貴方はレニーのakhkで『自惚れないで』をお題にして140文字SSを書いてください自身がつけた傷のすべてに口づけを終え、アキレウスは屈ませた上半身を起こした。
「これで全部だ。俺がアンタにつけた傷は、一つ残らず覚えている」
にんまりとした笑み一つ、得意げに高くなった鼻をさらにあげるアキレウスに、ヘクトールは薄ら笑いを浮かべる。
「全部だって?自惚れなさんな」
「……まだ、残っているとでも?」
先ほどの上機嫌が一転、今は沸き立った不機嫌が眉間に深い溝を作り出している。
「そうとも。君が確かにつけた、ふかいふかぁい傷がね」
「首、じゃねぇよな。どこだよ一体」
起こした上半身を再び屈ませ、アキレウスはヘクトールの全身を矯めつ眇めつ眺め回す。
その視線を受けながら、ヘクトールは相変わらず薄く笑い続ける。
――あるんだよ。ここに確かに、深過ぎて治らないほどの傷がね。
アキレウスの視線が足元へと向いたのを見、ヘクトールは自身の右手を胸の上に置いた。