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    hana6la

    かべうち別宅(詫)

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    hana6la

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    ときどき専属整備士さんが🌠くんの分をまとめて洗濯してくれるのは下心があるから
    🔧くんの「同じ洗濯機で洗えばシノの匂いが移らないかな」なんてやましい気持ちはきっとたぶん、🌠くんには気付かれていない……はず……

    ##snym

    パンツを洗濯する話……むかし、ぴくログに置いてあった解像度低めの幻覚です


    20170705 log(パンツを洗濯する話)


     入植前に惑星改造を行ったとはいえ、火星の気候は地球と異なる。例えば、雨はあまり降らない。地球では赤道近くの位置であるクリュセでも、ミレニアム島のようなスコールは降らないし蒸し暑くもない。常に乾いた風が吹き、毎日、晴れているが暑さはない。水は解けない地下水脈の氷を今も利用している。

     ──火星の良いところは洗濯物の乾きやすさくらいか。
     ヤマギは基地の片隅から青い空を見上げた。イサリビでも洗濯は出来たけれど太陽の下に干せないから、服が乾いても何故かすっきりしないのだった。

     すでにヤマギの他にも何人分か、洗濯物が干してある。
     朝の早い時間なら、ここに来ているのは多分アトラだ。団長はアトラに雑用を押し付けるなと言っていたけど、三日月のは別。鉄華団の悪魔なんて呼ばれる人の下着がぜんぶ、綺麗に並んでいるのがおかしくて笑っていたのをシノに見つかった。

    「洗濯日和ってやつだなぁ」
     おはようと言う代わりにシノが、シーツを避けてヤマギの前に出る。
    「そんなの、いつもだよ」と、ヤマギは背の高い男の影に答えた。

    「洗濯機、空いてんなら、俺もやっちまおうかな」
    「シノ、今日は非番?」
    「いや、そうじゃねぇけど。けっこう、溜めちまってっから」
    「俺、非番だから、やっとこうか?」

     ついでに、と。それ以上の意味を持たせたつもりはなかったけれど、予想に反してシノが驚いた顔をする。たぶん、シノなら躊躇いなくヤマギのところへ溜まった洗濯物を持ってくるだろうと思っていた。整備の作業中、流星号の細々した注文をよこすみたいに。

    「もしかして、遠慮してる?」
    「遠慮してるわけじゃねぇんだけどよ、ちょい、びっくりした」
    「なんで?」
     ついでの洗濯が、シノに驚かれるようなものだったのだろうか?
     もしかしたら、手伝うなんて申し出たのが意外だったとか?
     驚かれるような覚えはまったくない。

     首を傾げたところへシノが「これ、ヤマギのパンツか?」と干したばかりの下着を指差す。
    「うん、俺のだけど」
     下町の雑貨屋に売ってるヤツだから、べつに大胆なデザインのパンツじゃないと思う。
    「パンツ見られるのは、平気なんかーって思ってよ」
    「ただの布だし。俺が裸になるわけじゃないよ」
    「ああ、そっか」
     そうだよなーとシノが頷く。ヤマギが自分のことを明け透けに話さないのと、親密なスキンシップも得意じゃないこと。その辺をシノから誤解されていたようだ。恥ずかしいのとは少し違う。自分の裸を見られるのは周りに比べて貧弱だから嫌なだけで、見られるのがパンツ単体だったら抵抗はない。

    「でも、まあ、…女の子には見せられないけどね」
    「女の子っつても……こんなとこまで来んのは、アトラしかいねぇだろ?」
    「アトラだって女の子だよ」
     失礼だとヤマギは、シノの脛を軽く蹴った。
     アトラに洗濯を頼めるのなんて……、ましてやパンツを洗わせるのなんて、年長組で許されるのは三日月くらいだろう。ただし、あんまり洗濯物をため込んでしまったら、頼まなくても見るに見かねてアトラが、勝手に洗ってしまうのかもしれないけれど。

    「……世話やかれんのは、ガキどもの特権だよな」
    「溜まっちゃってるなら、シノの分は俺が洗濯するよ。今日だけね」
     ついでだからと、ヤマギはシノに向かって両手を出した。
     ほんの少しの間、シノは黙っていたけど「よろしく頼むわ」と言って、ヤマギの手の平にぽんと手を置く。それから「俺ら、男の子同士だしな」と言ってシノがニカっと笑う。

    「シノも遠慮しないで、パンツも持ってきなよ」
    「それなぁ、前にユージンから拒否られたんだぜ」
    「えっ、ユージン?」
    「どうせ、洗濯機回すならいっしょに入れればいいじゃん?」
     ついでにとシノが洗濯槽へ入れようとしたのを、ユージンに「お前のパンツといっしょは嫌」だと断られたらしい。

    「それって、シノを甘やかさないためじゃないの?」
    「なんかよ、俺のといっしょに洗うとニンシンしそうだーっつってよぉ、……俺ら男同士じゃん? んなもん、出来ねえよなぁ……だいたい、パンツいっしょに洗ったって……」
     ブツブツとシノの口から出てくる悪態にヤマギは吹き出してしまった。きっと、ユージンは面倒だから断ったんだろうと思うけど。そこまではっきり言うつもりもない。

    「日頃の行いかな。シノはいつも、おっぱいの話ばっかりだしね」
    「今は、そんなに言ってねぇぞ?」
    「そうかな?」
     まあ、いいいから洗濯物持ってきてと、ヤマギはシノの背中を押す。シノに近づくと上着から洗濯石鹸の匂いとは違う匂いがする。汗くさいのとは違う、男っぽい匂い。きっと、シノは気が付いていないんだろう。

     ──同じ洗濯機で洗えば、シノの匂いが移らないかな。
     ──なんてやましいことを考えているのも、たぶんシノは気付かないんだ。

    ***

    (この後、パリパリに乾いた洗濯物にめっちゃ顔うずめた)
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    hana6la

    MEMO(捏造)27話28話の間くらい「さそりの火」02
    予備隊を連れて行軍演習に行く🌠くん
    2017に書いたのを書き直しています(全4話+α)
    fuego de escorpión 02(注)二次創作なので全て捏造だよ。本編の隙間話です(17000字くらい)


    【さそりの火 02 わたり鳥の標識】


     幽霊ではなく、まだ身体のある死者が通る道は、基地の改修工事が終わった後もほとんど変わらなかった。実働部隊が運んできた仲間の遺体は車両から降ろされ、袋のまま灰色のコンクリートの上を引きずられていく。所属する組織の名前が変わり、新しく墓標は出来たが墓地はない。再びフェンスの外まで連れ出された彼らは、地雷の埋まっていない場所を選んで埋められる。乾いた赤い土を掘りかえし、彼らを死体袋のまま穴へ放り込んだら、残りの土を被せて終わりだ。
     CGSにいた子供達の多くは身寄りがなく、家族のいる者でも遺体が引き取られることは滅多になかった。死体の入った黒い袋は廃棄物、動かなくなった身体は使えなくなった機械に等しい。火星を出るまで世の中には葬式というものがあり、死者を送り出すための言葉があるのを知らなかった子供は、ただ黙々と手を動かすだけだった。きっと、いつか自分も同じ道を辿る。それがいつになるか分からないが、あまり遠くない未来のように感じていた。もしも他に違う道があるのだとしたら、……子供を殴って使い走りにする一軍と同じ、つまらない大人になるのかもしれない。
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