君と云う名の十字架鐘の音が聞こえるだろうか。
間延びした、けれどしっかりと根を張るようなその音色が
君には聞こえているだろうか。
ここはとある世界のとある国。
優美な煉瓦造りの家や建物が並び、平民街と貴族街が存在する、歴史の長い由緒ある国だ。人々はここで暮らし、働き、歌い、或いは踊って、娯楽を楽しみ、実に健全に生きている。しかし、全てが幸せや喜びに満ちている訳ではなかった。
この世界には「怪物」が存在するのだ。墓場に漂うゴーストや、首無し騎士、狼男など様々な怪異が、人々に認識されている。それらは滅多に人里には来ないわけだが、取り分けポピュラーな存在が「吸血鬼」である。吸血鬼は自分好みの生き血を吸い、永きに渡って生き続ける不老不死の存在で、あちこちに被害が出て騒がれている。そんな吸血鬼を狩る為の吸血鬼狩りといった生業も儲かるほどに、吸血鬼は潜んでいる。
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