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    horizon1222

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    horizon1222

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    キスディノワンライ
    お題「猫/我慢」
    猫を手懐けようと頑張るディノと時々猫みたいに甘えてくるキースの話

     会計を済ませてお店を出た時、視界の隅をサッと横切ったそれを見たディノの身体には、思わず少し力が入った。けれどそれをおくびにも出さずに、そのままキースと一緒に歩き出す。
     「あれ……ん?忘れモンしたみてぇだから、取ってくるわ。悪ぃ」
     そう言ってさっきまで食事していたダイニングへと踵を返すキースにわかった、と返事して壁にもたれかかる。まだあの子は近くにいる。願ってもないチャンスだ。意識しないように、不自然な動きにならないように……
     ナァン。
     用もないのにポケットから取り出したスマホを弄っていると、微かな鳴き声が聞こえた。まだだ。視線を直接向けないように、視界の端で捉える。近づいてきてる。
     大きな音を立てないように、動きは最小限で居住まいを正す。しばらくそうしていると、足元に温かい感触。
     (うわぁ~~~……!)
     叫び出したいのを必死に堪えて、頭だけそっと自分の足元へ向ける。ふわふわの灰色がかった色の塊が俺の脛の辺りへ体を擦り付けていた。
     今すぐしゃがんで、わしゃわしゃと毛並みを撫でまわしたい。抱っこして、その温かさを直に感じたい。その衝動を必死に抑えて、様子を伺う。まだダメだ。何度も欲望のままに行動して、失敗したじゃないか!
     驚かせないようにゆっくりと、少しだけ距離をとる。すぐ近くに置いてあった、飲食店の酒瓶を入れるプラ製のケースに軽く腰かければ、ディノの足元に擦り寄っていたその猫は大人しくついてきた。ディノが動きを止めると、また足元に擦り寄りだす。しっぽがピンと立って、機嫌も良さそうだ。今ならいけるかも。そう確信を持って、ディノはその猫へ手を伸ばした。
     「よしよし……」
     ゆっくり、ゆっくり手を伸ばす。犬とは違うと聞いてはいたけど、とりあえず手の匂いを嗅がせてやる。拒否されない。よし、そのまま喉の下へ。手のひら全体で触るんじゃなくて、指先でくすぐるように毛並みを撫でた。
     ゴロゴロ……と猫が機嫌良さそうにしている時の音が聞こえて、思わず顔の表情が緩む。
     「ふふっ、いい子いい子……」
     この猫との遭遇はもちろん初めてではない。初めて見かけたのはいつだったか、パトロールの休憩中にこの辺りで食事をとった時だった。キースは煙草を、ジュニアは飲み物を買ってくると言うので、フェイスと二人でお店の前で待っていた時に、フェイスの足元に擦り寄ってきたのがこの猫だった。
     わぁ!可愛い!
     その時、思わず大声をあげて触ろうとして、さっさと逃げられてしまってからというもの、機会を見つけては逃げられが続き、ディノはずっとこの機会を待っていたのだった。
     野良なのかと思ったが、毛並みは悪くないしどこかの家で飼われてるのかもしれない。妙に人懐こいけど首輪はしてなくて、この辺りでよく見かけるので縄張りにしているのだろうか。
     灰みがかかった毛は、見た目以上にボリュームがある。長毛種、というやつだろう。ディノは猫の種類には詳しくなかったが、もふりと膨らんだしっぽと、けだるげな態度が魅力的で、いつか絶対にお近付きになりたいと思っていたのだ。
     苦節数ヶ月、ついに自分の手つきに機嫌よさそうにしている猫に思わずニコニコしていたその時。
     「おぉ~い、ディノ、待たせたな」
     何してんだ?
     ディノの後ろからぬっと姿を現したキースの声はそれほど大きくなかったが、猫は途端にぴゃっと身を固くして、すぐに逃げて行ってしまった。
     「あ、あぁ~!」
     「あ、すまん……」
     キースはディノの落胆ぶりに気づいて申し訳無さそうにしたが、今更どうしようもなかった。
     ディノは彼女(彼?)が消えていった裏路地を未練がましく見守るしかなかった。次の機会があれば、その時はもっと……!
     「お前、猫なんか好きだったの」
     タワーへ戻る最中、キースが尋ねてくる。
     「うーん、猫が……っていうより、動物全般好きだけど。いや、好きとかじゃなくて、嫌いな動物ってのがそもそもあんまりいないかも」
     ああ、お前山育ちだもんなぁ、と少しからかうような口調で言うキースに、もう!と咎めるように返事する。
     「キースは?動物好きでも嫌いでもないよな」
     そうだな、興味ないねぇ、と返して隣を歩くキースに、ディノは内心でキースの方が時々動物みたいだもんな、とこっそり考えていた。



