好意の真意(クロパパ)ホテルが寝静まる深夜、二階のバーで飲んでいるのはミイラ父ちゃんとクロックマスターだ。
クロックマスターは既に酔いが回っており、半分夢うつつで酒を飲んでいた。
酔うと時の支配者としてのあり方を揚々と語り出したり、過去に比べ力が出ないからもうダメじゃと嘆いたりする──酒を飲んで一喜一憂するクロックマスターを見ているのが、最近のミイラ父ちゃんの楽しみだった。
「私……最近ここに来るのがとても楽しみなんですよ……」
「そう……それは何よりじゃ……ムニャ……」
……何故だか分かりますかな?
ミイラ父ちゃんが呟いた言葉は、バーカウンターに突っ伏して寝掛けているクロックマスターには届いていないようだった。
「……貴方のことが好きだからですよ」
ふっ……と、自嘲気味に笑って、ミイラ父ちゃんは席を立った。椅子を直してクロックマスターの方を見れば、クロックマスターはポカンとした表情でミイラ父ちゃんを見上げていた。
「……は?」
「おやおやおや……」
クロックマスターがパチクリと瞬きする。顔を見合わせて、数秒。
起きていたんですか?とミイラ父ちゃんが微笑む。その瞳が全く笑っておらず、クロックマスターはゾクリと身震いをした。
「いや……酔いが覚めたん、じゃが……」
ミイラ父ちゃんはハッハッハと何でもないように笑う。その表情からは感情が読み取れず、クロックマスターはグッとたじろいでしまう。
そうしている間にミイラ父ちゃんが、私はこれで失礼しますなぁと言ってバーの出口に向かった。
クロックマスターがなんと声を掛ければ良いか考えあぐねていると、ミイラ父ちゃんは出口前で振り返り、これからもよろしくお願いしますなぁ……と言い残して、出ていった。
残されたクロックマスターはミイラ父ちゃんの真意が分からず、ウーン?と頭を抱えながら、残りのグラスを呷ったのだった。
おわり。