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    くろん

    @NKGJER

    サン星サン沼にずぶってる20↑

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    くろん

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    余裕ある大人の態度で星ちゃんを口説くサンポとばっちり口説き落とされる星ちゃんとその後の逆転劇と星ちゃんの独占欲の話

    #サン星

    かわいいあんたは私だけのもの 未だに時折何かの間違いか、そうでなければ夢か何かかと思ってしまうが、私は今、サンポといわゆる「お付き合い」というものをしている。
     サンポから好きです付き合ってくださいという申し出を、少しばかり遠回しな言い方で受けた時、私が真っ先に感じたのは困惑だった。
     私には「好き」というものが分からなかったから。
     私の知っている好きとは星穹列車の仲間や開拓の旅で出会った人たちに向くものであり、それはきっとサンポの言う好きとは違うものだろう。私は彼らと恋人のように接したいとは思わない。
     イエスノーの返事の代わりに正直にそう打ち明ければ、サンポは「ならお試しで付き合うのはいかがです?」と言った。
    「お試し?」
    「ええ。僕だって始めから都合よく両思いになれるだなんて思っていません。まずは付き合ってみて、僕を好きになれるかどうか試してほしいんです。じっくり考えていただいて構いませんよ? こう見えて気は長い方ですから――ああもちろん、お試しの間は一切手を出したりはしません、誓って」
     そういうことなら、と私はサンポの提案に頷き、そうして付き合い始めたこの男は――言うなれば、満点、だった。
     連絡はまめに、けれど決して鬱陶しく感じさせることはなく。甘い言葉も出し惜しみしない。時折贈られるプレゼントは高級すぎず安っぽすぎず、私の好みにもよく合っていた。デートのエスコートでも万事卒がなく、こちらが何か言う前に察して気を回してくれる。今だって私が喉が渇いたなと思った途端に、「何か飲み物でもいかがです? あそこのドリンク、美味しいですよ」と移動販売のワゴンを指差し、お会計をサッと済ませてベンチにハンカチまで敷いてくれる徹底ぶりだ。ベロブルグ中の、いやそれどころか全宇宙の女性がため息をついて羨ましがること間違いなしの「理想の彼氏」だった――これがサンポでさえなければ。
    「僕でさえなければ、ってそれは少々ひどくありません?」
     そう言ってサンポはほんのりと苦笑する。普段だったら大袈裟に嘆き悲しんで見せたであろうリアクションは鳴りを潜め、いかにも「大人の男」といった雰囲気を醸し出していた。そんなサンポに私はまだ慣れなくて、どんな顔をしていいのかよく分からないでいる。
    「まぁでも、僕としては全宇宙の――他の女性たちにどう思われようが別に構いませんけどね。肝心なのはあなたがどう思うかですから」
     一瞬で、私は全身がカッと熱くなったのを感じた。それはサンポが相当にキザなはずなのにそれを全く感じさせない仕草で私の髪を一房掬い上げてそこにキスしたからというのももちろんあるのだが、私の身にはそれ以上に重大なことが起こっていた。
     気づいてしまったのだ。他の女性、とサンポが口に出したとき、反射的に私以外の誰かに恋人のように接するサンポを想像してズキリと痛んだ胸の、その痛みが何から来るものなのか。
     そこは私の場所だと叫びサンポを女から引き剥がして独り占めしたいと思うこの強烈な衝動を、なんと呼ぶべきなのか。
    「おや、顔が真っ赤ですよ? 少しは僕のこと、意識してくれてます?」
     掬ったままの髪を指先で玩びながら悪戯っぽく笑うサンポに、顔がますます熱くなる。少しなんてもんじゃない。私の意識は、さっきからずっとサンポでいっぱいだった。
    「サンポ……あのね、私」
     こんなことで真っ赤になって動揺してしまう私と余裕ある大人のサンポでは、釣り合う釣り合わないで言えば間違いなく釣り合っていないのだろう。けれど、それがどうしたと言うのだ。サンポが私を好きだと言ってくれて、私もサンポを手放しなくないと思っているのだから、そんなつまらない理由で躊躇ったりなんかしない。
    「私、あんたが好き」
     胸を張って、まっすぐサンポを見つめ、きっぱりと言い切った。
     サンポは一体どんな反応をするんだろう。変わらない余裕たっぷりの顔で微笑むのだろうか。その余裕が少しだけでも崩れるくらい喜んでくれたりしないだろうか。もうお試しも終わりだから、キス、くらいは、されるかもしれない。それより先は――できれば心の準備をさせてほしいけど、求められたらきっと拒む気にはなれないと思う。
     一瞬の間に色々な予想と妄想が脳内を駆け巡って、けれど実際にサンポが見せた反応は、そのどれともまるで違った。
     口がポカンと開いて間抜け面になったかと思うと、瞬く間にその顔が赤く染まってゆく。「……い、今の、ほんとう、ですか……?」と問いかける声は、驚くほど小さく震えていた。
     どくん、と何か大きな音がした。それが私自身の心臓の鼓動だと気づいたとき、胸の中が自分でも何だか分からない感情でいっぱいになって。
    「星さん……!?」
     まるで引き寄せられるように。サンポの口に、キスを、していた。
     緑の目は今まで見たことがないほど大きく見開かれ、今にもこぼれ落ちそうだ。それをまじまじと見つめてから、ようやくキスの時には目を閉じるものだということを思い出したが、今更だろうとそのまま見つめ続けることにした。まばたきも忘れて呆然とこちらを見返すサンポの目には私の目が映り込んでいる。淡く澄んだ緑に金色が溶け込んで、とても綺麗だった。
     一度唇を離してみると、サンポの顔はさっきよりももっと真っ赤になっていた。またひとつ、心臓が大きく高鳴る。
    「……かわいい」
    「か、かわ……!?」
     もう一度サンポに口付ける。今度は触れるだけでは物足りない気がして、舌をサンポの口の中に差し込んだ。
    「〜〜っ星さん!」
     ――ら、ものすごい勢いで引き剥がされた。一瞬だけ触れたサンポの口内は熱くて気持ちよくて、それを中断された私がついムッとしてしまったのも当然の反応だろう。
    「なに、嫌なの?」
    「い、やとかではなくてですね! こんな往来ではちょっと……!」
     そういえば街ブラデートの最中だった。周りを見回せばさっと何人かが目を逸らすのが見えて、私の心の中にモヤモヤとした物が湧き起こる。
    「……帰ろう、サンポ」
    「えっ?」
     私は勢いよくベンチから立ち上がる。いきなりの行動に驚いた様子でこちらを見上げるサンポの頬を両手で包んで、まだ赤みの引かない顔を覗き込んだ。
    「今からおうちデートに切り替え。……そのかわいい顔、独り占めさせて」
    「え、あ、」
     ますます顔を赤くしてぷるぷると震え出したサンポを半ば引きずるようにして連れ帰り、そのかわいさを存分に堪能した。いい一日だった。