    ――そう、キースはたまに猫みたいだ。


     「空いたぞ~」
     夜。共用スペースのリビングで寛いでいると、先にシャワーを浴びたキースの声が響いた。ありがと、わかった。そう返して、尚も手元のスマホを弄り続けていると、ふわりと隣に石鹸の香りが漂う。
     「まぁた通販かよ。ほどほどにしとけよ」
     シャワーを浴びてしっとりと濡れたキースがすぐ隣へ座って、俺の端末を覗いている。距離の近さに胸が弾むが、それを悟られないように、我慢。
     「平気だって、次のLOMの衣装の参考にしようと思って見てただけだからさ。まだ何にも買ってないよ」
     「まだ、ねぇ」
     俺の言葉を意味深に復唱するキースは、なかなか距離をとろうとしなかった。そのまましばらく居座ることにしたらしい。スマホを弄ったままでいる俺にかまわず、体をぴったりくっつけてくる。こてん、と頭が肩にもたれかかってきて、少し首元がくすぐったい。シャワーの前に少し飲んでたからか、顔が赤いのがわかる。
     「ディノぉ……」
     微動だにしないディノに焦れたのか、甘えたような声で名前を呼ばれる。手が太ももの上に乗って、触るか触らないかの微妙な手つきで動かされた。
     どうしよう、鼓動がどんどん激しくなってきた。こんなに近くて、聞こえたらどうしよう。
     キースはたまに、こうやって甘えるようにディノのそばに寄ってくる時がある。本人も無自覚なのかもしれないけど、ディノはそんなキースはすごく可愛いと思う。普段はだらけてて、ヒーローとして戦う時はかっこよくて、でも今のこれは恋人のディノにしか見せない少し甘えたな顔のキース。たまらない。
     ほんとは、今すぐキースに抱きつきたい。可愛い、って言って顔中にキスしたい。シャワー浴びたてのふわふわの髪の毛を撫で回して、そのまま甘やかして、キースのしたいことなんでもしてあげるよ、って言ってやりたい。でもダメなんだ。
     「何?どうしたの?」
     「…………」
     ぐっと気持ちを堪えて、我慢。顔を見ずに声だけかければ、むにゃむにゃと言葉に出来ない声を漏らしていた。
     キースとそういう関係になったのはディノが戻ってきてからだ。最初、こんな風に甘えるようにキースが擦り寄ってきた時は驚いたけど嬉しくてしょうがなくて。思わず、欲望のままにキースを構い倒そうとしてしまった。そしたら。
     ――悪い、なんかオレ、おかしかったな
     興が冷めた……というわけではなさそうだったけど、正気に戻ったようなキースに引き剥がされて、そのまましばらくご無沙汰だった。
     ――恥ずかしいんじゃないの、キースって、照れ屋っていうか、そういうとこ妙に素直じゃないから
     何かの拍子にそういうキースの話になって、フェイスに言われてなるほど……とようやく納得した。もちろん二人の関係は伏せてだけど。
     そこから何度か同じようなことがあって学習して、ようやくディノは覚えたのだ。この稀少で扱いの難しい甘えたなキースの扱い方を。
     「デ~ィノぉ」
     少し情けない声で再び名前を呼ばれる。頭をグリグリと首筋に押し付けられる。構え、って言ってる猫みたいだ、と昼間のことを思い出した。その癖大袈裟に構うと逃げてく。でもそろそろいいのかな?
     「キース、どうしたんだ?」
     やっとスマホから目を離して、向き合う。よしよしと頭を撫でてやると、キースはやっと俯いていた顔をあげた。
     キースの意向には気づかないフリして首をかしげると、頬に手が添えられて、唇が迫ってきた。されるがままに口付けられていると、舌が入ってきた。最初は応えるだけに留めて、だんだんディノからも舌を絡める。もういいかな。
     「……ベッド、行こ」
     今すぐ抱きついて撫で回したいという欲望を必死に抑えてしょうがないなぁ、という顔を作って誘えば、おう、と短い返事だけが返ってきた。全く素直じゃない。
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    Replies from the creator

    horizon1222

    DONEモブ女は見た!!新婚さんなあのヒーロー達!!
    という感じの(どんな感じ?)薄~いカプ未満の話です。一応キスディノ
    ディノにお迎えにきてほしくなって書いたよろよろとモノレールに乗り込み、座席に座ったところで私はようやく一息をついた。
    月末。金曜日。トドメに怒涛の繁忙期。しかしなんとか積み上がった仕事にケリをつけられた。明日の休みはもう何がなんでも絶対に昼まで寝るぞ、そんな意識で最後の力を振り絞りなんとか帰路についている。
    (あ~色々溜まってる……)
    スマホのディスプレイに表示されているメッセージアプリの通知を機械的に開いてチェックし、しかし私の指はメッセージの返信ボタンではなくSNSのアイコンをタップしていた。エリオス∞チャンネル、HELIOSに所属のヒーロー達が発信している投稿を追う。
    (しばらく見てなかったうちに、投稿増えてるな~)
    推しという程明確に誰かを応援しているわけでないし、それほど熱心に追っているわけではない。それでも強いて言うなら、ウエストセクター担当の研修チーム箱推し。イエローウエストは学生の頃しょっちゅう遊びに行っていた街だからという、浅い身内贔屓だ。ウエストセクターのメンター二人は私と同い年で、ヒーローとしてデビューした頃から見知っていたからなんとなく親近感があった。
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