獏 夢を本当にする力が、もしあったとして。
「覇王」
「にゃあ」
路地裏で、いつものネコに煮干しをやる。嬉しそうに喉をごろごろ鳴らす様を見ていると、自然と自分の口角もあがってくる。
そろそろ寒くなってくる時期だ。コイツは今年、どこでどうやって過ごすのだろう。あたたかい場所で眠れているのか。食い物にはありつけているのか。さみしくなったりはしやしないか。
「チャンプ――っと」
オマエもいたのか、とあからさまにテンションを下げるチビに、オレ様の口角も下がる。お互い、一人きり――正確には一人と一匹――になれる、とっておきの場所なのだ。邪魔されたともなれば、気分はよろしくない。だけど、退散する気もないし、おそらくチビもそうだろう。仕方なく、といった風にしゃがんで、ポケットから缶詰を取り出した。
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