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    ottotto503

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    ottotto503

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    BotWリンゼル

    ##そのた

    酷く美しい夢の中にいるような感覚だ。

    息を吸えば、新鮮な空気が喉の奥を通り抜ける。
    空を見上げれば、見つめ続けられぬほどの光がこの世界を照らしている。
    水は透き通り、草木は青く茂る。雨がふり、雪が積もり、そしてまた太陽が恵みを与える。

    百年前の私は、この素晴らしさを知っていただろうか。




    「あ」

    同じ場所なのに、同じではない草原を歩く。
    以前はなかった花々や、生き物たちを見つけては、ついつい感動し、口に出してしまう。

    「リンクこれ!見てください。この子こんなところに成っています」

    私が呼び止める度に、リンクは微笑んでこっちに来てくれる。
    以前もこうして話を聞いていてくれたけれど、どことなく昔よりも楽しそうなのは気のせいだろうか。

    「ああ、これ」

    私が目を止めたのは、寒い雪山の近くによく自生しているのを見かける実。
    一つ、小さなその実をリンクは器用に摘み取る。

    「ポカポカ草の実だ」
    「え!」
    「正解ですか?」
    「正解です。すごいわリンク、すっかり詳しくなってる」
    「へへへ…」

    嬉しそうに笑うリンクを、私はまだ、珍しいものを見るような目で見つめてしまう。

    未だに慣れない、この人の笑顔。
    眠りより目覚めてからきっと、多くの優しい人に出会ってきたんだろう。
    多くの人を救い続ける中で、きっとリンク自身も救われ続けてきたんだろう。

    『笑うのが苦手というか…表情を、表に出さないように努めています』

    (…、)

    かつて、少し悲しそうに、そう話していた彼の表情が脳裏に浮かんで、消えた。





    ガノンを伐した後、私が直面したのは、百年の時を持ってしても応えきれない事実だった。

    今を生きている人々を見かける度に脳裏に浮かぶ、あの日、死ななければならなかった人々の姿。
    あの日、本当は救えたかもしれない人々の姿。

    幾度となく通ったあの村は、跡形もなく草原と化していた。
    こどもたちの笑い声が響いていたあの広場は、人一人近寄らぬ場所となっていた。
    無残に破壊された建物は、人が暮らしていたわずかな気配だけを残し、佇む。
    そしていつだって振り返れば、命の営みを感じさせない私たちの城が、そこにある。

    みんなは言う。あなたのおかげでハイラルは救われたと。
    みんなは言う。あなたのおかげで私たちは今生きているのだと。

    みんなは言う。ありがとう、と。



    (私がハイラルを救った?私がこの人たちを生かした?)

    笑顔を向けられる度に心臓を刺されたような錯覚に陥る。
    あなたたちは知っているのか。百年前の私がどれほど無力であったかを。

    あなたたちの近しい人々に、必ずいたはずだ。
    命を落としたもの、怪我をしたもの、大切な人を失ったものが。

    それなのにどうして誰も、私を責めようとしないのか。
    どうしてみんな、全てを超えて私に礼など言うのだろうか。

    どうして。
    どうして。

    (どうして私を、許してしまうの)






    「本当、あなたは何にでも気がつきますね」

    リンクの声で我に返る。
    風が私たちをあたたかく包み込んでいる。

    「え?」
    「草でも花でも生き物でも…見つけたら何でも見つけては喜ばれる」

    リンクが可笑しそうに、嬉しそうに笑うものだから、少し恥ずかしくなって俯く。

    「…ちょっと大人気なかったかしら」
    「いいえ」

    だけど、何を恥ずかしがることがあるのかと、彼は私に前を向かせる。

    「素晴らしいことです」

    百年の時を超え、まるで赤子のように何も持たず、この大地に帰ってきた私を。

    「素晴らしいことなんですよ、姫」

    あなたは全て、全て。
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    ottotto503

    DONEはつこい 無印ED後?何事もなかったかのように服を纏い直して、何事もなかったかのように呼吸を整える。月さえどこかに隠れた真夜中、ひっそり元通りの姿に戻っていく私の様子を、彼は服も纏わずベッドに腰掛け黙ったまま見つめている。

    ここで眠ってもいい? 朝まで一緒にいたいの。一緒に過ごしていたこと、ばれてしまっていいんだよ。悪いことは何もしていないのだから。

    頭の中で暴れ、駄々をこねる本音に蓋をして、元に戻った私は彼を振り返る。彼は「戻る準備」のできた私を、私とおんなじ作り笑顔で出見送る。

    「……じゃあ戻るね」
    「…ああ」

    引き止めて。せめてもう少しだけ一緒にいようよ。お日様が目を覚ます前には戻るから、それまで隣でまどろみを感じさせて。

    かちこちの笑顔を構成するわがまま。戻ると言いつつ部屋の出口を振り返れないことが、その強さを物語る。

    彼の目を見る。彼は私の目を見てる。言葉で表現するのが下手な私たちは、視線で気持ちをやり取りする。受け取る気持ちが、受け取る想いが、正しいのかどうかもわからないまま。

    このままだと本当に、時間が止まって動かない。お月様も眠れないし、太陽は朝を連れてこれない。小さなため息と 1050

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