弾の数スティア「君は頭がいいと、前にオレはそう言ったね」
ス「だからこそ、君の"賭け"方に違和感があった」
ドリフ「賭け方?」
ス「自分の実力を誰よりも自覚している君が、強敵の前にみすみす姿を現し…ましてや自分に意識を向けさせるなんて事するはずがない、と言っているんだよ」
ス「誰から見てもそれは愚かな自殺行為だ。勿論君自身から見てもね」
ス「銃の発砲音を利用して、敵の意識を逸らす…逆にオレは、君がこうする以外の発想が生まれなかったよ」
ス「けれどオレが来た時、敵の意識は全部君に向いていた。君は拳銃を手にしていたにも関わらず、それを発砲するのではなく…脅しに使っていた」
ス「つまり、発砲しなかった理由がある。簡単な話、君はしなかったのではなく…出来なかったんだ」
ス「───その銃、弾が入ってないだろう?」
ド「えへ、バレてた?…って、いたたた、痛いよ!」
ス「へえ、痛いのかい?全然、言い訳なら聞くけれど」
ド「じゃあ聞いてよ、持ち出そうと決めたその時まで、俺は弾が少なくとも1発はあると踏んでたんだ」
ス「と言うと?」
ド「…この銃は一般的なリボルバーで、弾数は6発。実は俺の閉じ込められてた異空間には先客がいてね、皆亡くなってたけれど…人数は7人だった」
ド「死因は恐らく餓死と、俺は踏んでるよ。だからって彼らが閉じ込められてから何もアクションを取らないわけが無い。必ず色々試して、脱出を試みるはずだ」
ド「案の定、遺体と一緒に弾丸も転がっていたよ。骨の折れる作業だったけど、41個だった」
ス「…弾丸?」
ド「そう、弾丸。」
ド「リボルバーってね、治安官が持ってるオートマチックとは違って撃つ度に薬莢が排出されないんだ」
ド「"装填する時に"、手動で取り出す必要があるんだよ」
ス「なるほど、つまり…そこに居た彼らは1人ずつ6発撃ち…弾の補充をしなかった」
ド「君の言葉を借りるなら…しなかったんじゃなくて出来なかったんだ」
ド「彼らが閉じ込められた時点で、弾のストックが切れてたんだよ。そうじゃなきゃ装填しない理由がない…だって人間はそういうものだから」
ス「でも君は41発だと言った。普通に考えて、7人全員が6発使い切ったのなら42発あるはず…その内の1人は1発残していると思ったんだね」
ド「そ!だから適当にひとつ選んで持ってったんだ。7分の1を当てる覚悟でね。…けど」
ド「当てるどころか、そもそも当たりは無かった」
ド「異空間から出た時…俺はその人たちが異空間に飛ばされた際のカガミを通ってったんだ。だからその先にあった景色は、彼らが閉じ込められる前に居た場所」
ド「まあ言っちゃえば、そこは誰かの部屋だったんだ。そして壁には1つ、弾痕があった。…この意味、分かるよね?」
ス「余っているはずの1発は、既に使われていたということだね」