くすりゆび あのひとは、わたしにとって、こわいひとだ。
日夜行われている禁忌の数々を延々と見せられる私の精神はもう限界だった。被験者の悲鳴と、実験が上手くいかずに荒れて物に当たる彼と、気分転換にか奏で始めるあの旋律とで、もう、磨り減っていた。
そもそもの話、わたしがなんでこんな所にいるのかと言うと、運が悪くて、とても良かったからだ。私も最初は被験者として連れてこられ、実際に実験に使われたのだがなんでか、意識も記憶も思考も全部ハッキリしていた。それがたいそうお気に召したのか彼はそのまま私を助手とし、手元に置いている。
何度も逃げようとした。しかしその度に彼に造られたこの身体は創造主から逃げることを拒否し、末端から崩壊していく。動けなくなった私を拾い上げる度に彼は面白そうに笑い、そうしてもう一度私を造り直す。その繰り返しだった。
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