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    こなもの。

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    こなもの。

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    『Mummy selection』収録予定のパパクロ小説です!(父ちゃんに温度があることを後で知って頭を抱えたので、たぶん何らか修正をするかも…です!ワハハ!)

    ##GHS
    ##パパクロ
    ##文章

    そして馴染む(パパクロ)隣の部屋の奴はヤバい……

    それは、クロックマスターがこのホテルに来てから数日が経ったある日。
    コンコンと部屋の扉をノックされ、はい?と軽率に扉を開けてしまったあの時。目があった瞬間、真っ先に思った事だった。


    「こんにちはぁ……貴方がクロックマスターさんですかぁ」

    第一印象は『危機感』。その一言に尽きた。

    「……貴方は?」

    私は隣室のミイラパパですなぁ。

    包帯をグルグルに巻いたその姿のせいで、クロックマスターはすぐにピンときた。隣の表札は、初日に確認していたのだ。

    喋りは穏やかだが……見た目の威圧感でその印象もマイナスになっている。ミイラパパが動く度、頭上に刺さった青龍刀がギラリと鈍色に光った。

    隣には息子と滞在しているんですよぉ!

    クロックマスターより背が高いミイラパパは、まるで人を見下しているような目線でそう言って笑った。頭部から流れ出した血が顔を伝い、ポタリポタリと床に垂れる。

    これからよろしくお願いしますなぁ……。

    手を差し出され、クロックマスターは戸惑った。どうやら親交の握手のようだ。誰かに握手を求められたのはいつぶりだろうと思いながら、ここで好意を無下にするのも後が怖いので、応えるために手を伸ばす。

    ぎゅっと──クロックマスターの握った手は温度が無かった。

    とても生きた人間のソレでは無く、しかし……動いて、喋っている。

    クロックマスターはゾッと背筋が冷たくなった。こんな見た目で、血が通っている方が可笑しいのだが……目の前で血は確実に垂れている。


    「随分と熱心な握手で……嬉しいですなぁ」

    上から降ってきた言葉にクロックマスターはハッとして手を離した。どうやら少し握り締めすぎたらしい。失礼……と、咳払いひとつで誤魔化す事にする。

    貴方も息子さんが居るんでしたかなぁ?

    まだ帰る気が無いらしいミイラパパが、次の話題を振ってくる。どうやら自分の情報は、すでにホテルに拡散されているらしい。

    「あぁ……マイサンじゃ……」

    正直あまり関り合いになりたくないが、ご近所付き合いは日頃からしておくべきだと言う価値観がクロックマスターの脳裏を駆け、つい。仲良くしてやってくれ……と小声で呟いてしまった。それが良くなかった。

    そうですかそうですか、それは坊やも喜んでいるでしょうなぁ……!

    ミイラパパは嬉しそうに笑って見せたが、アッヒャッヒャッヒャッと言う笑い声はとても正気とは程遠く、クロックマスターは現実感が薄れていくのを感じた。フラりと目眩がして、ドアの縦枠に手を突く。


    「おやぁ……体調が優れませんか?」

    それを見たミイラパパが、スッと声色を変えた。クロックマスターはゾクリと鳥肌が立ち、ズッと一歩分足を引いた。

    反射的に前に出してしまった腕を取られて、ヒッ、という悲鳴が、喉奥に消える。

    「な、なんじゃ……!」

    辛うじて出た声は掠れていたが、何とか聞き取れる程度だろう。腕を離して欲しかったが、少し力を入れた程度では、ミイラパパの腕はビクともしなかった。


    「貧血にはこの薬がよく効くんですよぉ~」

    腕を掴んだ手とは逆の手で、グレーのロングカーディガンのポケットを探っていたミイラパパが取り出したのは、紫と黄色という見るからに怪しげな色合いのカプセルだった。

    問題はそれだけではなく──そのカプセルはミイラパパの手のひら程の大きさがあり……とても人間が服用する代物とは思えなかった。


    さぁ遠慮なさらずに。

    動揺して空いていた口の中に無理矢理それを押し込められ、クロックマスターは声にならない悲鳴を上げた。

    飲めるわけがない、と視線を送ったクロックマスターはミイラパパの瞳が、上がっている口角に反して全く笑っていない事に気がつき、グッと呼吸が止まった。

    その瞬間ゴクリと、唾を飲み込むのと同時にソレも飲み下してしまった。飲み込めるハズもない、大きさの、物を。

    すぐ楽になると思いますよぉ……と言うミイラパパの声が、ブワリと歪む視界と共に遠退いていく。

    立っていられなくなったクロックマスターはその場にドサッと倒れ込み、そのまま意識を失った。


    「おやおや……副作用が強かったですかな?」

    気絶したクロックマスターを見て、ミイラパパはハッハッハと笑いながら膝を付いた。

    そのまま、倒れたクロックマスターを意図も簡単に持ち上げると、勝手に部屋のベッドに寝かせて、ミイラパパはその隣へ椅子を運んで腰掛けた。

    時計が沢山あって賑やかな部屋ですなぁ~?

    部屋の中を見回して。楽しげに話すミイラパパの声は、意識を失ったクロックマスターには当然届いていない。これからが楽しみですなぁと、ミイラパパは意気揚々話し続けていた。


    おわり。
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