Only your eyes on me街を覆い隠すような暗闇に追いやられて淡く残る橙色の空に包まれ、どこからか鳴る秒針と二つの足音だけがこつこつと響く。不揃いだがジャズのように軽快で楽し気な音に気付く者は誰もいない。敷き詰められたレンガに靴を慣らしながら闇夜を舞うように進んでいく浮奇の後ろを、ファルガーは微笑みながらゆっくりと着いて行く。誰も知らない世界のはずれに二人を分かつものなど何もないのに、繋がれた手は固く固く結ばれて離れる気配すら感じられない。苦しいであろう手の締め付けも気にしないかのように綺麗な旋律を口ずさみながら徒然に歩いて行く浮奇だったが、ふとずっと連れられたままの想い人に気付き、突然立ち止まって振り返った。
「ねぇ、ふぅふぅちゃんも見てばっかいないで一緒に踊ろうよ。」
1950