犬も食わない「阿絮……また髪を乾かさずに出てきたでしょう。」
はぁ、と大げさな溜息を片手に冷酒を掲げ温客行は盛大についた。
先に風呂に入った周子舒がそろそろ上がる頃合いだろう、とふろ上がりの冷酒を用意して上機嫌で広間に戻って来た温客行の目の前には、ふろ上がりの気持ちよさそうな顔をしているが、雑に水気を取ったぼさぼさ頭の四季山荘元荘主だった。
雑に水気を取ったどころか、毛先まできちんと絞りきれていないのか、ポタポタと水滴が滴ってさえいる。
(周子舒という男はこんなに適当な奴だったのか?!)
と思いつつも、自分の前ではこんなにも気を許してくれているのだとも思い一瞬の感動を覚えた温客行だったが、いやいやそうじゃない!と我に返り、「ん。」と当たり前の様に冷酒待ちをする周子舒の手を遮り、棚の上に冷酒を置く。
1359