痛みと愛しさ「うっ、」
心臓のあたりを、服の上から押さえうずくまる。灰色の瞳にはわずかに涙が滲んでいた。
イソップ・カールには悩みがあった。それは最近、頻繁に心臓のあたりに痛みを感じることだ。幼い頃からの症状であったものの、その時はまだ3ヶ月に一度痛むか痛まないかの頻度だった。
それが最近は2日に一度、いや1日に一度、何度もと言っても過言ではないほどに痛んでいる。
それは唐突に訪れるのだ。呼吸をした途端、あるいは動いた途端、何もしなくとも、心臓が鼓動するだけで。心臓のあたりは張り裂けたかのように痛み、呼吸もままならず、動くなど論外。呻くことを我慢できるときもあるが、あまりの痛みに思わず呻きが漏れることが多い。
しかしその痛みは一瞬で終わることが多い。今までも、一分痛みが続いたことはない。なのでイソップ自身大したことではないと思っているし、そのため誰にも相談していない。するつもりもない。
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