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    義兄弟アキヘクみたい

    義理兄弟アキヘクみたくなるわ。
    大きくなってから親の再婚で兄弟になった2人、柔和な兄に惚れる弟、そんなつもりは微塵もない兄……。
    ちょいちょいそれらしいことはしてるのに全く警戒心も自覚も持ってくれない兄ヘクトールに痺れを切らした弟アキレウス、ならばいっそ気づかないうちに外堀を埋めることに。スキンシップを増やし、「家賃が安くなるだろ」とか言いながら同居を提案、ワンチャンお兄ちゃんの仕事にまで手を回してなんかすごい収入が低い仕事につかせるとか。そうして自分から離れられなくし、自分に頼らなければ生きていけなくした。心は手に入らなくても、ヘクトールが自分から離れられないという事実で自分は満足すると思ってたけど、やっぱり心も欲しくなった。でも兄が自分をそういうふうに思っているようには思えない。下手を打ってここから兄がいなくなるのは嫌だったアキレウスは、自分の恋心をひた隠しにした。
    しかし、アキレウスは言ってしまう。それは休日の朝、朝食も終わり二人で手コーヒーをすすっていた、何気ない時間。カップを唇へと傾けるヘクトールの横顔に見惚れていたとき、見られていることに気づいたヘクトールがアキレウスを見、にこりと首を傾げた時だった。「なに?」と添えられた言葉も朝の舌っ足らずさがあって、思わずアキレウスは「好きだ」と呟いてしまった。
    その瞬間、見えたのは絶望だった。表情をなくしたヘクトールはカップを置き、そのまま立ち上がると玄関へと消えた。閉まる扉のがちゃり、という音が、この幸せな生活の終わりに聞こえた。
    それでもヘクトールにはこの家しかない、はずだ。アキレウスはヘクトールを待ち続けた。家を出るときに聞こえる「いってらっしゃい」も帰ってきたときの「ただいま」も聞こえない、薄ら寒い部屋。そこで残ったヘクトールの思い出をみながらアキレウスは待ち続けた。
    ヘクトールが出ていった朝からきっちり1週間。再びがちゃりと音がして扉が開く。
    「……なんて顔、してんの」
    苦しそうに目元を歪めるヘクトールがいた。
    「おかえり」
    にこりと微笑んだつもりだったがうまく笑顔にはなっていなかったらしい、ヘクトールの眉間にしわがよる。
    「ご飯、食べよう。その様子じゃろくに食べてないでしょ」
    「食った」
    「食ってない。おじやでいい?冷凍ご飯まだあるかな」
    ぱたぱたと台所から響く音は、ひたすら安心感しかなくて。耳に届くその音に、アキレウスに目尻からはすぅと一筋の涙が流れた。

    隣り合い、身近に体温を感じながら食べるご飯はそれはそれは格別で。用意された醤油味のおじやを、アキレウスは瞬く間に食べ終わった。
    「ごちそうさま」
    「ん。案外食べれたね」
    「……久しぶりの、アンタのメシだからな」
    「……そういうの、いいから」
    食器を片付けるため立ち上がったヘクトールの腕をアキレウスは掴む。
    「……気持ち悪かったならもう言わない。そういう目でもお前をみない。だから、出ていくのだけはやめてくれ。ここに、俺が見える範囲にお前がいないと、俺はおかしくなっちまう」
    思うことまではやめられない。言った言葉が、いまアキレウスができる最大限の譲歩だった。
    持ち上げた腰をおろし、ヘクトールはアキレウスに向くよう座り直す。
    「……出ていってから、いろいろ考えたよ。君が俺のことそういう目で見てるってのは認めづらかった。思えばいっしょに住もう、も、普段のふれあいも、全部そういう意味だったのかな、って」
    ぐ、とアキレウスは息を詰める。もちろんそうだ。何も知らないヘクトールを自分のものにするために勝手にやったことだ。怒っていても仕方がない。
    「でもさ、俺、君との生活楽しかったんだな、って、離れてみて思った。朝起きて寝ぼけた君の顔見るのも、休日二人で朝市に出かけるのも、好きだったんだよ」
    純粋なヘクトールの楽しさを、結果的に踏みにじっている。その思いが心を締め付ける。それでもアキレウスにはその選択肢しかなかったのだ。たとえ卑怯だとしても、心情を吐露して二度と顔を合わせられないより、心情を隠して想いを寄せる相手とともに暮らす方が、アキレウスにとって重大だった。
    「だから」
    独白を続けるヘクトールの顔を見上げる。そこには、失望した呆れではなく、柔和な微笑みが飾られていた。
    「もう少し、君と一緒にいようと思って」
    「……いいのか?気持ち悪くないのか?」
    「うーん……驚きはしたけど、実際気持ち悪いかって言われると、曖昧なんだよね。オジサンもよくわかってないからさ」
    ヘクトールの腕を掴んでいた手に温もりを感じる。重なっていたのは、掴まれていないヘクトールの手、だった。
    「君が、それがどんな想いなのか、教えてくれる?」
    にまり、と笑う顔は酷く挑戦的で。自分の動き次第では、二度と振り向いてくれないこと、そして自分の想いを受け止めてくれることのどちらもあり得ることを示唆していた。
    「……ハッ、いいぜ?覚悟してろよ、お兄ちゃん」
    「望むところだよ、弟くん」

    いってらっしゃいの挨拶に口づけが加わる日も近い。アキレウスはそう確信していた。
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