線香花火硝煙の匂いと、弾け飛ぶ色鮮やかな光
手に持った小さな花火が短くなっていく様子をじっと眺めている
赤から青、青から緑、緑から黄色、黄色から……
「あ、終わっちゃった」
事切れて真っ黒な灰になった花火を近くの水の入った桶に浸す。桶にはすでに何本もの手持ち花火が沈んでいた
「後は……これだけか」
手持ち花火をやると何故必ず一番最後に線香花火が残るのだろう、風情なのか。
左手に線香花火とマッチの箱を握りこんで、右手にはマッチを1本
シュボッ、とマッチを摩ればあっというまに綺麗な火が立ち始める。それが消えないうちに左手の線香花火へと火を移す
火を移された線香花火はぱちぱちと小さな音を立てて火花を散らしている
先程まで見ていた手持ち花火に比べれば派手さはないものの、ささやかに爆ぜるそれは中々嫌いではなく、むしろどの花火よりも好んでいて。
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