にも周りから見れば俺とそっくりらしいから、ほぼ同一人物と言っても過言では無いであろう自分に対してそう思ってしまった。
    みんなが言っていた話や、巨貴くんから聞いた話をまとめると、この世界の俺は生徒指導と称して生徒を躾ている、らしい…
    それの成果として写真を残しているらしいが…この数、パッと見るだけでも1年生の時から溜めている。
    つい最近のだと見知った顔の写真が並んでいる。

    「あれ、この顔…」
    「まだ起きてたんだ。寝るって言うから電気消してから風呂行ったけど」
    「なんだか落ち着かなくてね、見るの気が引けたけどどんな人なのか知りたくてスマホ見てたんだ」
    「で、どうだった?」
    「……あ、あのね?別に俺が言っても何も変わらないとは思うんだけど、君にも、他の生徒にも申し訳ないというか…」
    「写真ね、もはや音取くんの趣味まであるから誰も止めないし、言えないんだよね」

    どうやら俺は性格悪いほうじゃないみたいだ。
    でも普段あんなに俺で遊んで楽しそうにしてる2人の顔と全く違うというか、こんな顔するんだぁ…って気持ちで奉くんと耀くんの写真を見てしまう。

    「あぁ、その子たちは音取くんのお気に入りだね。特にその白髪っぽい子がいいみたいで…」
    「この子、知ってる。俺の元いた世界にもいる子なんだ」
    「へぇ、不思議なこともあるんだね」
    「こっちの世界では俺がされてるような事をされてるんだね…」
    「……??じゃあ君は、普段抱かれて」
    「や!!ち、ちが!!わないこともないけど…そういう関係じゃなくてぇ!!!抱かれたくて抱かれてるわけじゃ…!」
    「うぉ…急に大きい声ビックリした」

    無意識に発してしまった言葉の意味を理解された瞬間に恥ずかしくなる。
    思わず声を上げて弁明してしまったが肯定してますと言われてもおかしくない行動だったかもしれない。
    なんて恥ずかしいんだ…

    「今のでちょっと熱くなっちゃった…窓開けても?」
    「俺も風呂上がりだし、いいよ」

    俺の家とは違うタイプの窓に開けるのを苦戦したが鍵を下ろしてガラガラ、と音をさせながら開ける。
    心地いい風が俺の髪を攫う。
    前髪を抑えながら少し窓を閉じようとした瞬間、夜に似つかわしくない強い光に目を閉じる。
    これさっきも体験したような…?!
    2度目の感覚も同じく、意識も身体も上手く言い表せないふわふわとした不思議な感覚に見舞われる。

    「な、なんなのぉ…」
    「あ、春紬寧!!」
    「かいちょー!!」
    「え、わ、わ〜!なになに、なんなの〜!!」

    どうやら涼晴と綴理が俺の面倒を見ていてくれたみたいだった。
    なんだか少し2人の顔が疲れてるように見えるけど何かあったのだろうか

    「2人して短時間の間にやつれるようなことあったのかな?」
    「生徒会室入ったら急に壁ドンされて「君、5分遅刻だねぇ。お仕置が必要かな?」とか言ってきてマジ怖かったんだけど!!!」
    「そもそもハル兄が遅刻したからでしょ…」
    「いやいや、ツヅ。俺のクラスがホームルーム伸びたんだからしょうがないだろ!」
    「入れ替わってる間に色々あったんだね…なんか、ごめんねぇ…」

    本当に色々あったみたいだ。
    急いでスマホを確認するが一応は悪用されてないみたいだ。
    けどなんかメッセージに開きたくない人から連絡来てるけど…怒ってるようにも見れるし、ちょっと、いまは忘れさせてもらおうかな…
    とは言え、戻ってこれた事にほっとする。
    あちらの世界での俺はちょっと傲慢で彼等2人がかりでやっと対応できるくらい好き放題やる性格らしい。
    そう考えたら生徒会の人達の貫禄ある雰囲気も納得してしまうなぁ…

    「はつね先輩〜…すごい頑張ったオレを褒めてもいいと思うんですよ〜」
    「ツヅリくんは甘えたさんだねぇ?俺で良ければ沢山褒めちゃうよ〜」
    「甘やかすな甘やかすな、ったく、調子乗るんだから…」
    「2人ともおいで、今日は疲れたでしょ。ギュッてしてあげるから」

    先に飛び込んできたのはツヅリくんだ。
    強めにギュッとして頭を撫でる。
    俺では無いとはいえ8割は俺でもあるから迷惑かけてしまったし。
    満足そうに離れると今度はスバルくんが頭をかきながら腕をひろげてくれた。

    「君も素直じゃないねぇ」
    「るっせぇ!」
    「よーしよし、いい子いい子…今日はありがとね」
    「ん。俺にはこれくらいしか出来ないから…でもやっぱ今ここにいる春紬寧が俺の憧れだよ。」
    「や、やめてよ…照れちゃうから」

    スバルくんも自分が照れてるのを隠すためにもう寝るからなといい電気を消した。
    ツヅリくんが布団の中に入ってきて今日あったことを語ってくれていた。
    各々色々ありすぎて疲れが溜まっていたのだろう。
    皆仲良く眠りについた。
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