庭師が就職して一日で首になった危機説貴族の屋敷の庭の大規模なリモデリングのために新しく採用された庭師
力が強そうだという理由で高得点を得て、荷物運びや鉢の移動を主に担当している
他の先輩やメイドたちにも初日から人気だった
倉庫の方にある人通りの少ない区域で頼まれていた鉢をすべて運び終えて、
満足した気持ちで笑いながら振り返ったら、そこに貴族が立っていた
めちゃくちゃ怖い
日陰でとても雑然としているのに、ひとりだけ服がキラキラしている人が立っていて、
空間の違和感に庭師はフリーズしてしまった……
後で師匠が言うには、ダンナが新入りの顔を見に来たんだそう。
そういえば屋敷に入る時に、ダンナはちょっと変わった人だって聞いた気がする。
でもこんなふうに急に現れるなんて、心臓に悪いんだけど。
慌てて挨拶しながら、土がついた手袋を背中でめっちゃ払ってる
貴族の校長先生みたいな訓話タイムが始まる。
最後に「わからないことは○○さんに聞きなさい」と言われ、「は、はいっ……」って返事したところ、
貴族が一歩踏み出したその近くに長くて尖った枝が……
貴族のタイツがビイイイッと破けた
俺が置いた鉢……
今日就職したのに、今日クビになるのを確信した庭師
時間が止まったような瞬間に、貴族が振り返って自分のふくらはぎを見下ろすと、
膝裏までズバッと破れている。
そして静かに「……お気に入りだったのに」と言われて、
庭師は「あああまじごめんなさい」状態
タイツがどう見ても2ヶ月分の給料より高そうで、
「俺……クビですか?」って気持ちになってたら、
183cmの巨体がガタガタ震えてるのを見て、
貴族は 顔は若いけど、もしかして食わせなきゃいけない妻子でも……?と考える(画家だよ)
「大丈夫、僕が足元を見なかったんだから。タイツも……長く履いただけだから」と安心させてくれる貴族。
もう一歩踏み出そうとしたところで少しびくっとなって、
よく見たら血が出てる〜〜〜
あの狡猾な枝は貴族の血も一口いただいたようだ。
中に戻って止血しようとする貴族を、庭師が「ちょっと待ってくださいダンナ!俺あります!包帯!軟膏も!」と呼び止めて、
「その方がいいかもね」とベンチに座る貴族。
仕事覚えたての頃にミスが多かったから、応急キットはいつもエプロンのポケットに入れてるという庭師。
「最近はあまり使いませんけど……」と慌てて経歴アピール。
土まみれの手袋を外すと、さすが噂通り手がゴツゴツしていた。
タイツの処理について「傷の部分だけ切った方が修繕しやすいですか?」と聞いたら、
「もう捨てるから脱ぐ」と返される。
こうして庭師は就職初日にクビの危機を乗り越え、
主の生足に手をかける事態に至った。
足の裏側の怪我なので、ベンチに寝そべるか柱に掴まるかの体勢が必要で、
着替えると言って庭師が処置しやすいように、土まみれのベンチにそのままうつ伏せになってくれる貴族(COOL
なんやかんやで消毒して包帯を巻いた。
消毒液をかけた時、少しヒリヒリしたのか貴族がピクッとなった。
貴族が怪我をするのも久しぶりのことだった。
そして立ち上がった時、執事長が「ご主人様!こちらにいらっしゃいましたか!ロマン様がご訪問です!」と駆け寄ってきた。
今、服は汚れてるし、タイツは庭師のエプロンのポケットに突っ込まれてる状態
執事長が「はっ……!私、邪魔を……」と察し、
貴族も庭師も「違う…!」と否定。
正面玄関は来客対応してるから裏口から行こうと、貴族が壁を押すと、扉が開いて服部屋へ続く螺旋階段が……
就職初日にして屋敷の秘密通路まで知ってしまった、恐ろしい新入り庭師。
一方ロマンは友達の家の感覚で自由に歩き回っていたが、
廊下で下半身だけ服がない友人(貴族)と鉢合わせ。
いつも誰よりもきちんとしていて、誰かを迎えるときは完璧な姿だった貴族が、
見たことないくらいボロボロでぐちゃぐちゃな姿になっていた。
その後ろには背が高いけどスリルより少し小さい男がいて、
胸には貴族がよく履いていたタイツが突っ込まれている
「ロマン君、すぐ行くから応接室で待ってて」とバーコード五千本刺さったような冷たい顔で言い残し、
貴族はその男と一緒に入っていった
ロマン「旦那様にもついに春が……?知らなかったけど、けっこう熱かったんだな」
スリル「いやどう見ても不適切な関係じゃないか?使用人と雇い主の……」
ロマン「それ、お前が言うこと?」
ー終