愛をこめて貴方と。千司Webオンリー
愛をこめて貴方と。
獅子王司と恋人になった。
俺は格闘技とかはあまり見ねーからあいつの戦っているところを見たのは、あのライオンから逃げるためにいきなり復活させた時が初めてだった。
でかい、強い、速い。この三拍子が揃えば俺の中の少年心は疼いてわくわくしちまう。
が、あの時は何故かそういうワクワクよりも何故か恐怖心が先に湧いてそれを殺しちまった。
本当にあの時は司に悪いことをしてしまったと思う。
急に叩き起されてライオンと素っ裸で戦うことを強要され、挙句警戒心を向けられて距離を置かれる。
我ながら最低だと思った。
それに気がついたのは司に殺されて石神村に逃げて生活が安定してきてからだった。
そこからは、元々そうするつもりではあったが必ず犠牲は出さないと誓って計画を進めていった。
結局司は1度死んでしまったがその後何とか生き返らせることが出来た。
「現況は?」
半年ぶりに聞いた司の声は全く同じセリフのはずだが、あの時とは違って心が異常な程に高ぶった。
あれからまた春が来た。
ここ何年かいや何千年かは春を味わうような余裕なんてなかった。いや今も余裕かましてるような暇じゃねーんだが。
だが司が仲間に加わったからか去年や一昨年よりかはちーと余裕が出来た気がする。
「ねぇ千空ちゃん。」
いつもの実験中メンタリストが珍しく声をかけてきた。
別に声をかけること自体は珍しくは無いがここまで相談という雰囲気を出されるのは珍しい方だ。
「最近司ちゃんの様子なんかおかしくない?」
メンタリスト曰く最近司が心ここに在らずというかあまり集中出来ていないような気がするらしい。
もちろんあいつは仕事中に手を抜くようなやつではないし、ちゃんと任された仕事は期待以上にこなしてくれている。
そういうことではなく、仕事中以外があまりにも気がそれすぎているということらしい。
あいつは今まで仕事一筋、妹一筋で生きてきたんだから、何か唆るものが出来たならそれでいいじゃねぇかと答えてその場は終わった。
が、どこかで俺も気になったのだろう。
夕食の時、すれ違いざま、司を気にするようになった。
それで気がついてしまった。
あれ?こいつ俺の事ずっと見てねぇか?
しかもたまに獣みてぇなすげぇ顔で。
気がついちまった。
別にそれを不快だと思わねぇと。
そこからは早かった。
メンタリストに相談して。司を呼び出して。
不安そうな顔して俺の呼び出しに応えたアイツは
「……そうだね。君の思っている通りどちらも当てはまるよ。
俺は君が……好きだと思う。けど君を縛り付けようとか閉じ込めて独り占めしようとかはもう思ってないんだ。
視線が気になるようなら、距離を置こう。
不快にしてしまってすまなかった。」
と言って引こうとした。
立ち去ろうとした司の背中を見た時、変な汗が流れた。
「簡単に言えば俺もお前のこと見てたから視線もどういう顔してたのかもわかったってことだ。
なぁ、司。返事聞く前に決めつけて逃げてんじゃねーぞ。
俺も好きだ。
さっきお前の気持ちを聞いて確信した。」
声が震える。汗が伝う。
なんでもないフリをして司の手を取った。
戦うために鍛え上げた強い手。
「もっかい言うぞ。俺はお前が好きだ。」
「……俺は君のためにもう一度戦ってもいいかな。」
不安の混じった泣きそうな顔をした司を見つめ直して震える声を抑え殺して一つ一つ言葉を繋げる。
「当たり前だろ。俺の騎士様になりやがれ。」
こうしておれは最強の騎士様いや恋人を手に入れた。