Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    maru464936

    @maru464936

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 27

    maru464936

    ☆quiet follow

    Twitterでつぶやいたやつ。ヴンさんの葬式

    六等星の夜星の降る夜。老人の遺言通り子供たちは彼と彼の妻の遺灰から作った石を、手のひらほどの大きさに作られた、木彫りの鳥に入れて、澄んだ湖の中に沈めた。いずれ棺は朽ちて、中の二人は静かな水の底、二度と離れることなく眠り続けるだろう。
    永の別れとは思えぬほど故人の願いを叶えられた安堵感もあってか、空気は和やかだ。
    月の無い夜。黒、紺、紫、青。複雑な色合いの空に、普段なら強い光にかき消される小さな星までもが精一杯の輝きを見せている。
    静かな湖面いっぱいに映る夜空にまだ幼い子どもたちがはしゃぐ声さえも聞こえる。
    暖かな夜。かって、孤独な少年兵と見上げた星空は遠い。

    「もう行くの?シャドー」

    おさない少女の声に振り返る。
    「彼」の孫娘だ。祖母譲りの柔らかい宝石の色をした髪は、星の光を弾き、夜目にも鮮やかに舞う。

    すこし、普段より大人びた口調で少女は続ける。
    「今までありがとうね、ずっと一緒にいてくれて。あの人を、レイヴン を一人にしないでいてくれて、ありがとう」

    少女の瞳が、闇の中で星のように光る。
    いつのまにか彼女の後ろに控えていたスペキュラーが、一声、低く鳴いた。
    礼を言われることでも無い、ただ自分がそうしたかっただけだから、彼女たちに短く返して、振り返ることなく影と赤い魔装竜は去っていく

    「…ア!シア!起きろ!おい!」
    焦りを含んだ少年の声が響く。
    「ふぇ…?」
    呑気な声を漏らしながら目を覚ました妹に、安堵しつつ少年はへたり込んだ。
    スペキュラーがいるから大丈夫だろう、とは思っていたけれど、視認性の悪い夜闇の中、湖で足を踏み外していたら、と気が気ではなかった。

    「こんな所で何してたんだよ…」
    「ここどこ?なんでシアこんな所にいんの?」
    「…それを聞いてるんだろ、まあいいや。そろそろお開きだよ。帰ろう…そういえば、シャドー知らないか?」
    「知らなーい」

    その日からお爺ちゃんのオーガノイドとゾイドは行方がしれなくなったけど、大人たちはだれも驚くことはなかった。あれは父さん以外に仕えることはないだろうって思ってた、だって。
    お兄ちゃんをはじめ、男の子たちはみんな憧れていたものが何処かに行ってしまったことにがっかりしてたけど。

    さようなら、どうかお元気で
    誰かの声を聞いたような気がする。
    さようなら、どうか幸せに
    だから、そんな言葉を風に乗せて返す。
    どうか、いつか、あなたの逢いたい人に巡り会えますように。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works