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    絵置き場

    @TomaadoHK

    TLにそのまま流しづらい絵(極端にグロかったりCPっぽかったりネタバレだったり)を置くところ

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    絵置き場

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    20年前にサイトにのっけてたラッキーマンのSSです。友情兄さんの地位向上したくて書いたんじゃないかな…

    蒼い空「あれ?厚井は今日休みなのか?」

    善良教師マンがそう言って初めて、努力マンこと杉田努力は気付いた。
    友情マンこと厚井友情の席が、空いていることに。




    昼休み。教室にたむろする生徒、校庭で遊ぶ生徒の甲高い声と歓声で、
    学校生活の中で最も騒がしい時間帯。
    勝利マンこと磯野勝利は、校庭で遊ぶ生徒達を屋上からぼーっと見ていた。

    「けっ、相変わらず下手だなー」

    生徒達の稚拙な試合展開に、勝利は舌打ちをする。
    そして、制服の胸ポケットから煙草の箱を取り出した。
    煙草を一本取り出し、ズボンのポケットから出したライターで火をつけようとする・・・が。

    「兄さん!勝利兄さん!!」
    「どわっ!!!」

    鉄下駄をガチャガチャ言わせながらやってきた努力に驚き、慌てて隠そうとした。
    また学校で煙草を吸うことについて説教されるからだ。

    「・・・兄さん、また煙草吸ってたんじゃ・・・」
    「すっ吸ってなんかねえよ!!・・・あービックリした・・・」

    300年以上も生きている勝利マンだが、地球で生活する時はこうして中学生の地球人の少年として生活している。
    実年齢から行けば煙草を吸ってもいい年だが、中学生の格好をしている以上、「自分は300歳です」なんて言っても信用してもらえない。
    むしろ300歳、という途方もない年齢を言ってみた所で信じてもらえない。

    「で、何の用だよ。お前さっき教室でラッキーマン・・・じゃなくて洋一の課題の手伝いやってたんじゃなかったのか?」
    「師匠には悪いんですが適当に誤魔化して抜け出してきました。・・・何がおかしいんですか?」

    きっと今頃「ついてねぇー!!」と叫んでる洋一の姿が容易に想像できたのか、
    勝利はくくくと笑いを漏らした。

    「いや、お前もそういう事するんだなって思ってよ・・・くく、笑えるぜ」
    「ちょっと気になることがあるもんですから」
    「気になる?」
    「その・・・友情兄さんの事で」

    努力が友情のことを話題に持ち込んだ途端、偶然なのか、あたりが一瞬静まり返った。
    下の校庭で遊ぶ生徒の声も、小鳥の囀りも、風の音も全て、しなくなった。

    「・・・悪ぃ。俺も知らねぇ」
    「そうですか・・・兄さんなら知っていると思ってたんですけど・・・」
    「一応優等生で通ってる友情が、あの教師マンに連絡も無しに欠席か・・・何があったんだろうな」
    「私達にも連絡なしですからね・・・」

    考え込む2人の耳に、休み時間終了のチャイムが聞こえてきた。

    「あ、兄さん早く戻りましょう!次は移動教室ですよ」
    「やべえ。道具一式教室に置き去りだ」
    「師匠大丈夫かなー・・・」
    「まあ例えお前が手伝ったところでアイツの運命は変わらないさ。
    何ていったって『日本一ついてない中学生』だから」
    「それもそうですね」

    バタバタと、急ぎ足で教室に向かう努力と勝利。
    勝利の想像どおり、洋一は課題を終える事ができず、先生に大目玉を喰らわされていた。




    『友情マンなら戻ってないガル』
    「ええ?!」

    放課後。努力は天才の家に上がらせてもらい、電話を借りていた。
    時間はもう7時。何ぼなんでも帰っているだろう・・・と思い、
    友情に電話をかけたのだが、出たのは一匹狼マンだった。

    「なあ、友情兄さんが何処に行ったか知らないか?」
    『知らないガル。出かけてくるとは言ってたけど、どこに行くかは言わなかった』
    「そうか・・・うん、ありがとう」

    ガチャンと受話器を置き、努力は深く溜め息をついた。

    「どうだ?友情マンについて、何か分かったか?」

    料理を作っているらしく、エプロンを着込んだ姿の天才が出てくる。
    彼もまた、地球では地球人の少年として生活をしているのだ。
    ちなみに名前は生月天才。

    「いいや。電話かけたら一匹狼マンが出たけど、あいつも兄さんが何処に行ったかまでは分からないって」
    「ふむ・・・しかし妙だな」
    「何が?」
    「一匹狼マンは、常に友情マンと行動を共にしているだろ?
    その彼が、どうして今家にいるんだ?」
    「そういえば」

