アルファベットA 満開だった桜が春風に吹かれてぶわっと舞った。蕾が膨らんで、ポップコーンが弾けるように咲き始めた桜は、満開になり散っていく。見頃は二週間ほどで、あっという間に葉桜になってしまう。
「すごい風!」
真宝は、桜の花びらを乗せた風を見送って花びらたちが地面に散らばる前に……
「くしゅん!」
「おいおい大丈夫か?」
「……うん。くしゃみ出ちゃった」
大きく育った身体にずいぶん可愛らしいくしゃみだと、荒仁は目を細める。
「風、強えな」
桜の花びらは次々と落ちてくる。
「なあ、久しぶりに修行するか」
と、思いつきを口に出した荒仁が小学生の頃のようにニヤリと笑う。
「なんの?」
「落ちてくる桜の花びらキャッチする。先に10枚キャッチしたら勝ち」
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