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    hana6la

    かべうち別宅(詫)

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    hana6la

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    人を選ぶ妄想です
    好きな男の背中に恋人しか知らない秘密があるの大好きマンなんですが🔧くんの背中にツナギと同じ流星号の刺青があったりすると非常に…… 🌠くんが帰ってきてから入れたのでもよいし(執念深く)帰ってくる前から入れていたのでもいいので!!!!

    ##snym

    彼の背中に(シノくんが帰ってくる前から入れていた ver.)


     鏡に映ったヤマギの背中の左右には、鮫の目と呼ばれる刺青が入っている。抱きしめれば、容易く腕のなかに隠れてしまうくらいの大きさだった。けれど、薄い肌色に鮮やかな漆黒は彼が誰のものかを主張する。
    「──なんで、こんなの入れたんだって、あんとき思ったけどよ、……今ならわかるぜ」
    「……急に、どうしたの?」と、訊ねる本人には自覚がないらしい。
    「こうやって、鏡にうつんだろ?」
    「俺からは見えないよ」
     ちらりと後ろを振り返るヤマギには、自分の背中までは見えないようだ。それでも照れくさそうな顔は隠せないから、見えないふりをしているだけかもしれない。髪を撫でるふりをして肩甲骨のあたりに描かれた右目を隠せば、ぎゅっと背中にしがみつくヤマギの腕にも力が入る。
    「ヤマギの全部が、俺のモンみてぇだって、……」
    「流星号と同じだから?」
    「なんで、この柄にしたのか、わけを聞いてもいいか?」
    「それは、……他に思いつかなかったし」
     小さな声で答えた後、ヤマギは鏡から隠れるようにシノの胸に顔を埋めた。湿った吐息が、まだ水滴の落ちる皮膚に触れる。そのままヤマギの前歯がシノの乳首を軽く噛んだ。
    「そんなこと、今さら、聞く?」
     初めてのときから、気づいていただろう。狭い寝室の窓には鎧戸もなければ、カーテンもかかっていなかった。うっすら外の明かりが入ってくる部屋では互いの身体は隠れない。
    「あんときは、夢中でよ」
    「嘘。気づかないふりしてたなら、ずっと続けてくれたらいいのに」
     そう言いながら、シノを見上げるヤマギの目は動かなかった。恥ずかしいと思っているならヤマギのほうから視線を外すはずが、前髪で隠すことのなくなった青い瞳はシノの目を見つめたまま離れずにいる。
    「そんなん、無理だろ。こんなハッキリ見えてんのに無かったことにすんのは」
    「だけど。聞かない優しさもあるよ」
     ──答えなんか、聞かなくてもわかってるくせに。と、小さな拳が胸を叩いた。たぶん、それはシノの予想を大きく違えない。その答えを彼の口から聞きたかった。知らぬ間に大人になった彼の声で聞きたい。もっと言ってしまえば、ヤマギの言葉で答えを聞いて自惚れたかった。
     コイン程度の大きさでも、刺青を入れるには一時間から二時間ほどかかる。料金だってびっくりするほど、高くはないが安くもない。めったに麻酔なんて使わないから、針を刺すごとの痛みに耐えなければならず、おまけに感染症のリスクまである。一度入れたら消すのが難しいそれを入れるのは、カタギとは言えない女ばかりだった。
     もう一度、鏡の中へ目を移してヤマギの、長くなった金色の髪がかかるかかからないか、絶妙な位置にある刺青を指でなぞれば、つま先立ちになったヤマギの腕がシノの首へ絡みつく。
    (……シノも見せてよ。俺しか知らないところ)
     耳の後ろでくすぐるように囁かれた後、そっと下唇にため息がかかる。キスではぐらかそうという腹積もりなら、それでもいい。色事の後らしく互いの唇に軽く触れるだけを数回繰り返して、抱きしめていたヤマギの背中から腕を離した。
    「俺も、見たいんだけど」
    「さっき、なんべんも見たんじゃねぇか?」
     ベッドの中で、と続けたらヤマギは首を横に振る。あんなことをしながら、じっくり眺めるなんて無理だという。そういう場所だから今、鏡にも映っていない。求めに応えてゆっくり洗面台に足をあげると、体の下から満足そうなため息が漏れた。
    「そこ、俺以外のだれにも見せないで」
    「んなとこ、おめぇ以外の誰が見たがるよ?」
     限りなく脚の付け根に近い場所。流星号と同じシャークアイがシノの内股にも入っている。その片方だけに刻まれた文字を短い爪で撫でるのが、言葉の代わりに違いない。ヤマギの背中へ同じことを仕返したら、足の間でうずくまる小さな肩が震えた。
    「……怪我とか、病気にもならないでね」
    「看護婦に見られちまうから、か?」
    「うん」
    「なら、お守りになるんじゃねーの? こいつだってちっせーけどよ、おめぇの背中のと同じだぜ?」
    「うん、……そうだね」
     新しく入れたばかりの文字は互いのファーストネームだ。もう一度、綴りの最後を指でなぞれば、ようやくヤマギが白状する。──こんな場所に刺青を入れるほど、ずっと貴方のものになりたかった、と。


    補足:
    シノくんは「ギルマトン」ヤマギくんは「ノルバ」とお互いの名前を後からつけたして彫りました(ふたりいっしょに)シノくんは刺青を彫っている最中のヤマギくんを見て、ちょっとだけ彫り師に嫉妬してるといいな。ヤマギくんにとっては、相手は機械彫りだしお仕事だしで困惑案件なんだけどね!……なんていうのを上手く書こうにも文才がないのが悲しいんじゃよ

    2021/10/09 ふせったーより初出
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    hana6la

    MEMO(捏造)27話28話の間くらい「さそりの火」02
    予備隊を連れて行軍演習に行く🌠くん
    2017に書いたのを書き直しています(全4話+α)
    fuego de escorpión 02(注)二次創作なので全て捏造だよ。本編の隙間話です(17000字くらい)


    【さそりの火 02 わたり鳥の標識】


     幽霊ではなく、まだ身体のある死者が通る道は、基地の改修工事が終わった後もほとんど変わらなかった。実働部隊が運んできた仲間の遺体は車両から降ろされ、袋のまま灰色のコンクリートの上を引きずられていく。所属する組織の名前が変わり、新しく墓標は出来たが墓地はない。再びフェンスの外まで連れ出された彼らは、地雷の埋まっていない場所を選んで埋められる。乾いた赤い土を掘りかえし、彼らを死体袋のまま穴へ放り込んだら、残りの土を被せて終わりだ。
     CGSにいた子供達の多くは身寄りがなく、家族のいる者でも遺体が引き取られることは滅多になかった。死体の入った黒い袋は廃棄物、動かなくなった身体は使えなくなった機械に等しい。火星を出るまで世の中には葬式というものがあり、死者を送り出すための言葉があるのを知らなかった子供は、ただ黙々と手を動かすだけだった。きっと、いつか自分も同じ道を辿る。それがいつになるか分からないが、あまり遠くない未来のように感じていた。もしも他に違う道があるのだとしたら、……子供を殴って使い走りにする一軍と同じ、つまらない大人になるのかもしれない。
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