利己的ジェネリック 放課後、アズールは寮長として頼まれた仕事をすませ、寮へ戻ろうと廊下を歩いていた。授業が終わってから時間が経っているためか、普段騒がしい廊下には誰もいない。部活がある生徒は部活へ、帰寮する生徒はすでに寮に戻っている時間なのだろう。まだ明るいこの時間にひと気のない学園を歩くことに新鮮さを感じる。
一人になると、オーバーブロットしたときのことを思い出してしまう。
契約書を失い、二人に幻滅され、何もかも失ったと思った。けれど、二人はそばにいるし、アズールの作ったモストロ・ラウンジは変わらずある。
母が離婚したとき、母はアズールと祖母がいるから大丈夫だと優しく微笑んだ。そのあとに「リストランテもあるし!」と言った母の目には力強い光があった。その時の気持ちが今はとてもよくわかる。家族のいる家とは違う居場所。頭に思い浮かべれば、胸のうちから誇らしさと意欲が湧いてくる。
9107