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    POI11504426

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    『貴方の存在意義』

     ヒーローは何処へでも駆けつける。それがみんなの思い描く、正義なのだろう。

    「___怪我人はこっちに______!」

    その、明るくて、力がみなぎっていて、聞くだけで元気を貰えるような、その声を皆が待ち望んでいる

    「怖かったね。でももう大丈夫。俺が側で、君を守るから」

    怖くて怖くて、仕方がない時も、その声を聞けば、何にでも立ち向かえるような気がして

    「ヒーロー、伊波ライ。ただいま到着しました」

    ああ、あの光こそが、正義なのだろう

    _____________________

    「伊波さん。今お時間大丈夫ですか?」
    ヒーロー協会で活動をしている他のグループの一人にそう、声をかけられた

    「ああ、はい。なんですか?」
    「実は、次の任務で司令塔の役割を任せたいのですが、大丈夫ですか?」
    自分が他人に指示を出す、と言うことか。誰かのためになるのなら、力になりたい
    「ええ、もちろん。自分に出来ることなら、是非やらせてください」
    即答で答えた
    「ありがとうございます…ヒーロー協会の中でも特に力のある方がいてくれるととても助かります。では、当日はお願いします」
    「はい、任せてください」
    自分は、戦力としてはまだまだだが、戦いの場において効率を考え、どうすれば早く物事を進められるかを常に考えている。
    「よし…頑張るっきゃないでしょ…!」
    誰かの力になる事はこの上ない喜びだ
    早速準備に取り掛かろう。まずは爆撃用にドローンを作らないと…

    「なんか楽しそうやね、伊波」
    「ああ、カゲツ。実は、次の任務で指示役をして欲しいって頼まれたの。そのためにいろいろ準備してるんだ」
    「へ〜、凄いやん。俺そんなん頼まれた事ないで」
    「そんな事ないよ。カゲツも十分凄いよ」
    「良いこと言ってくれるやん」
    純粋な子供のように喜ぶカゲツが可愛らしく見えてくる

    「___またそんなもん作ってんのか、伊波」
    「もーちょっとマシな言い方とかないワケ?」

    自分が東の技術を使っている事があんまり気に食わない様子の小柳。

    「よし、一体目完成〜」
    「めっちゃ作るの早いやん。やっぱ才能あるなぁ、伊波は」
    純粋に褒めてくれるのは、カゲツか星導ぐらいだ
    「まぁ…出来はいいんじゃねぇの。お前の作る機械、確かに実用性はあるからな」
    「素直に凄いって言えばええのになぁ」
    「なんか言ったか」
    「いやなにも」
    シラを切るカゲツを横目に黙々と作業を進める。任務までには必要な数は作っておかないとな…

    「ん〜〜〜、こんなもんでいいかな…」
    満足いくまでドローンが作れた。よし、あとは明日の任務に備えるだけだ
    「……早めに休んでおくか…」
    そう言って布団に入り、瞼を閉じた____

    「では、伊波さん。今日はよろしくお願いします」
    「ええ、こちらこそ、お願いします」
    そうして任務に取り掛かった

    「東の方角、小さい個体が湧いてる!放置すると被害が拡大するから、そこに向かって!」

    的確な指示を飛ばしていく

    「______伊波さん!向こうに大型の魔物が…!」
    「分かりました。今向かいます」
    ズレかけたゴーグルを掛け直す。そして魔物のいる方へ走る
    「ドローンで相手の動きを止めます。その間に一斉に攻撃を!」