    「――お久しぶりです、星さん。あなたの顔を見たら、会えなかった間の寂しさが一瞬で吹き飛んでしまいました」
     次に会ったサンポは、あの日のことなど忘れたかのようにまた余裕な顔をしていて、少し物足りなく思ったけれど。
    「ふふ、久しぶりに見るあんたもやっぱりかわいいね」
    「ふぇっ!?」
     少しつついただけでまたあのかわいいかわいい顔を見せてくれて、私を大いに満足させたのだった。
    「そんな顔、他の人に見せちゃダメだよ?」
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    くろん

    DONE余裕ある大人の態度で星ちゃんを口説くサンポとばっちり口説き落とされる星ちゃんとその後の逆転劇と星ちゃんの独占欲の話
    かわいいあんたは私だけのもの 未だに時折何かの間違いか、そうでなければ夢か何かかと思ってしまうが、私は今、サンポといわゆる「お付き合い」というものをしている。
     サンポから好きです付き合ってくださいという申し出を、少しばかり遠回しな言い方で受けた時、私が真っ先に感じたのは困惑だった。
     私には「好き」というものが分からなかったから。
     私の知っている好きとは星穹列車の仲間や開拓の旅で出会った人たちに向くものであり、それはきっとサンポの言う好きとは違うものだろう。私は彼らと恋人のように接したいとは思わない。
     イエスノーの返事の代わりに正直にそう打ち明ければ、サンポは「ならお試しで付き合うのはいかがです?」と言った。
    「お試し?」
    「ええ。僕だって始めから都合よく両思いになれるだなんて思っていません。まずは付き合ってみて、僕を好きになれるかどうか試してほしいんです。じっくり考えていただいて構いませんよ? こう見えて気は長い方ですから――ああもちろん、お試しの間は一切手を出したりはしません、誓って」
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