    一匹狼マンは、前にH-1グランプリで心を鬼にした友情マンの行為に心動かされ、
    以後行動を共にするようになった。
    努力や勝利、ヒーロー協会所属のヒーロー等も、
    友情マンと一匹狼マンが離れ離れになっているのを見たことがないくらい、2人はいつも一緒にいた。
    そんな友情が、一匹狼マンを置いてどこかへ行った。行き先も伝えずに。

    これは妙だ、と努力と天才は目で言った。

    「友情兄さんの携帯に電話しても繋がらないしな・・・
    天才マン、電話どうもありがとうございました。失礼します」
    「あ、待て」

    畏まった挨拶をし、玄関へ走る努力を天才は引きとめた。

    「何だったら私の所で夕飯食べていかないか?
    少々多く作りすぎてしまってな・・・」

    その日努力は天才の家で夕食を取った。
    兄弟3人で食事をしていた数百年前の事を思い出しながら。




    翌日。この日は土曜日。
    学校が休みの日であった。

    だがそんな時でも
    地球を狙う宇宙人は容赦なく襲い掛かってくる。

    朝から雨が降り続く、そんな日だった。




    「ビクトリービームッ!!!」

    顔の前で腕を交差させ、勝利マンが光線をその特徴的な眉毛から放つ。

    「喰らうがいい。カッ!!光線!!!」

    まさに「あ、うん」の呼吸で放たれる強烈な熱光線。
    それは天才マンの頭部にある、三日月型の飾りから放たれた。
    2つの光線は混じり合い、巨大な宇宙人の体に命中した。

    「・・・ピンピンしてやがるぜこの野郎・・・」

    チッ、と勝利マンは舌打ちをする。
    両者の攻撃は決して弱いものではないのだが、
    攻撃は空しくも、巨大宇宙人の体に焦げ目をつけるに終わってしまった。

    「これならどうだ!鉄下駄踵落としッ!!」

    地を蹴って、努力マンは跳躍した。
    宇宙人の頭上で、一瞬バレリーナのように足を高く上げ、一気に降下する。
    ずん、と鈍い音がした。いかにも効果覿面のように聞こえる音である。

    「やったか!?」

    天才マンが歓喜の声を上げる。
    だが・・・

    「ぐはっ!!」

    努力マンの攻撃に逆上した宇宙人が、その太い腕で努力マンを横殴りにしたのだ。
    彼の攻撃はかえって逆効果だったようだ。
    吹っ飛ばされた努力マンは近隣の電柱に大きく叩き付けられ、がくりと崩れ落ちてしまった。

    「クッ・・・あまりにこちらの戦力は不利だ・・・」

    こちら側の人数は5人。
    だが、朝からの雨で幸運の星が見えず、大凶状態になってしまったラッキーマン、
    目立とうとして電信柱に登って、そのまま落下し初っ端撃沈してしまったスーパースターマン、
    そして先ほどの攻撃によってダウンしてしまった努力マンを差し引くと、
    マトモに戦える者はたったの2人である。

    「・・・雨がやむか、友情マンが戻ってくるかしなければ、
    私達に勝利はないぞ。勝利マン」

    天才マンの言葉は残酷であったが、事実であった。
    このままここで負けてしまえば、地球がどうなるか分からない。
    それに、「負け=死」の方程式が成り立つ勝利マンにとって、
    ここで負けることは最大の屈辱なのであった。

    「ケ・・・相変わらず全て分かった風な口振りしやがってよ」
    「私は真実を述べたまでだ」
    「だったら覆してやらぁ。お前の言う真実ってヤツをな!!」

    背中の凶器入れから日本刀と蛮刀を取り出し、勝利マンは宇宙人と対峙する。
    憎々しげな表情を浮かべながら、宇宙人は目の前で爛々と目を光らせる別の宇宙人を睨みつけていた。
    勝利マンより早く、宇宙人が動き出したその時。

    「太陽光線ッ!!」

    上空から聞き覚えのある声と、熱光線が同時に降ってきた。
    光線の威力は、やはり焼け石に水状態であったが、
    宇宙人の注意を引くには十分だった。

    そしてその声の主が、勝利マンと宇宙人の間に降り立つ。

    「・・・友情・・・」
    「遅くなってスミマセン。今から私も戦います」

    凛、とした声で、友情マンは兄の言葉に答えた。




    「努力、努力しっかりしろ!」
    「努力ちゃん!キミがいないとボク人間形態の時不良に絡まれてボコボコにされちゃうよ!」

    あの後、勝利マンと天才マン、友情マンそして彼の友人である
    数多くのヒーローヒロインの猛攻撃の前に、巨大な宇宙人は敗れた。
    いつしか雨も止み、ラッキーマンもいつもの大吉状態に戻っている。
    宇宙人の攻撃により、傷付いた努力マンも、駆けつけた医者の迅速な治療によって何とか大事に至らずに済んだ。
    もちろんこの医者も、友情マンの友人である。