    激しく重なる重低音と共に、魔物が足から崩れ落ちていった

    「討伐、完了しました」

    こうして、無事に任務を終える事ができた

    「いや"〜〜〜、疲れた""ーーーーーー!」
    どすん、と椅子にもたれかかる
    「…犠牲者は、無し…か…」
    ペラ、と報告書を一枚一枚めくっていく。今回もうまくいった。大丈夫、自分は、ちゃんとやれている。戦場の把握もきちんとして、だからこそ、明確で適切な指示が出来たんだ
    「……うん、大丈夫」
    自分はこの西の地域において、正直なところ、邪魔者なのだろう、と思っている。
    西の地域に、東の技術を持ち込んでいるから当然だ。でも、そんな自分でも役に立てると分かってからはその力を存分に使っている。これで、誰かの役に立てるのなら、と______
    「あ、いたいた。ライ〜」
    ぴょこ、と星導が顔を出す
    「ん?なぁに、星導」
    「俺達これから任務に行ってきますね。ライは行ったばかりだから、少し休んでてください」
    「うん、ちょっと休むね。ありがとう」
    やっぱり小柳と違って優しい言葉をかけてくれる。
    「はい、行ってきます」
    そう言って星導は出ていった。見ると、どうやら3人で任務に行くようだ
    「……」
    なんだろう。何かがひっかかったような気がしたが、気のせいだと思うことにした

    「あれ、これ3人がやった任務の記事じゃん 」
    そう言ってスマホから流れてきたニュースを見る。画面には危険度の高い任務かつ、大型の魔物をたったの3人で討伐に成功した。と言うものだった。そして画面のところどころに、いつも見慣れたあの3人の顔と姿が写っていた
    「へ〜…すご……」
    何か、引っかかる
    「…、、、?」
    ______ズキン。と、胸の奥が僅かに痛む
    「なんだ、これ…」
    自分の胸の辺りをぎゅっ、っと握りしめる

    ______どくん______

    「あーーーーーー、もう!やめやめ!」
    ぐしゃぐしゃと頭を掻く
    変な事を考えても時間の無駄だ。もう今日は休もう
    そう思い、席を立とうとした時だった
    「ただいま帰りました〜」
    キィ、とドアを開けて星導が入ってきた
    ______切り替えないと
    「あ、おかえり!早かったね」
    「そうなんですよ〜、流石小柳くんとカゲツと言ったところですかね」
    「いや、星導も良かったで」
    カゲツが続いて口を開いた
    「まぁ、悪くなかったな」
    そうして3人が任務でお互いの良かった所を言い合っている。

    そして、取り残されてしまった、『自分』

    「あ〜、ごめん!盛り上がってるとこ悪いんだけどさ、俺ちょっと疲れちゃって、先に寝るね!」
    「あ、確かに。伊波は他のチームの奴らとやったもんな。疲れとるよな」
    「うん、じゃあ、おやすみ!」
    そう言って部屋を出ようとドアノブに手をかける
    「ライ、何かありました?」
    そう、声をかけられた

    ______どくん、どくん_____

    (大丈夫、大丈夫。これは一時的なもの。だからきっと、すぐに治るはず。)
    パッ、っと明るい笑顔で星導を見て口を開く

    「ううん、なんにも!」

    この言葉を放つ時には、自分の心の中が取り返しのつかないぐらい、ぐちゃぐちゃになっていた

    ______自分は、いらないのだろうか
    「……」
    自分は、
    「………」

    自分とは違い、あの3人はずば抜けた力を持っている。それに比べて、ただの人間で、少し機械が作れるぐらいの能力しかない自分が

    「おれ、って……」
    頭と、心の中で、何かがぐるぐるとうずまく

    (いらない存在……?)

    そう、思ってしまった。

    実際に、あの任務は、俺が指示役を頼まれたあの任務の時も、もしかしたら、自分はいらなかったのでは、と______

    あの3人が遂行した任務は、自分が担当した任務よりもずっとずっと難しいだった

    「だったら……」

    だったら、もう

    『俺、ここにいる意味、無くない?』

    そう思ったほうが、楽な事に気がついた

    「小柳くん。ライってどこ行ったか分かります?」
    「見てないな」
    「そういや昨日寝るーって言ってから会ってないぞ」
    「ですよね…」
    心のざわつきは一向に収まらなかった

    「……どこだろ、ここ」
    ただ、当てもなく歩き続けた
    「もう、どうでもいいや…」
    だって、自分は
    「俺は」
    自分は

    「もう、いらないから______」

    「どうしたの?浮かない顔して」

    声を聞いて、ぼんやりとしていた頭の中がパッ、っと明るくなる
    声のする方を見る すると、そこには自分そっくりの…いいや、あれは、自分だ

    「…え……」
    「ああ、驚かせちゃったね……よい、しょっと」
    そう言って自分にそっくりの人物は下ろしていた腰を上げて立ち上がった

    「…誰だ、お前」
    そう口を開く
    すると相手はヘラヘラとした態度で言った
    「やだなぁ。そんな怖い顔しないでよ。ちょっとお話ししようよ______伊波ライ」
    「なんで俺の名前を…!」
    自分の名前が出た事に驚きを隠せなかった

