夕暮れ時。
元の街の姿を取り戻して久しいプロメポリス、そのビルとビルのあわいからまばゆい陽光がさしこんでいた。オレンジ色に染め上げられた光の帯が地面を走り、ビルが落とす影をより濃く際立たせながら、街は確実に夜へと向かっていく。そんな頃、業務の引き継ぎを終え帰路についていた青年はふと立ち止まり、先を歩く少年を見た。ただでさえ普段から柔らかく、太陽の光をたっぷりと含んで煌めく髪が、まるで湖面のように揺らめきながら夕暮れの色を照り返す。
触れたいと、思う。青年の無骨な指はその金糸の手触りを知っているし、触れたとき、得難い幸福に包まれることもまた、魂の深くまで刻まれていた。
「なんだ、突然」
「すっげぇキレイだから、触りたくなった!」
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