    「う・・・あ、師匠・・・」
    「努力ちゃん!!」
    「ええっ!?うわ師匠苦しいです!」

    意識を取り戻した努力マンに、ラッキーマンは抱きついた。
    状況がつかめずオロオロ困惑する弟を見て、友情マンはクスクス笑っていた。

    「いいタイミングで戻ってきたな。友情マン」
    「全くだぜ俺より目立ちやがって・・・」
    「最初っから何も出来ずにダウンしてたもんなお前」

    天才マン、スーパースターマン、勝利マンの順に、語りかけてくる。

    「何とか間に合ってよかった・・・野暮用で少し家を空けてたら
    案の定、宇宙人が出てきてた。みんな苦戦していたみたいだし」
    「まあ、お前が戻ってこなかったとしても、俺はアイツに勝てたがな」
    「その自信はどこから来るんだ勝利マン」
    「あぁ!?何か言ったかてめぇ」

    ようやっと事態が飲み込めた努力マンは、
    自分から離れた場所で兄達が天才マンと喋っているのを傍観していた。
    その中に、友情マンがいる事も確認できた。
    彼は天才マンと兄に、何かごにょごにょと話した後、家の方角へと帰っていった。
    残された天才マンと勝利マンは、互いに顔を見合わせ「ああなるほど」と言ったような顔をしていた。

    「何話していたんだろう・・・」
    「・・・努力ちゃん?」

    自分の師を跳ね除けて、努力マンは友情マンの後を追っていった。








    「友情兄さん!!」
    「?何だ努力か・・・」

    友情マンはいつの間にやら地球人の姿に戻っていた。
    それは努力マンも同じである。
    ヒーロー形態の時よりも、似ているとは言いがたい兄弟である。

    「1つ聞きたい事があるんです。兄さんはどうして・・・」
    「無断で学校を休んだり、一匹狼マン君を置き去りにしてどこかに行ったりしたのか
    ・・・でしょ?」

    聞きたいと思っていた事を、さらりと先に言われてしまい、努力は言葉を詰まらせた。
    そんな弟をよそぎ、友情は更に言葉を繋ぐ。

    「お葬式に出てたんだ。・・・友達のね」
    「葬式・・・ですか?」
    「そう、お葬式。・・・私が初めて作った友達の、お葬式に」

    友情には失礼だが、少し意外だと努力は思った。
    彼は日本一、もとい宇宙一友達が多い中学生(中身は推定年齢250歳以上のエイリアン)。
    アドレス帳に記載された友達のリストは星の数ほど。
    そんな彼が、今まで出会ってきた友人の顔と名前を覚えていられるものかと思っていたのだ。
    ましてや一番最初にできた友人のことなんて。
    普段の言動行動がそれなので、尚更信じがたかった。

    「事故だって。ご遺族の話を聞くとね、見た目は本当に綺麗な死体だったんだって。
    だけど、ほんの少し打ち所が悪かったってだけで、その子死んじゃったんだ」
    「・・・ショック、でしたか?」
    「うん・・・それが初めて出来た友達だっただけあってね。
    葬式に部外者の一匹狼マン君連れて行くワケにもいかないし、
    彼は家でお留守番しててもらったよ。
    気が動転していたから、学校にも彼にも詳しい事話せなかったんだ」




    ぐぉー・・・ん・・・

    上空を、飛行機が通り過ぎていった。
    エンジン音はさながら夜の犬の遠吠えのように聞こえ、
    努力と友情の周りの静寂を、一層映えさせた。




    「友情兄さん」
    「・・・何だい?」
    「私、兄さんのこと誤解していました。
    兄さんの事、ただの偽りの友情野郎とか思ってて・・・」
    「酷いなあ・・・本人の前でそう堂々と言うなんてさ」

    苦笑いする友情。

    「あ、でも違います!!今はもうそんな事思ってませんから!」
    「本当~?」
    「ホントの本当です!!
    兄さんの事悪く言う人たちにさっきの話聞かせたいですよ・・・」

    努力は第3回人気投票で、友情の順位が一気に降下したことをいまだに気にしていたようだ。

    「言いたいヤツには言わせておけばいいんだよ。
    その時には見せしめで友達にボコボコにしてもらうから」

    にっこりと笑う友情に、背筋の凍りつく思いをした努力。

    「こ・・・怖い・・・この人」
    「?どうかしたの」
    「いえ別に!!」
    「そう?なら久々に一緒にご飯でも食べようよ。勝利兄さんも呼んでさ」




    日が西の空に沈みつつある夕暮れ時。
    空の色は美しい桃色と、橙色のグラデーションに彩られている。




    ああ、明日も青空だ。




    と、努力は呟き、目を細めた。




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