    「知ってるよ。だって、俺も伊波ライだから」
    「は……?」

    頭がこんがらがってきた

    「まぁ難しいことは置いといて、さ。話をしようよ」
    状況が理解できない自分を置いて話を進める
    「ねぇ、君はさ。自分が必要とされていない事に気づいて、自分のいた場所から出てきたんでしょ?」
    「…!」
    「あは、びっくりしてる。俺はなんでも知ってる。お前が自分は役に立っているってことを勝手に思い込んで自己満足に浸ってる。そして周りの奴らからの賞賛の声に酔いしれてるだけ。そして今、お前は自分の力の無力さに打ちひしがれてる…ね。これで合ってる?合ってるよね?だって、全部お前の…」

    「______黙れ!!!!」

    頭の中で何かがプツン、と千切れた

    「お前の事なんて知らない!知らないやつの言う事には興味なんてない!」

    ______違う、ちがう、はずなのに

    「へぇ、じゃあ俺がさっき言ったことは全部無かったってこと?お前が任務で司令塔を任されたことも?全部?嘘ってこと?」
    「黙れ、黙れ黙れ黙れ!!」
    とにかく相手を黙らせたい。何がなんでも。その一心で胸ぐらを掴んだ

    「事実を受け入れたくないからそうやって癇癪起こすんだ?へぇー、ただのガキじゃん」
    「ちがう、ちがう、俺は、おれは…!」
    「何が違うの?」

    ああ、

    「ねぇ、俺と来なよ。そしたらさ、嫌な事とか、自分を攻める人も、誰かが犠牲になるところも、全部見ずに済むよ?」

    「______は、?」

    一瞬だけ、期待をしてしまった

    「辛かったんだよね?ずっと」
    やめろ
    「自分が、自分だけが無力で」
    ちがう
    「助けられなかった人の声も、顔も、なかなか忘れられなくて」
    ちがう
    「周りの、あの3人と違って」
    やめて
    『______弱いから______』

    「やめろ"!!!!」
    目から大粒の涙が出てきた
    「やめろ、聞きたくない、ちがう、おれは、俺は、そんなんじゃ…、、!」
    頭をかかえこみ、座り込んだ
    「うんうん、辛かったね。よく我慢したね。大丈夫、俺ならそれを理解してあげられるから。君の悲しみも、全部分かってるから」
    「なにが、何がわかる、おまえに、おまえなんかに、」
    「分かるよ。だって俺も伊波ライだから」

    もう、ぐちゃぐちゃだ

    「ほら、一緒に行こう?大丈夫、俺が守ってあげる。君の弱さも全部、俺が背負ってあげる」
    「…全部…?」
    「うん。君を傷つけるものから守ってあげるよ。だから、さ?手を取って?」
    そう、手を差し伸べてきた

    この手を取ったら、どうなるのだろう

    「……おれは」
    いいや、駄目だ。
    「…お前の手は、取りたくない。」
    そう、言い放った

    「______あー、そう」

    とてつもなく、冷たい声

    ぞわ、っと全身に寒気が走るような感覚
    「ならいいよ。俺のしたいようにさせてもらうから。」
    そう言って何かを取り出す
    自分の使っているハンマーの形をした…あれは、マイク?
    「すぐ終わらせてあげるよ。ヒーロー」
    戦うつもりなのだろうか。ならば、こっちも変身をしなければ、と思った時だった

    その、手に持ったマイクに口を近づけて、言葉を放った

    『おやすみ、ライ』
    「  え  」
    がくん、と膝が崩れた
    「な、に……」
    ぐらぐらと視界がまわる
    「___________」
    なにか、いっている。が、意識が朦朧としてよく聞こえない。こえも、だせない
    「………」

    そのまま、意識は暗闇に堕ちていった

































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