Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    oct03s

    @oct03s

    自創作の没とエログロ系

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 24

    oct03s

    ☆quiet follow

    まさかのセルフ二次創作夢小説です❗️❗️
    夢小説は初めて書いた
    キオと俺くんの話

    ある日の時計と……? 灰色が広がる曇天の空模様の日。
    全身に湿った空気が張り付いて、不愉快だと思った、あの時。
    「ねえ、そこの君。傘がないなら僕の傘に入りなよ」
    あの日、彼と私は出会った。

    怠くなるほどさんさんと日が照りついていた夏が終わりはじめた、秋のはじめ。だんだんと肌寒さを覚えて服を着込むような、そんな秋の日の事。私はいつもと変わらず、普段のカフェで紅茶を飲んでいた。紅茶には角砂糖をいれて、隣には紅茶によく合うクリームがたっぷり乗ったケーキ。カラン、とドアの開く音がしてそちらを向く。
    「……あ。あの日の人。また会った」
    栗色の、顔を半分隠した少年。編み込んだ髪の終点近くに揺れる、真珠のピアスをつけている。前出会った時は半袖のシャツにベストを着込んでいたが、今日はどうやらケープ風のコートを着ているようだ。彼はさらっと私の目の前の席につき、メニュー表を広げた。
    「君もこのカフェによく来るの?」
    じっと目を合わせ、問いかけられた。
    「ああ、よく来るよ」
    「そうなんだ。ここ、紅茶のセンスが良いよね。良いものを使ってる」
    「へえ……」
    メニュー表をぱらぱらと、じいっと見つめる彼。私は砂糖が溶け切った紅茶を一口飲んだ。あまい。……さっきより、甘い。砂糖なんてさっきいれたきりなのに、なぜか甘い。
    「……ねえ、君が飲んでるの、何?ストレート?レモンティー?」
    「ストレートティーに、角砂糖を一つだけいれたもの」
    「ふぅん。僕はね、角砂糖は3ついれるんだ。甘い方が満足感が高いから」
    「好き、とかではないのか?」
    そう聞くと、彼は少しだけ固まった。瞳がかすかに揺れていた。一呼吸おいて、彼は口を開いた。メニューを指でそっとなぞり、頬杖をつき始めた。少し行儀が悪い。
    「……好きとか嫌いとかは、あいにく分からないんだ。君は角砂糖を一つ入れた紅茶が好きなの?」
    「好き……なんだと思う」
    「へえ。君と同じ紅茶を飲もうかな。多分、アールグレイだよね?」
    「多分」
    「じゃあそうしよう。すみません。アールグレイと……彼の食べているケーキと同じものを」

