飴 飴を捨てた。カバンの底でどろどろに溶けてしまっていたからだ。
誰に貰ったんだったか、おそらくヘアメイクスタッフさんだ。こういう気軽な菓子って、ふいに手に入るから持て余してしまう。いつもなら喉ケアにもなるからありがたく食べるのだが、立て続けの撮影ですっかり忘れてしまっていたようだ。
「なあ、飴持ってないか」
「持ってねー」
「そうだな。あったらオマエ、自分で食べてるもんな」
アイツの当たり前の返答に、一人で納得してしまった。アイツは貰ったら即食べる。収録の直前でもだ。飴は噛み砕くし、口の中がもたつくチョコレートもペロリだ。おかげでメイクさんは、撮影が始まる直前に、アイツの口元をチェックしなければならない。
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