ある日の時計と……? 灰色が広がる曇天の空模様の日。
全身に湿った空気が張り付いて、不愉快だと思った、あの時。
「ねえ、そこの君。傘がないなら僕の傘に入りなよ」
あの日、彼と私は出会った。
怠くなるほどさんさんと日が照りついていた夏が終わりはじめた、秋のはじめ。だんだんと肌寒さを覚えて服を着込むような、そんな秋の日の事。私はいつもと変わらず、普段のカフェで紅茶を飲んでいた。紅茶には角砂糖をいれて、隣には紅茶によく合うクリームがたっぷり乗ったケーキ。カラン、とドアの開く音がしてそちらを向く。
「……あ。あの日の人。また会った」
栗色の、顔を半分隠した少年。編み込んだ髪の終点近くに揺れる、真珠のピアスをつけている。前出会った時は半袖のシャツにベストを着込んでいたが、今日はどうやらケープ風のコートを着ているようだ。彼はさらっと私の目の前の席につき、メニュー表を広げた。
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