⭐️の記憶があった☀️7「あれ?隊長さん、こんな所でどうしたんです?」
「せいめいくん、今僕と君は二人きりだよ」
「?はい」
「だから、それ」
「…ええと…それってなんですか?」
「敬語!!!!やめて!!!?」
昼下がりの屋上に絶叫が響いた。
日課である、マンドラゴラの水やりを終えた晴明はいそいそと屋上に設置してある倉庫の片付けをしようと向かうと、そこには何かを漁っている烏丸蘭丸の姿があった。
「そう言われましても…」
「やめてってば!!!」
「隊長さん…」
「朱雀!!!!!!」
「いや朱雀では無いのでは…」
「せいめい限定で朱雀なの!!」
うゎああ!!と嘆き、すんすんと鼻を啜りながら晴明の足元に縋る朱雀。
そんなせいめいにとっては元従者、はるあきにとっては現従者の様子を困ったようにみていた。
「あっちゃんの前では敬語なしでせいめいじゃんか!!」
「なんで知ってるんですか?」
「いつもそばにいるもーーーん!!それにあの佐野くんって子と狸塚くんって子の前で「あべのせいめいを生き返らせてもいい」とか言ってたじゃんか!!!なんで僕の前だけはるあきくんなの敬語なの!!」
「ちょっと、あの時すでに居たんですか!?」
あの時とは少し前の話、佐野と狸塚がピンチになってた時の話である。
※お話は4を参照いただきたい!
「それに僕言ったでしょ!?「僕の心を勝手に決めないで」って!!僕は、せいめいとして接して欲しいと言ってるのわかんない!?」
もはや逆ギレである。
「…あの時せいめいは僕が君のこと嫌いだと思ってたって言ってたけど、本当は君が僕のこと嫌いなんじゃないの」
「そ、そんなことないですよ!今も昔も、力を貸してくれますし…」
「あー!あー!はるあきくんならそう言うだろうね!!」
僕はせいめいの気持ちが聞きたいのー!!と足にすがりついていたと思った朱雀はだんだん上へと昇っていき、晴明を抱きしめる体制になる。
ねー!せいめい、せいめいはー!?とうざったらしく体を密着させながら喚く朱雀。
「…あなたの今の主人はせいめいじゃない、ですよね?」
「はい?」
「今の主人ははるあきであって、僕がせいめいとして接する理由なんて無いんですよ。」
「なにそれ」
晴明に抱きつく力が強くなる。
力強い拘束に、ぐっと少し声が出てしまった。
「……もー!この話平行線のまま進まなさそうなのでやめませんか!!」
「は?」
信じられない!という目で見つめる。
その様子を見て、そっと晴明は言葉を紡ぐ。
「…参組の生徒も学園長も僕のこと、はるあきでもどちらでもいいと言ってくれました。」
「……」
「隊長さんははるあきはいりませんか?」
はっ、と朱雀の表情がかわる。
_今まで、せいめいの記憶があると知ってから
はるあきとして今世の主人を見た事があっただろうか。
ずっとお前はせいめいで、自分は朱雀だからと今を見ていなかった。「心を決めないで」と言ったのに、相手のことは無視していたことに気がついてしまった。
「ごめ、せいめ…」
「隊長さん、蘭丸さん、…朱雀。」
「!」
「僕も最近まで、せいめい過去のものだと思い、受け入れられなかったのですが、僕は色んな人にそれは違うと言われました。」
「せいめいだけを求められていると思っていたので、受け入れられなかったんです。」
「でもそれは違くて、せいめいを無かったことにするなという意味で言ってくれていたと最近気が付きました。」
「僕も最近やっと過去も今も受け入れられてきたのであなたも今を受けいれて貰えませんか?」
そう、せいめいの顔でもあり、はるあきのような顔でもある笑顔でそう告げた。
今まで自分はせいめいの前では朱雀、それ以外は蘭丸として生きなければと思っていた。
なのにせいめいは全然そうではなく、まるで他人のように接してきた。それはそうだ。はるあきを、今を受け入れられず、接してきたのは僕の方だった。
「ごめん、なさい…」
「?何に対してかわかりませんが、いいですよ!」
「でも!」
「!」
「やっぱり、敬語なのは壁があるからやめて欲しい」
そうぽつりと呟いた。
「……ふふ、わかったよ。」
「ん」
「僕も、いじわるしてごめんね?」
「ほんとにね」
「君があまりにもせいめいと朱雀に固執してるから、少し嫉妬しちゃったんだ」
「嫉妬?」
「僕らは昔だけじゃなくて、今もこうして縁を繋いだんだから、昔を含めた今を生きていたいって思ったんだ」
_昔の、道満にバレる以前の晴明では考えられない思考、発言であったが、それは晴明がせいめいを含めた人生を生きると決めた証拠だった。
「あ、でも僕は君のことを朱雀って呼んだ方がいいのかな?」
「……もうどっちでもいい!」
「!」
「だって、どれで呼んだって晴明くんは僕自身を見てくれるんでしょ?」
「だから、君から呼ばれるならなんでもいいよ!」
「……そっか。」
ガヤガヤと倉庫の外から声が聞こえる。
倉庫からなかなか出てこないマンドラゴラたちが晴明を心配してやってきたようだ。
「せーめーくん?どうかしたのー?」
「!ううん、なんでんもないよ!」
「じゃあ、僕はそろそろお暇するねよ!」
「あ、はい!」
「今度は一緒にデートしようね、晴明!」
「で、でーと……!?」
そう言い残し、朱雀は去っていった。
……家でくつろぐ道満に「こんど隊長さんとデートしてくるね」と報告し、道満が乱心する未来が数時間後に訪れるのであった