ブラアキ習作あ、キスしてーな。
なんとなく自然に、アキラはそう思った。共用スペースのダイニングのテーブルで、ノートパソコンの画面に目を落として何やら作業をしているブラッド。その伏せた目をふちどるまつ毛を眺めていた時だった。
すっかり見慣れた光景に、特に思うところもないはずだったが、なんとなく落ち着かずにいた理由を自分なりに分析した結果だった。
俯いたブラッドを無理やりこっちに向かせて衝動のままに口付ければいい。しかし、アキラはグッとこらえた。
ブラッドとキスするのは別に初めてではない。ブラッドは、いつも場所を選びムードを作って、そういう空気だぞ、とアキラに言外に説明させるかのように徹底してから、する。非常にスマートだ。だから、こんな唐突に仕掛けて果たして受けいれられるだろうか?という気持ちがあった。ましてや、相手はなんらかの作業中だ。仕事なのかそうでないのかはアキラには区別がつかなかったが(仕事でもないのにパソコンをいじる必要があるのか?と疑問に思いはしたが、機械を触れば壊すアキラには見当もつかなかった)相手の邪魔をすれば不興を買うであろうことはアキラにも察せられた。
2839