君色に願う帰り道初夏、少しづつ日照りが強くなる日々。街を歩いていた春草は鏡花に出会った。
「菱田、ちょうど良かった。」
春草は鏡花から赤い組紐を貰った。自分の願うものの所へ導いてくれるというものらしい。
「僕にはうさぎがいるし、その紐、森さんの髪の色に似てたからせっかくだしアンタにあげるよ。
森さんとお幸せにね」
そう言って鏡花は去って行った。
「ただいま帰りました」
家に着けば、仕事から戻った鴎外がいた。いきなり恋人に抱きしめられ、改めて鴎外との特別な関係を思い出す。
彼に赤い組紐の話をすると、春草に似合う着物を買ってきたから明日それと一緒に身につけて欲しいと言われた。
翌日。今日は二人でデェトの約束をしていた。昨日鴎外に貰った着物は紫を基調としていて、いつも鴎外が着ているものに似ていた。あの赤い組紐で普段通り髪を束ねて蝶々結びにした。
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