現パロ無鉄(彫刻家×貧乏美大生)その9 無頼漢との生活は不自由なく続いていた。彼は俺の胸像をずっと彫り続けているし、俺の学業も問題ない。イゾルデから先日の礼だと届いた小包に入っていた菓子を消費しながら、穏やかな日々を過ごしている。
胸像はほとんど完成しているように見えた。それでも無頼漢はまだあれを終わりにしていない。気分転換だと他のポーズでのモデルを頼まれることもあり、それらは既に命が吹き込まれたというのに。
「……む」
カシュ、カシュ。ボディソープのボトルを押しても寂しい音しか出てこない。どうも切れてしまっているようだ。作業中だったら申し訳ないと思いつつ無頼漢に声を掛ければ、痛快な返事があったので大丈夫そうだ。
「悪ィ、昨日俺がカラにしたの忘れてたわ」
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