    コトン、とクリームがたっぷり乗ったシフォンケーキと湯気のたったアールグレイが置かれた。彼はありがとうございます、と一口礼をした。
    「君はこのケーキと紅茶が好きなんだ。覚えておこう」
    「あの……今聞くのもなんだが、私と君は名前を知らないもの同士だろ?なんでそんなに親しげに話してくるんだ?」
     そう話すと、彼は驚いたような顔をした……気がする。彼は目どころか眉すらぴくりとすら動かない。
    彼を例えるなら、人形という言葉が適切だと思うくらい、感情が読めない。彼は紅茶を一口啜った。角砂糖を3つ入れると言っていた割にはストレートのまま飲むのか。私はふ、と笑ってしまった。
    「……あれ?そうだったか。じゃあ、今知り合いになろうか。僕はキオ。キオ・チカリトーチェ」
    「……キオ」
    「ふふ、僕の名前、気に入った?」
    「気にいるとか、そう言うのではないと思うが」
    「そう言うのは良いんだよ。僕は君を気に入ってる」
    「……?」
    彼はそう言ったあと、シフォンケーキに横に軽く持ったフォークを当て、そのままおろした。一口分のシフォンケーキの完成だ。その切り分けたケーキにクリームをを軽く乗せ、口に運ぶ。彼は美味しさに目を輝かせるわけでも、口に合わないと眉を顰めるわけでもなく、先ほどと変わらぬ調子で咀嚼を続けていた。
    「……うん。悪くないんじゃないかな」
    「それは……褒めてるのか?」
    「僕なりの褒め言葉さ。世辞でも僕は、何かに好きとは言えないから」
    彼は「好き」という言葉を発する度に何か、私には触れてはいけない何かを感じさせた。……過去に何かあったのだろうか?だが、詮索をしたいわけでもない。彼と私は傘に入って、今日奇遇にも同じカフェで同じメニューを楽しんでいるだけの同志なだけだ。
    彼はティーポットでカップにお茶を注いだ。鮮やかな赤茶色のそれに、小さなトングで角砂糖をひとつ、ふたつ、みっつ。キオが先ほど言ったように角砂糖を3つ。スプーンでくるくると回している。その様子をぼーっと、見つめていた。
    「どうしたの?まさか、僕に見惚れてたのかい?ふふ」
    「君はそんな冗談を言えるんだな」
    「僕の事をなんだと思ってるの?冗談くらい言えるよ」
    ……感情の読めないその顔で言われると、怒っているのではないかと思ってしまう。だが今までのキオの言動を聞く限り、怒ってなどはいないんだろう。私を揶揄っているだけだ。
    「そういやキオ」
    「なんだい?」
    「あの日、なんで私を傘に入れてくれたんだ?素性の知れない人間だったのに」
    「君のような人間が、犯罪の類をするはずがないだろう?それに、僕は人助けが趣味でね。まあ……君は僕の趣味に利用されただけだよ」
    「趣味って。嘘だろ」
    「ああ、嘘さ。人助けが趣味な人間がいるなら見てみたいよ。本当は単純に話し相手が欲しかっただけ……一人は嫌だから」

    彼はシフォンケーキと紅茶を飲み干して、満足したのか席を立った。
    私は冷め切ってしまった自分の紅茶を眺めていた。
    「ありがとう、良い時間だったよ。またどこかで会ったら話しかけるよ」
    「話しかけなくて良いよ」
    「けちだなあ、僕がやりたいんだからいいだろ?いやなんて言うなよ。悲しくなるじゃない」
    「話してる限り、君はそんな事は思わないだろ」
    「うん。僕は人より感情の揺らぎが控えめのようなんだ」
    「君は平気でそんな事を言う……」
    「……じゃあね、またいつか。君と会える日を楽しみにしてる」
    ケーキと紅茶代を置いて、彼は去っていった。
    嵐のような人間だったが……また会ってやらなくもないだろう。
    私は冷め切った甘い紅茶を、一口で飲み干した。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    oct03s

    DOODLE暇つぶし小説!!本編とはちょっと繋がってたりする 二次創作です
    以前あげたルロキオ小説と繋がってる部分があるのでそれを読んだ上で読むと楽しめるかもしれないです
    ある日の人魚と時計 シレーナ海。あらゆる海産物がとれることで有名なこの海は、釣り人にとって格好の場所であった。そんなシレーナ海には、『人魚が住んでいる』なんて言い伝えがあった。実際釣り人が人間の髪の毛によく似たものを釣り上げたことがあったり、魚にしては大きすぎる鱗がとれたりとその言い伝えは釣り人の間では確信に近いものがあった。
     そんな海に彼……キオは今日も向かっていた。片手には果物を包んだ袋をさげ、片手には以前ルロの店で譲ってもらったオルゴールを持っていた。

    「ふむ、マーレは気にいるだろうか……まあ、気に入ってくれるだろう」

     ぼそりと呟く。今日シレーナ海に向かったのはその言い伝えの『人魚』である少女、友人のマーレのお願い事を叶えてやる為に向かっているのだ。賑わう港や水遊びに興じる人の多い砂浜をずっと歩き、端っこの、人気の少ない岩場の洞窟。少し昔、キオとマーレの出会った、思い出の洞窟に入る。遠い所に穴が空いてるからか日光が入るため全くの暗闇ではなく、ぼんやりとした明るさは月明かりを思わせる。
    4273

    recommended works