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    トネだよ

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    トネだよ

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    ガロリオ 短文 一緒に住んでる

    夕暮れ時。

    元の街の姿を取り戻して久しいプロメポリス、そのビルとビルのあわいからまばゆい陽光がさしこんでいた。オレンジ色に染め上げられた光の帯が地面を走り、ビルが落とす影をより濃く際立たせながら、街は確実に夜へと向かっていく。そんな頃、業務の引き継ぎを終え帰路についていた青年はふと立ち止まり、先を歩く少年を見た。ただでさえ普段から柔らかく、太陽の光をたっぷりと含んで煌めく髪が、まるで湖面のように揺らめきながら夕暮れの色を照り返す。

    触れたいと、思う。青年の無骨な指はその金糸の手触りを知っているし、触れたとき、得難い幸福に包まれることもまた、魂の深くまで刻まれていた。

    「なんだ、突然」
    「すっげぇキレイだから、触りたくなった!」
    「子供みたいな理由だ・・・」

    小走りに追い付いて指を差し入れた髪の中は少年の体温であたたかい。まったく仕方ないなと振り返った少年の瞳に、目を細めてすっかり緩んだ青年の顔が飛び込んできて、思わず胸が震えた。日頃から突拍子もないことを言い思い付いたら吉日と言わんばかりに即行動に移す、時々子供のようだとも思う青年が垣間見せるこの穏やかな表情は少年のお気に入りだ。思わず引き寄せて、青年の鼻先に唇を寄せる。くすぐったそうにしながら、青年は同じように少年の鼻先に唇を寄せ、これから間もなく街を染め上げる色をした瞳を覗き込む。どちらともなく笑いあい、二人は再び歩きだした。

    「はぁ。君は本当にかわいい奴だな」
    「おう、俺はリオのかわいいガロだ!」
    「言われ慣れるのも困りものだよダーリン。照れがなくてつまらない」
    「なんだよ、今まで散々かわいいって言ってきたのはハニーだろぉ?」

    軽口を叩き合う。そうして1日が終わって、また明日が始まる。取るに足らない日常を、お互いに一番に伝えるおはようとおやすみで区切りながら。二人は知っている。それが、どれほど幸運なことかを。

    「おやすみガロ。また明日」
    「ああ、おやすみ、リオ。また明日!」

    目玉焼きと、焼いたパンのこうばしい香りに彩られた朝をまぶたの裏に浮かべ、二人は眠りにつく。この日常がずっと続くようにと祈りにも似た願いを、胸の奥底に抱えながら。
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